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それは、それとて  作者: 明日


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111/129

歩く 歩け 前に




爆風が渦を巻く。


…………。

何も見えない。

緑は、どこに……遮られる視界の中で、

蹲る緑を捉えた。


「緑っ!」


あたしは駆け寄り、意識は無く、血が流れる緑を寝かせ、


目を見開いた……。


胸から腹にかけて斜めに走る裂傷。

右腕は肘から先を失っている。


全身から血が滲んでいるが…呼吸は、ある!


あたしはコートを脱ぎ、背中から脇腹へ通して、きつく結んだ。

傷が開かないようにする


右腕は、ポケットから紐を取り出し、強く巻きつける。

血を止め、応急処置を施す。


もう一度、身体を見渡した。


なんて傷……。

失われた腕を見て、唇を噛む。


「ごめんなさい……必ず助けるから」


緑の肩を抱え、支えるようにして歩き出す。

急がないと。


歩きながら、爆風が収まり、視界が開けていく。

削り取られた地面の中心――そこには、黒い女の……。

焼け焦げた欠片が、散らばっていた。


「……勝ったわよ」


緑を抱えるように引きずり、小川に沿って下る。


「はぁ……はぁ……」


とりあえず、王の屋敷へ。

急げ、歩け。


一歩、一歩、早足で進むと、声が聞こえた。


「摩里、急ぐのじゃ」


白夜の王、亜子が叫んでいる。

境界線の外で、仲間と共に。


もう少し……頑張って。


「はぁ……はぁ……」


「もう少し、もう少し……」


「頑張って……」


引きずるようにして、なんとか亜子の元へ。

境界線の外へ出た、その瞬間――


緑の重さが、消えた……。


亜子が緑を担ぎ、風のような速さで。

あたしは、必死に後を追った。



………………………




「摩里、急ぐのじゃ」


急げ。

我らは、これ以上先へは進めぬ……もう少し。

息を切らし、必死に緑を境界線の外へ出す。


「軽」


亜子は術で緑を浮かせ、「追」と呟き、引き寄せる。


「摩里よ、ゆっくり屋敷へ迎え」


「緑は、任せよ」


「お願いします……」


亜子は屋敷へ走る。

トン、と一歩踏み出し――


風のような速さで、屋敷裏の湯へ。


「癒しの湯じゃ。人に効くかは、分からぬが……」


一瞬、言葉を切り、


「……いや、お前には効くはずじゃ」


緑をそのまま、湯気の立つ湯へ沈める。

背中を石に預け、首から下を湯に浸した。


湯の中で、傷口から泡が浮かび上がる。

肉が繋がり、皮膚が塞がっていく。


胸から腹の傷も、徐々に修復されていく。


――早いのぅ。


「……鬼の加護か」


やはり、この癒しの湯は、緑には効く。


「……ウッ」


緑が小さく呻く。

泡が収まり、水面に波紋が広がった。


失われた腕には、皮膚が被るのみ。

癒しでは、失くしたものは戻らぬ……。


「リョウよ、床を用意せい」


「はい、ただいま」


………………………。


あたしは、呆然と立ち尽くしていた。


緑の重さが……消えた?


浮かび上がる緑。

王――亜子が、あたしを見る。


「摩里よ、ゆっくり屋敷に迎え」


あたしは叫んだ。


「お願いします!」


亜子は風のように走り抜けていく。


「はぁ……はぁ……」


一気に緊張が解けた瞬間、涙が溢れ出した。


「ごめんなさい……あの時、あたしが……」


一歩、前に踏み出す。


後ろに引きずられた、あの瞬間の感覚が、

鮮明に蘇る。


首を振る。

今は――行かなくちゃ。


歩け。

歩け。


「歩けっ!」


自分に言い聞かせるように、あたしは叫んだ……。




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