表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第六章 狼姫のお泊りラブリゾート 後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/131

第127話 「狼姫と、あらいっこ」

「わ……っ! 総一郎くんの、すごく大きくて、かたぁい……」

「背中ですからねっ!? ていうかこのやり取り、日焼け止めクリーム塗った時にもやられましたからねっ!? 二回目ですからねっ!?」


 家族風呂で、外の暴風雨にも負けない俺の大声が響き渡る。

 叫ばなきゃやってられなかった。

 何故なら俺の背後には咲蓮を筆頭とした女性陣四人が俺の背中を洗う順番待ちをしていて、トップバッターの朝日ヶ丘先輩がいきなり変な事を言ってきたからだ。


「…………後ろから見る脇腹って、男の子でもえっちなんだね……!」

「ど、どこ見てるんですか!? 背中だけですよ許したの!?」

「総一郎くん。()()()()って言葉はね、私達界隈の中では前振りなんだよ?」

「その界隈に俺を入れるの止めてもらえませんかねっ!?」


 朝日ヶ丘先輩は俺をどうしたいんだろうか。

 一度ちゃんと怒った方がいい気がするんだが、朝日ヶ丘先輩にとってそれもご褒美になりかねないのとそもそも後ろを振り向いたらバスタオル姿の彼女をガン見してしまうので出来なかった。

 

 外は雨、風呂場の中で全員バスタオル姿で背中を流されている俺は、完全に逃げ場を失っているのである。


「ふふふ、未来? 柳クンが困っているじゃないか。そろそろボクが変わろう」

「莉子ちゃん! うんっ! 次は私も洗ってねっ!!」

「……これ、変わる必要あるんですか?」

「キミの身体はとても男らしく大きいからね、一人だと大変だろう? ほらっ」

「っっっっ!!??」


 ぬるっと、泡に包まれた細い手が、俺の背中を撫でた。

 感触で分かる、これは日焼け止めクリームの時に散々俺を弄んできた十七夜月先輩の手だ。

 ……そう、手である。

 朝日ヶ丘先輩はタオル越しだったのに、十七夜月先輩は手で俺の背中を洗い出したんだ。


「なっ、ななななっ! 何で素手なんですかぁっ!?」

「おや? ボクはいつも、未来を洗う時はこうしているよ?」

「うん……莉子ちゃんの手……気持ち良いんだから」

「俺は朝日ヶ丘先輩じゃありませんよっ、くぅぅっ……!?」


 俺の叫びが、くすぐったさによってかき消される。

 まるで蛇のように、石鹸の泡を含んだ十七夜月先輩の手が俺の背中を、腰を、脇腹を這っていくんだ。


「言ったろう? キミと未来は似ているって。特にこうして、良い反応をしてくれる所もそっくりさ」

「や、やめ……っ……うっ……まっ……!」

「駄目だよ。キミは海にも落ちて、日焼け止めを塗って、砂にも潜ったのだから。特に背中は手が届かないからね、こうしてしっかり洗わないと」

「あ、洗うにしては……ぐっ……変な、ぁ……!」

「いけませんお嬢様。いつものイケない癖が出てしまっております。失礼ですがここは私にお任せください」


 十七夜月先輩の手が、手さばきがどんどんおかしくなってきていた。

 洗うだけじゃなくてねちっこいというか、繊細というには際どすぎる手さばき。

 それを止めてくれたのは、斑鳩宮さんの声だった。


「……ふむ。誠に言われてしまっては仕方ない。すまないね柳クン。つい、いつもの未来との流れになってしまうところだった」

「…………突っ込みませんからね?」


 仮に。

 もし仮にこのまま十七夜月先輩が、朝日ヶ丘先輩とのいつもの流れになったら俺はどうなっていたんだろうと想像してしまった。

 そんな事を思ってはいけないと分かっていても、この特殊過ぎる状況がそうさせるんだ。


「では、柳様。失礼いたします」

「ん、おぉ……っ!?」


 そうして、流れるようにこんどは斑鳩宮さんが俺の背中を洗い始めた。

 今日出会い、知り合ったばかりの女性に同じ風呂で同じバスタオル姿で背中を流してもらっている。

 今考えてもかなり意味の分からない状況だ。でもその中でも流石は専属執事と言った様子で前二人の先輩とは違ってとても心地いい。


 ……ただ、やっぱり素手なのかとは思ってしまうのだが。


「かゆい箇所やくすぐったい部分はございませんか?」

「そ、それはありませんが……な、何で斑鳩宮さんも素手なんですか……?」

「お嬢様のきめ細かな肌を傷つけない為に、昔からこうですが?」

「原因あなたじゃないですかっ!?」


 犯人が見つかった。

 十七夜月先輩が素手で人の身体を洗うように教育していたのは間違いなく斑鳩宮さんだった。

 そりゃ身近な人に毎日素手で洗われていればそれが普通になるだろう。


 ……その普通を今日であった俺にするのはどうかと思いますがね!?


「洗体と同時にマッサージも得意でございます。洗いながらでも湯上りでも可能ですが、いかがいたしましょうか」

「……湯上りで、お願いします」

「承知いたしました。しかし、そう仰ったのは柳様が初めてでございます。お嬢様も未来様も洗体されながらのマッサージをいつもご所望されるのですが」

「俺は俺ですからね!?」


 そう言う事、平気で言うの止めてほしい。

 先輩二人と違って斑鳩宮さんには悪意が無いのが余計に質が悪かった。

 絶対に男に聞かせる話じゃないのに。

 ていうかそれをされても平気な顔をしている先輩二人が変なのかもしれない。


 ……まあ、俺を含めた全員で、嬉々として家族風呂に入っている時点でそれはそうなのだが。


「咲蓮様。私では柳様のご期待に沿えませんでしたので、お願いしてもよろしいでしょうか?」

「うん。ぽっぽちゃん、任せて」


 頭を悩ませる俺の後ろで、斑鳩宮さんが咲蓮と何かを話している。

 どうやら交代らしい。

 そもそもターン制なのもおかしいが、ひょっとして俺の背中はバナナボートや砂風呂みたいなアクティビティだと思われてるんじゃないだろうか。


「総一郎の背中。洗える」

「……お手柔らかに頼む」


 鏡越しに、俺の背中に膝立ちで座る咲蓮が見えた。

 何て言うか刺激的な状況が連続すると、緊張を通り越して変な落ち着きが生まれてしまうみたいである。


 ただまあ、咲蓮なら三人と違って大丈夫だろうという安心感があった。

 ていうか最初の先輩二人が劇物すぎたのかもしれない。


「……タオルはありで頼むぞ」

「うん。総一郎、タオル好き?」

「今日だけで超好きになった」

「……超好き? うん、分かった」


 しかしそれはそれとして保険はかけさせてもらう。

 何かと理由をつけてくる先輩方はともかく、純粋な咲蓮にまで素手で背中を洗われたら俺は止められないし、どうにかなってしまいそうだから。


「じゃあ、いくね?」

「……あぁ」


 だから最後ぐらいゆっくりと、安全に背中を流してもら――。


「ぎゅー」

「~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!??????????」


 ――むにゅっ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