奴隷の少女
木々が覆い被さり、光が射し込まない森の中俺とミラはここ数日歩き続けている。
もちろん休憩はしているが何もイベントが無いと流石に暇すぎるてつまらん。
モンスターもミラで十分な奴らだし本当何かイベント起き無いかなぁ。
平和で良いっちゃあ良いんだけど。
「カズさんそろそろ前衛を交代しますか?」
「ん、いやミラが疲れたら交代するけど疲れた?」
「いえ、ただカズさんが暇そうな顔をしてるので。」
気を遣わせてしまったな。
俺は二人で交代交代で戦闘をすることに決めた。
◆◇◆◇◆
あれからモンスターも段々と出現回数が減り完璧に暇になってしまった。
「カズさん!」
いきなりミラに引っ張られ人の手で作られた道から草むらに連れ込まれた。
「どうした?モンスターか?」
その質問に対してミラは首を横に振った。
「いえ、馬車です。ですが…少し変わっているというかなんというか…」
俺は、ミラの目線の先を見る。
俺たちとの距離は大分離れている先にミラの言う馬車が目に入った。
「なんだあれ?」
ミラが言っている事がなんとなくわかる。
馬や御者の人、馬車を護衛する依頼を受けたとおもしき冒険者二人は清潔感があるように見える。
しかし馬車の方は木製の馬車で苔が付いており此処からでも中身が見えそうな程に板が割れている。
「なあミラ、商人って確か自分が扱う商品には手厚い手入れがされてるよな」
「そうですね。商人は信頼性が重要視されます。あの様な馬車だと先ず誰も商品を見向きもしませんね。」
「だとすると…」
だとすると考えられるのは…
嫌な予感しかしなかった。
俺は始めに御者の人に(解析)を使う。
俺は解析内容を見てギリッと歯を鳴らした。
解析内容の中にあったのは「悪商人《奴隷商人》」と書いてあったからだ。
この世界に来て14年半俺は一度も奴隷を見なかった。
いや、見無い様にしていたといった方が良いのかもしれない。
人を人ではなく物として扱う、そんな事にが本当にあることを信じたく無かった。
だが今こうやって目の前にしかも奴隷商人の中でも最悪とされる悪商人と出くわしてしまった。
「この世界で生きるならやっぱり避けて通れないか。」
俺はそう呟いた。
◆◇◆◇◆
暫くの間俺とミラは奴隷商人の馬車の様子をその場で見ていた。
「カズさん馬車が止まりました。」
奴隷商人達は休憩に入った様だ。
馬車の中にいる人には悪いけど通り過ぎさせてもらおう。
俺たちは、草むらから出て先に馬車がある道を再び歩き始めた。
暫く歩くと奴隷商人の馬車の元まで来た。
軽く挨拶をして通り過ぎよう。
そう心の中で決めて馬車と奴隷商人の方を見た。
「こんにち…」
馬車の壊れた部分から中が見える。
その中には一人の獣人の少女だった。
金色の髪は何日も手入れがされていなくぼさぼさの状態で服は雑巾でも繋げたかの様な物を着ていた。
それだけでも十分酷いが顔は更に酷かった。
目に痣ができ、鼻が折れており頬は腫れ上がってこれ以上にないくらい酷く歪んでいた。
俺は、彼女から目が離れ無かった。
何が人ではなく物として扱うだ、もっと酷いじゃないか。
俺は自分自身奴隷の事を分かりきったような考えをしていた事に腹が立ってしまった。
それと同時にそこにいる奴隷商人に対しての怒りとこの子を助けてやりたいという感情が湧き上がってきた。
「ミラ旅の仲間が増えるかもしれないけどいいかな?」
俺はミラだけに聞こえるように言った。
俺の言葉で察した彼女は、「わかりました」と一言だけ返事した。
ありがとう。
俺は、心の中でミラにお礼をした。
俺は馬車の側面を思いっきり殴る。
バキバキっと音を立て壊れていく馬車を奴隷商人が慌てて俺に話しかけてきた。
「何をする!大事な商品がこの中に入っているんだぞ。馬車もこんなにしてどうしてくれるんだ」
「はん、大事な商品だとふざけるな。人を商品扱いしやがって、お前その仕事をしてて楽しいのか?」
俺は、虫けらを見るような目で奴隷商人を見る。
「た、楽しいさ人が自分の金になってくれる。そもそもこれは人じゃない人の形をした家畜だ。かちくをどうしようとかってではないか!」
奴隷商人は馬車の壊れた部分から見える少女を指してそう言ってきた。
俺はこの時点で血が頭に上りに上っていた。
俺は思いっきり握って拳をつくり構える。
剣や魔法を使うと死ぬ。
殺しはしないという自制心はまだ俺にはあった。
「だ、誰か助けてくれぇ。げ、ゲル、ケルラ助けてくれ」
その呼び声を聞いた本人らしき人物が二人現れた。
護衛をしていた冒険者だ。
ひとりはガリガリの体で弱そうな容姿だった。
一応(解析)を使ったが見た目通りの弱さだった。
もう一人は、モヒカン頭をした男だった。
モヒカン男が俺を見ると一瞬驚きの顔をし次に目の敵のような目をした。
「よう久しぶりだな。あん時はよくもやってくれたな」
何でこいつ俺を睨む。
「お前なんて知らん」
「そんなわけないだろ」
実際に知らない。
こんな特徴的なモヒ頭なんて忘れるはず…。
モヒ頭?モヒ、モヒ、モヒやろう!
