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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第六章 狼姫のお泊りラブリゾート 後編

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第119話 「狼姫と、砂風呂ASMR」

 砂の穴の中は、想像以上に気持ち良かった。

 直射日光が当たる砂の表面は熱すぎて裸足では歩けないが、直接日が当たっていない砂の内側は文字通り風呂のような熱さでポカポカする。

 

 水じゃなくて砂と言うのも不思議な感じだ。

 身体が重さで動かせないのにそれがまた心地良くて、何て言うか身も心も全部委ねているようなのだが……。


「でもこれ、目隠しいります……?」

『いるんだよ総一郎くん!』

「うおわっ!?」


 頭上から急に朝日ヶ丘先輩の声が聞こえてきて、驚いた。

 だって俺も目隠しをされていて、周りが見えていないのである。

 おそらく俺が目隠しをされながら十七夜月先輩によって横穴に全身を埋められている時に、朝日ヶ丘先輩は斑鳩宮さんによって掘り起こされたのだと思う。


 まあ理由は何にせよ、見えない中で急に大声で声をかけられれば驚くのだ。


『さっきリラックス効果って言ったでしょ! 目隠しがあると無いとじゃあ、大違いなんだよっ! 大違いっ!!』

「は、はぁ……」


 朝日ヶ丘先輩の力説も分かる気がする。

 何故なら現在進行形でそれを俺が体感しているからだ。


 身体を動かせず、目も見えない。

 主に感じる波の音と砂の心地良さを感じながら、身を委ねる。


 何もしない、出来ないと言う自由だった。

 朝日ヶ丘先輩が何故目隠しをそこまで力説するかは、考えないものとするけれど。


『総一郎。きもちい?』

「ふおぅっ!?」

『わっ。びっくり』

「さ、ささささっ、咲蓮っ!?」


 そんな俺の右耳に、突然囁いてくる声がした。

 咲蓮である。その声、その反応、その内容から、間違いなく咲蓮である。

 

 いや問題なのは咲蓮が話しかけてきた事じゃない。

 俺との、距離感だった。

 間違いなく囁いてきた、小さく身近な声で、俺の耳を、的確に狙いながら……!


『うん。私もね、総一郎の隣。ごろんしてる」

「ごろんしてる!?」


 咲蓮が耳元で囁いてくる。

 今……今、外の状況はどうなってるんだ!?

 目隠しで何も見えないが、水着の咲蓮がまた俺の隣で寝ているって言うのか!?


『総一郎。顔、赤い』

「あっ……す、砂が熱いからだなっ!? さ、咲蓮は熱くないのか!?」


 思わず、変な声が出た。

 だって何度も目隠し状態で囁かれてみろ、変な声だって出るだろう……!


『うん。さっきのマット、莉子先輩が敷いてくれた』

「十七夜月先輩が……はっ!?」


 咲蓮の言葉で気づいた、気づいてしまった。

 そうだ今俺は、夏のビーチに埋められている。

 目隠しと咲蓮の囁きの衝撃ですっかり忘れていたが、俺を最初に驚かせた朝日ヶ丘先輩を始めとして十七夜月先輩や斑鳩宮さんも、この場にいる……。


 つまり、俺の……俺達のこの状況を見られているという事で。


『おやおや、お暑いね』

『はっ!? 私も莉子ちゃんに言葉責めしてもらえば良かった……!』

『あつあつ、でございます』


 頭上から、先輩方の声が聞こえてきた。

 欲望に忠実な朝日ヶ丘先輩はともかくとして、十七夜月先輩と斑鳩宮さんは間違いなく俺を見ている。

 

 砂に埋まった俺の横で、添い寝をしている咲蓮の事を……!


『そうだ咲蓮クン。柳クンが暑そうだから、ふーふーしてあげると良いよ』

「はいぃっ!?」


 十七夜月先輩によるとんでもない言葉が聞こえた。

 顔は見えないが、絶対に良からぬ事を思いついた十七夜月先輩の顔だった。


『そうだね咲蓮ちゃん! きっと総一郎くん喜ぶよ!! 私も喜ぶもん!!』

「朝日ヶ丘先輩! 咲蓮の教育に悪いですよ!?」


 そこに同調する朝日ヶ丘先輩。

 それは十七夜月先輩の恋人だからとかじゃなく、純粋すぎる程の欲望だった。


『咲蓮様。コツは両手で耳を覆う事でございます』

「斑鳩宮さんまでっ!?」


 そして淡々と、斑鳩宮さんがコツを伝える。

 何ですか斑鳩宮さんそのコツは何で知ってるんですかそんなコツ!?


「さ、咲蓮! だ、大丈夫だぞっ!? や、大和男児たるもの……このぐらいの暑さどうって――」

「……ふー」


 今日一番。

 バナナボートから落ちた時よりも。


 ――情けない、変な声が出てしまった。

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