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それは、それとて  作者: 明日


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絶景温泉






「遠いわね……」


摩里は私を追い越し、先頭を歩いている。

まさか三時間も歩かされるとは思わなかった。息が上がる。


「アヒュ、アヒュ……」


「チッ」


不意に私の顔へ、小石が飛んできた。

摩里は睨みながら言う。


「気持ち悪いんだよ」


どうやら、小石を投げつけていたらしい。

流石に疲れ切った私は、足元もおぼつかずふらふらだ。

一方の摩里は、平気な顔で黙々と歩き続けている。


やがて、先を行く狐たちが振り返り、そのまま先の見えない藪の中へ入っていった。

私は絶望した。足は重く、息も荒い。

これから藪を掻き分けて進めというのか。


「行くわよ。しっかり歩け」


「わ、分かってる……」


摩里が藪の中へ入る。

少し遅れて、私も続いた。


「ガサ、ガザ」


藪を掻き分けて進み、「トンッ」と前に出た瞬間――

立ち止まった摩里にぶつかった。


目の前には――


開けた場所に、一軒の屋敷が建っていた。


「これは……」


「綺麗ね」


綺麗に整えられた屋敷が、山に溶け込むように佇んでいる。

和服を着た若い男女が、こちらを待っていた。


「早く来い、人よ」

「亜子様がお待ちだ」


若い男女だが、どこか目つきが鋭い。

摩里より一本前に出て、進む。


玄関を抜け、その二人について行く。


「広い家だな」


「この先に、王がいるのね?」


「あぁ、多分、亜子がいる」

少し緊張した様子で、摩里は襖の前で立ち止まった。


「ここだ」

「亜子様、人を連れてきました」


「……入れ」

摩里と視線を合わせ、互いに頷く。

襖を開けると――


広い座敷が現れた。

一番奥には白夜の主、亜子が座している。

その手前、左右には男女が整然と並んでいた。


「あれが王……」


真っ白な着物に白髪。

美しいが、その目は鋭い。


確かに、威圧感がある。

摩里は完全に身体を固くしていた。


「来たか、緑よ」


「えぇ。少々、長い道のりでしたが」


「ふん、人の足では遠かろう」


亜子は愉快そうに笑っている。

摩里は緊張している。

ここは……二択だ。


私は、笑う方を選んだ。


「ははっ」


「驚いたか? 我らが人の家に住むなど」


「……いえ、便利ですから」


「ふふん、そうじゃのぅ」


そう、便利なのだ。

人型になる物の怪にとって、人が創り出す進化し続ける文明の利便性は大きい。


「緑よ、外を見ろ」


言われるがまま、座敷の開け放たれた外へ目を向ける。


「……これは?」


湯気が立ち上る。

石で囲われた、手作りの――


絶景の温泉が、そこにあった。


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