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それは、それとて  作者: 明日


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120/129

動き出した、予感







「暖かくなってきたなぁ」


窓から射し込む日の光を浴び、コーヒーを片手に街を眺める。



手袋を着けた右手に、酔いしれる。

「フッ」

鼻で笑い、手袋を外してコップを持つ。

赤く染まる指先を眺め、また手袋を着ける。


ヒソヒソ。

「真紀ちゃん、またやってますよ」

「何回目ですか? 着けたり外したり」

「あっ? また外した……」


「凛さん……義手のこと、触れました?」

「触れてない……真紀ちゃんは?」

「私も、言ってません……」


「多分……気づいてほしいのでしょう」

「凛さん……お願いします」

「えっ? 私!?……一応、聞いてみる」


真紀ちゃんは後ろで「頑張って」と頷く。

今日は依頼もなく、朝から日向ぼっこをしている緑さん。


義手に着けた手袋を、はめたり外したりを朝から繰り返し、


時おり薄目で「フッ」と笑っている。

……完全に頭が、おかしくなったのでしょうか?


それとも、私たちに気づいてほしいのですか?

私が代表して聞きました。

「緑さん、義手を着けたのですね」


聞こえないふりをしながら、

ゆっくりと振り返りました。


「あっ!……気づいちゃった?」

気づきますよ、白々しい……なんだか……。


「手袋をされていたので……」

「フッ」

……なぜ? 鼻で笑うのでしょうか。

イライラします。


「うん……そうなんだ。オーダーメードで作ってもらったんだ」

「そうなのですね。素敵ですね」

「うん……ありがとう。ちょっと得した気分で……」


私は限界が来て、席に戻りました。

ヒソヒソ。

「真紀ちゃん、無理です。白々しすぎて

イライラします」

「ほんとですか? 私も聞いてみます」


冷静な凛さんがイライラするなんて……。

また窓の外を眺め出した緑さん。


私は勇気をもって話しかけました。

「緑さん、義手、買いました?」


ゆっくりと振り返り、私を薄目で見て、

「えっ! マッキー、気づいちゃった?」


……白々しい。その薄目は何ですか。

「格好いいですね」

「そう?……別に普通だよ」

「…………」

「でも、少し得した気分で……」


私は限界が来ました。席に戻り、


ヒソヒソ。

「凛さん、私も無理です。白々しいです」

「そうよね……もう触れないでおきましょう」

「……了解です!」


暗黙のルールができました。

緑さんの義手には触れないこと。

白々しい顔と態度で、人を苛立たせますから。


ーーーーーーーー



「フッ」

二人とも、恥ずかしいのかな?


黒いフォルムに、特徴的な赤いライン。

この流れが、美しい……。


遠慮しないで、見てもいいのに……。

あの日は、何度も試行錯誤を繰り返し、

やっと出来た……至高の一品。素晴らしい。


「フッフッ」

何度、吹き飛ばされたことか……。


「最強……最強……」


耳元で声が響く。


な、なんだ、この声は。

いや……左手? 肩付近で鳴いている。


私はそれを視界に入れた……。

顔だけ人間の芋虫が、必死に巻き付き、

しがみついて、

耳元で「最強」と鳴いていた。


…………虫に病……。


私はすぐに立ち上がり、二人から見えない

トイレのドアの前で、左腕から引き剥がし、振りかぶり――


「ビタンッ」

廊下に叩きつけた。


「最強ょょ……」

断末魔を上げて、トイレに流れていく。


いや……おかしい。私が、憑かれるなんて。

何かが、動き出した……。


違和感を感じながら、窓際の席に戻った。

マッキーと凛さんは、私をチラ見しながら

ヒソヒソ話をしていた……。


後遺症か……。


それと、揺れる予感を感じた。





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