てん……てん
要は、あれだな。
来たら三人で、あいつをやっちまおうぜ、的な流れだろう。
「分かった」
短く、簡潔に伝えた。
亜子は満足したのか、
「ではな」
と言って立ち上がり、
片腕を一度大きく回し、円を描いた後、鈴を二回鳴らした。
「リン、リン」
「点……天」
消えた。
音もなく、一瞬で。
……か、格好いい。
テンションは発狂寸前だ。
「緑さん……残業、何時まで大丈夫ですか?」
一気に現実に引き戻された。
時刻は17時40分。
40分オーバー。緑屋は一分加算方式だ。
「40分で閉めようかな?」
「あっ、書類の整理が、少し……」
「そうなの。45分?」
「……5分で終わるか、どうですかね?」
「……50分?」
「あ、いたた。二つでしたー」
「……18時までにしよう」
一時間、まるっと残業を勝ち取ったマッキーは、満面の笑み。
そして、ただお茶を飲んでいた。
……えぇ、書類は?
20分暇になった私は、誘惑と衝動に駆られた。
出来る気がする。今なら。
立ち上がり、鈴を持つ。
軽く触っても音は出ない。
強く振るタイプのやつだ。
そんな私を見守るマッキー。
「やるな、こいつ」という、少し冷めた目。
馬鹿にされようと構わない。
私は欲しい。特殊な力が。
片腕を一度大きく回し、円を描いた後、鈴を二回鳴らす。
優しく、はっきりと発音する。
「点……天」
白夜の主、亜子が目の前にいた。
「何じゃ? こんなに早く」
「いっ、あや〜、あの〜……」
焦った私は、言い訳が浮かばない。
「すみません。格好いいから……」
「点……天、真似しました」
亜子は右腕を大きく振りかぶり、
私の頭のど真ん中に拳を振り下ろした。
「バキン」
「ぐぇー」
「ビタン」
頭を打ちつけた。
「お前に渡すと、ろくなことが起きん」
「真希よ。この鈴は、お前が持て」
そこからの記憶は、ない。




