17:ソロ専用の最弱スキル【レアドロップ】で【ステータス1固定】だけどたまたま倒したスライムが【召喚の杖】をドロップしたので人生ヌルゲー
「ぷっ。あれだけ威勢よく飛び出してったくせに、あんた達、ボロボロじゃない」
「まあね……かなり、疲れたよ」
ネルガルの冒険者ギルドに戻って、エルさんにクエスト成功の報告を行うと、開口一番にそのように嘲笑された。……言われるだろうなとは思ったよ。
「ま、生きててよかったわね。はい初クエストクリアおめでとう。これからも頑張ってね」
「え? あ、ありがとう」
……この言葉は想定していなかった。
きょとんとしていると、エルさんは三人分の冒険者カードを投げ渡す。俺達の登録もきちんとしてくれてたみたいだ。
別にサボっててもよかったのに。帰ってきてからゆっくり登録の手続きをすればいいだけだし。
こんなに助けられたら、なんだか申し訳ないな。
「あ、そうだ。じゃあいろいろ頑張ってくれたエルさんに、お土産あげようかな。はい、魔石」
「へえ、ギルド職員の手懐け方がわかってるじゃない。……て、あんた。この魔石、いくらか知ってて私にくれるの?」
「え、いや知らないけど」
エルさんにあげたのは、ダンジョン内にいたクモ型の魔物が魔石だった。濃い紫色で、なんとなくエルさんのイメージカラーだからあげただけだ。
……それに、まだまだいっぱいあるし。
ついでに換金も頼もうかな。
全部で五百個くらいあるんだ。
ドラゴンの魔石は出さないでおいた。
殆どは、ドラゴンとの戦闘で巻き添えになっていた魔物達で、いつの間にか魔石が地面に大量に転がっていただけだけど。
「ライトニングくん、ちょっと別室いこうか?」
「あはは。もうエルさんのお誘いは懲り懲りだよ」
「親切心なんだけどねぇ……。はいそれじゃ、八百二十万ロキスになるわ。盗まれないように大事に持ち帰りなさい」
エルさんがカウンターにドスンと置くのは、一枚十万ロキスの聖銀小判。八十二枚。
周りの冒険者達はぎょっとしてこちらを注目していた。……くそう、やられた。
傍から見れば俺達はたかが子供三人。その気になれば簡単にぶち殺せる。そんな人物らが、抱えきれないほどの大金を手にしてしまった。
「だから別室にって言ったのに。ケケケ」
「安心しろ! 俺が護衛しよう!」
そこで唐突にでかい声で現れた……最初にこの街に来た時に俺を宿まで護衛してくれたギルド職員の男の人!
「わあ、ありがとうございます!」
「……チッ」
無事に宿まで戻り、また名前を聞きそびれた。
「――ふう、みんな。今回はお疲れ。初回の試運転のつもりが、まさかこんなことになるなんてな」
「本当だよ。まさか僕が死にかけるとは思わなかったよ。マナルナの回復がなかったら終わってたね」
「いえ、それもこれもお二人が私を導いてくれたおかげです!」
部屋で三人。話題は尽きない。
道中の緊張から、ダンジョンの入り口に立った時の不安。これまでと違う魔物との戦闘に四苦八苦したこと。そしてドラゴン……。それをゴーレムで撃破して、めちゃくちゃ大きな真っ赤に燃える魔石を手にしたこと。
そして、その隣にあった『レアドロップ』のこと……。
紅く、大きな卵だ。
時折ドクンと脈打ち、焼けそうなくらい熱量を放っている。
運ぶときはライムに飲み込んでもらったが、今はとりあえず部屋に飾ってある。
「ダンジョンの中ではずっと、私のせいでライトの『レアドロップ』が発動していなかったんだよね……。ごめんなさい。何もわからなかったから……」
「俺達は分かっててマナルナを誘ったんだ。気にしないでくれ。それに結果的に、『レアドロップ』は発動したんだからな。なんでかはよくわからんが……しかしこれ、絶対ドラゴンの卵だよな」
「まあ間違いないね。どうする? 産まれてくる前に殺しとく?」
「いや~、流石に赤ちゃんを殺すのはなあ。それに『レアドロップ』で出現したものだから、大事にしたい。不要そうだからといって軽んじることはしたくないな」
自分がされていやなことを、ましてや俺自身のスキルを相手に行いたくない。
この卵もきっとどこかで使い道があるはずさ。
とにもかくにも……疲れた。
急激に体が重くなって、瞼も半開きだ。
「……寝るか」
「そだね。僕も疲れたー!」
「私もです。それじゃあ、ライト。行きましょっか」
「ん」
床にばたんと寝転がってもいいんだけど、マナルナに手を引かれて、ベッドまでやってきた柔らかなシーツにしわをつけてモゾモゾと枕の元までやってくる。
マナルナも当たり前のように俺の左側にやってきた。……おいおい、友達とはいえ一応男の子なのだが? 聖職者を目指していたせいなのか、マナルナはいつも危機感がちょっと薄い。
「おやすみ、マスター」
ライムもひょっこり俺の右側へ。いつもそんなことしないのに腕を絡めて、甘えるように目を閉じた。
いやなんだこの状況。
寝れるかっ。
★
「はあっ!」
「ギギギィ!」
翌日。
ライムが一つの仮説を立てた。
それを実証しに街の外で魔物を狩っていく。
ただし、マナルナ一人でだ。
「あ……これって、もしかして『レアドロップ』ですか?」
いましがた倒したゴブリンが魔石と一緒にアイテムを落とした。
まさしく『レアドロップ』だ。
「おお、そうそう。すごいな。マジでスキルが発動するぞ」
マナルナが嬉しそうに、乾いたミイラの腕みたいなアイテムを掲げて喜んでいた。
その恰好は、ライムの核を発動させて全身に装甲のようにゴーレムを纏わせた鎧を纏っていた。
「やっぱりね。つまり僕の一部である核を持って、ゴーレムの装甲に身を包めば、神からすれば『魔物に食べられた』のと同じ。つまり死んだことと同義なんだよ。死んでる人間とは協力なんてできるはずがない。つまり『レアドロップ』スキルの発動条件を満たしているってことなんだね」
はあ。魔物で倒しても発動するし、今のマナルナの状況でもオーケーだし、神も結構いい加減なものだな。おかげで、マナルナとこれからも心置きなくパーティーを組めるぞ。
「あ、待って! な、なにかくる――!?」
「ん? どうしたライム……って、マジで大丈夫か!?」
ふと焦ったように声を上げるライムを見れば、青ざめた顔で、何度も嗚咽していた。よだれがだらだらと、膝に手をついて苦しそうに唸っていた。
急にどうした!? 何か悪いものでも食べたか!?
「ライムちゃん!? だ、大丈夫? いま回復するね!」
マナルナが魔力を練り上げる間に、ライムは手を出してそれを制した。
俺たちはとまどうばかりだが……ライムがいらないという以上、むやみに手出しはできない。
「うぐう……ぐ、ぐ……!? で、出る!!!」
とうとう、ライムは口から何かを吐き出した。
それは赤く、ライムのよだれで濡れて……そして元気に、吠えた。
「キューン!」
「ドラゴン!? 卵から産まれたのか!」
「キューン! キュンキューン!」
赤い鱗のドラゴン。俺達が倒したあの固体と同じような見た目だが、まだまだ小さい。目もくりくりしていて、なんだかうれしそうに鳴きながら翼をパタパタとはためいてぶきっちょに空を飛んだ。
そして、俺の顔を見ると、元気に周りをくるくる回って……最終的に足元で、眠ってしまった。
「……懐かれたのか?」
「そう見えますね……」
「ぜえ、ぜえ……ならひとまず、殺すのは、やめとこっか。僕も産みの親としてなんだか愛着わいちゃったよ」
風が吹く。
今日もいい天気だ。
さて。それじゃあ、お次はどんな『レアドロップ』と巡り合えるかな?
第一章はここまでです!お読み頂きありがとうございました!!!
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