思い出した。テルニアで俺の本を取ろうとしていた奴だ。
あの時髪型よりあまりにもの弱さにびっくりして覚えていなかったが確かにこんな感じの奴だった。
まあ、別に思い出しても相手に言う必要もない。
俺は引き続き知らないことにした。
「ミラはそっちのガリガリの奴をお願い。それだけで十分だ。あとは俺がするから」
それよりも俺の怒りが爆発しそうだった。
俺は先ず奴隷商人を手刀で後頭部を狙う。
当初に比べて俺の冷静さが戻ってきたので気絶の方法を選んだ。
奴隷商人はその場に崩れ落ちて気を失う。
それを確認した俺はゲル事モヒやろうの方に体を向ける。
「お前はこいつが悪商人だって事知っているのか?」
俺は気絶している奴隷商人を指差して言う。
「そんなの知っているに決まってんじゃねぇか。因みにどんな方法で奴隷をゲットするのかも知っているぜ」
モヒやろうは、ゲスな笑みを作って続けた。
「旦那はなぁ、奴隷でもない獣人を寝込みを襲って奴隷契約させるんだ。へっへへへへ、ヒィイイ」
目の前にいる俺は怒りに怒っていた。
そんな俺の姿を見てゲルは恐怖を覚えた。
「もう喋るなコロスゾ」
ゲルは押し黙る。
俺は一歩一歩ゲルの元に近ずいて行く。
「俺が7歳の時に本を取ろうとした時からお前の事はクズだとは思っていたが、ゴミだな」
俺はゲルの前に立つ。
そして、俺は殴る態勢になる。
「すまない、先に謝っておく。もしかしたら怒り過ぎて手加減ってものを忘れているかもしれない。死んでも自己責任で頼む。」
俺は拳に魔力を通す。
白い光が右腕を纏う。
その瞬間俺はゲルの溝に拳をめり込ませた。
今までセーブしていた力も解放し全力で。
バキバキと肋が折れる音と感触がある。
「吹っ飛べ!」
俺は更にアッパーをする感じで上に投げ飛ばす。
「ゴヘッ、ゴホッ」
血反吐を吐きながら空中に飛ばされるゲルを見ながら俺は怒りを収めた。
ゲルの姿が完全になくなったのを確認して俺は馬車のある元へ戻った。
戻るとそこではミラとガリガリ事ケルラとの決着はついていた。
当たり前の事だがミラの勝利だ。
ケルラは、ミラから両腕を鞘になおしたままのサーベルによって打撲して痛みに耐えきれず気絶したようだ。
弱い奴だな。
そんな事はどうでもいい。
俺は急いで少女の元へ向かった。
少女は、人に脅えているのか俺が近づこうとすると「ひぃぃっ」と軽く悲鳴をあげる。
流石に傷付くがそこを我慢して少女の元へ近づく。
俺は少女の腫れきった顔にそっと手を当てて淡い緑色の光を出した。
これは旅に出る前に見つけた回復魔法だ。
「回復」一般的に知られているがそれを使えるのは極僅か。
エルフか魔法に長けた状態で産まれたか、また相当な努力を重ねたかによって修得できる代物だ。
冒険者の中でも回復係は、とても重要視されており将来安定した生活が欲しいなら冒険者の回復係になるといい。
と言うほどだ。
そんな光が少女の顔を包み込んでからしばらく、腫れた目元はどんどん引いていった。
顔どころか身体中にあった打撲の跡なども綺麗さっぱり無くなった。
「ふうぅ。ん?」
初めての回復魔法に不安があったが成功してよかった。
そんな事を思っていると傷ひとつなくなった獣人の少女が下から俺を見上げていた。
今まで酷い顔をしていたが今の顔はミラとは違った可愛さを持つ美少女だった。
俺は怒りをついドキッとしてしまった。
いや、こんな可愛い子が下から見上げるのは反則だから。
すると、少女が奇怪な言葉を放った。
「オーラが綺麗」
カズの日記
ここ最近は本当に暇だった。
歩いても森森森森。
もう誰が旅に出るなんて言い出したんだ。
はい、すみません俺です。
まあ暇すぎて仕方がなかった。
唯一の楽しみは夕食でミラが作ってくれる料理は美味かった。
そこで俺は思った事があった。
これに治癒魔法を付与させたら最強じゃね?と。
その日の晩はシチューだった。
早速治癒魔法を付与させてみる。
淡い緑色の光がシチューの器を覆っていく。
瞬間、ボコボコと歪な音がシチューから聞こえてきた。
色も魔力を宿したからなのか緑がかった色になっていた。
(解析)を使うと俺の考え通り治癒能力は付いたが流石に見た目がアレなので食べるのは断念した。
その晩ミラが勝手に食事を実験台にした事を怒って普通のシチューも食べられなかったのは内緒だ。




