考えれば考える程ドツボに嵌る
恋にもし親に都合がつくなら野菜などを仕送りしてもらえば? と言われたので確かに恋が料理なんて作れるんならこの際作ってもらおうと思った。 家の中では恋はまだ掃除の真っ最中なので俺はベランダに出た。
あれ? すぐ出て行ってもらうんじゃなかったのか? とそんな行動をしている自分に疑問符が浮かんだが生活改善する良い機会かもなと思って携帯を取り出すとLINEにメッセージが届いていた。
クラスメイトの渡井 涼( わたらい りょう)からだった。
『お前ズル休みか?』
『風邪引いて休んだ』
『ふぅん、お前も風邪引くんだな?』
『悪いかよ?』
『見舞いに行ってやろうか?』
マズい…… 今来られると非常にマズい、いや、風邪を引いたなんて嘘ついたのもマズいかもしれん。奴がくるとなるとあいつの友達も来そうだし。
涼とは高校で1番仲良くなった友達だけどあいつにはいつも友達なんだか彼女なんだかよくわからない広瀬 莉華もオマケで付いてくる。2人とも美男美女でお似合いなんだけどそれだけに目立つから今日は来ないで欲しい……
だってもしこの状況を見られてあいつらが口をうっかり滑らしてしまったら…… いや、考え過ぎか。 でも俺のこの行いを肯定してくれるかもしれん、ただ知られなければ知られないで俺的には楽だ。
俺がまたまた自問自答していると……
『返事がないって事は肯定でいいって事な?』
『ごめん、風邪ってのは嘘だ』
『ああ、そんな事だと思った』
『信用してねぇのかよ、ひでぇわ』
ほら、やっぱ嘘じゃんと言われた。恋の事でこれからどうしよう? なんてずっと考えていたのであれこれ考えるから墓穴を掘ってしまいそうだ。
クソ! とりあえず母さんに電話してとっととひとつずつやる事をこなしていこう。 面倒くさい、恋が来てから考える事がいっぱいで本当に面倒くさい…… 美少女だからって現実こんな事になると面倒くさい事この上ない。
涼の事でそういえばと思い出し学校の休み時間の休み時間を狙い電話を掛ける事にした。 これなら学校をズル休みしたなんて母さんも思わないだろう。 危うく授業中に電話をするなんて浅はかなミスをする所だった……
漫画だったらポンポンといい感じに進んで行くはずなんだろうけどそしてその内2人は…… とか考えていると母さんが電話に出た。
「もしもし母さん? 仕送りでなんか料理とか作ってみようとか思ったから食材送ってくれよ」
「へぇ、あんたが珍しい事言うのね? 掃除もろくに出来ないくせに。どうせゴミ屋敷になってるだろうから後で母さん掃除しに行ってあげようかと思ってたんだよ」
それだけはやめて下さい…… そんな事されたら俺終わりじゃん。
「いや、いいよそれは。友達とかと母さんが会ったら恥ずかしいし」
「あら? 酷いじゃない。 春季の友達に会ったらよろしくねって言いたいのに」
「春季くーん! 春季君!」
すると突然ベランダからでも聞こえる恋の声がした。 おい! なんで俺がお前の為にコソコソと動いてやっているのにいちいちぶち壊しにするんだ!?
俺がベランダから部屋の中を覗き恋と目が合い静かにしろと合図を送ると恋はあっ! となり黙った。 だが母さんにはしっかりと聞こえていたらしく……
「春季、今女の子の声が聞こえたけど? 」
「だって学校にいるから女子から声掛けられるくらいあるだろ? じゃあそういう事で!」
ボロが出る前にすぐ電話を切った。 ふぅと溜め息を吐いた。 まったく…… 隠し事するとろくな事ないなと思いベランダから部屋の中に入る。
すると恋がさっきはごめんなさいと謝ってきた。 本当だよ…… 余計なトラブルをこれ以上増やさないでくれと思った。
「で? なんか用だったか?」
「お洗濯してたんですけど…… 私の服も雨でびしょ濡れだったし、春季君がさっき脱いだ部屋着も一緒にしちゃおうと思って」
「それで?」
「柔軟剤がもう残ってないですって言おうとしたんです」
ああ、なんだ。 そんな事かよ…… ていうか買いに行くようじゃん、また出かける羽目になるのかよ? 非常に面倒くせぇと思ったが大掃除になっているのでとりあえずまた出掛ける事にした。
そして柔軟剤やら必要になりそうな物はとりあえず買ってきた。 そう、だが俺は肝心な事を忘れていた。 恋は男ではなく女の子のなのだ。 はっきり言って必要な物はまだまだあったのだ。
それを頭から抜けた俺は帰宅して新しい柔軟剤買ってきたぞと恋に言うと掃除も大体進んでいてもう終わりそうになっていた。
「お疲れ様です、というか何回も買い出しに行かせてごめんなさい」
「もう行ったり来たりするのはごめんだなってもう昼過ぎてんのか……」
「あ、そうでした! お昼作りますね、せっかく食材を買ってきてもらったんですから無駄にはしません!」
そう言って何を買ってきたんだろう? と恋はスーパーの袋をガサゴソとしていると表情が曇って来ている。
「どうした?」
「春季君、お野菜とか買ってきてもらえたのはいいんですけどもうちょっと安く抑えた方がいいんじゃないですか? このお肉とかだってもう少し安いのとかあったんじゃないかなって……」
「ああ、そうか。 普段買い慣れていないから目に付いた物適当に買ってきただけだったわ」
「一人暮らしなんですからもうちょっと節約を…… ってごめんなさい! 私が言えた立場じゃありませんでした、お世話になってるのに……」
ふんふん、確かに仕送りの金に甘えて気にしてなかったわと思ってそうだなと聞いていたら急に謝ってきた。
「まぁいいわ。 確かにそうだと思ったし、なんだったらこれから恋が買いに行ってもいいしな、どうせ恋は記憶ないなら学校行かないだろう?」
「え? いいんですか?」
「いいよ、その時金だって渡すからさ」
「はい!」
なんか嬉しそうにしているが俺にも打算はあった。 こいつが記憶喪失ならこんな所に居るよりも外に出たら何か思い出すかもしれないし記憶喪失が嘘ならもしかすると恋の知り合いか何かに見つかって帰らざるを得なくなるだろうと。
そうなれば俺にも何か振り掛かってきそうだがその時はもう仕方ない…… 事を大きくしない事を考えよう。 恋も俺に迷惑をかける気ないと言っていたしと考え疲れた俺はそう思った。




