11:明日から
「あとこれは私からの餞別ね。黒を基調にしたシックなデザインだから、マントがよく映えると思うの。着てみてちょうだい」
おばさんから服もプレゼントされて、さらにその後で、息子さんからもルビーの指輪を頂いてしまった。錬金術で加工したルビーは炎のダメージを軽減してくれる効果があるらしい。
なんやかんや、結局着替えて、全体像をお披露目することになった。
服のサイズも指輪もぴったりだ。マントなんてあまりつけないから少々慣れないが、本当に軽くて動きやすい。
最後に、置いていったけど使わなかったアイテムを返してもらって、帰路についた。
「ありがとう。この御恩は、必ず返すと誓うよ」
「わしらのことはどうだっていんだよ! 気張りすぎて空回っておっ死んでも知らねぇからな!」
おじさんも、俺が店を出る最後にはそっぽを向きながらも手を振り返してくれた。かわいいところもあるじゃないか。
これで明日から、本格的に冒険者として活動していく。ギルドで冒険者登録をして、クエストをこなしていこう。
これまでは外で魔石を集めたら換金しにギルドへ立ち寄るくらいに留めておいていた。その方が変に注目されないで楽だからだ。
俺達をカモにしようとして脚を折られたエルさんが受付にいるタイミングで彼女に魔石を換金してもらうのでスムーズに事は終わるし、やっぱり小さな妹を連れて親のお使いで来ているという体裁は、俺が怪しい目で見られることはあっても、ライムの実力を隠すのにはもってこいだった。
実際にエルさんみたいに金を横取りしようとしてくる呆れた奴らも何人かいたけど、その度に俺を無駄に警戒するので、気付かれることなくライムが返り討ちにして、気絶した相手から自業自得の慰謝料を拝借してそれをマナルナとの食費に当てた。
今日も夕方にはマナルナとの食事を約束している。
お互いに順調にいってれば、明日から人生の門出だ。その祝賀会ってところだ。まあこの三週間、毎日三人で飯を食ってたが、今日で最後になる。
マナルナはシスターとなる修行に明け暮れ、俺は冒険者として、時には旅先に泊まることになることも多いだろう。
裏の意味では送別会というわけだ。
少し寂しい気もするが、景気よく送り出してやろう。
しかし……日が暮れても、マナルナがいつものレストランに来ることはなかった。




