現実の狭間
本当に、挨拶に来ただけのようだ。
……
「最近、大猿の目が消えたのでな」
「不思議に思って、視ておったぞ」
亜子は手の上に、リスを出した。
……こいつは、マジシャンなのか?
手の上に、いきなりリスを出して。
ん…何故にでリス?目ってこと?
マッキーも、口を開けて驚いている。
視線は時計を見ていた。
十七時五分。確認した後、
少し、ホッとして椅子に座った。
それから、真剣にこっちを見た。
私は、完全に忘れていた……
残業だ。こんな普通の日に、
マッキーの
フィーバータイムが始まった。
「くっ……」
「それで、私はもう権限はない。
ここではなく、鏡心神社に
行くべきじゃないのか?」
なんだか疲れた私は、投げやりに言った。
亜子はニヤッと笑い、
「いや、あれは普通の人間だ。
何の興味も無い」
私から見れば、仁さんは凄いがな。
鋼のシールドを装備できるし。
「それより、お前だ、緑。
鬼を呼び出すとは、わしも
驚いたぞ。女もな……」
マッキーを見て、
「名を、何という?」
「ま、真希です」
「緑に、真希だな。覚えておこう」
「いつ目覚めるやも、分からんからな」
「ふむ……この鈴を渡しておこう」
亜子から、小さな鈴を貰った。
「用があるなら、一回鳴らせ」
「わ、分かった」
「あの大食いも、鬼の前では無力
だったのぅ」
「大猿なき今、わしと、わらしだけで
ちと心細いからな」
ははぁーん、ピンときた。
こいつは、私のバックにいる
イワオと、すぅに興味があるようだ。
だから仁さんじゃなくて、
ここに来たんだな?
そう思うと、焦りも吹き飛んだ。
だが、刻一刻と時間が過ぎている。
残業という、経済圧迫感の波が襲う。
金はある。余裕もある。
しかし私は、意味の無い残業は嫌いだ。
……早く、帰ってくれないかな。




