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名前が欲しい!


高坂こうさか 春季はるき。高校1年生になったばかりだ。 そして俺は今日記憶喪失になったというこの子のお陰で学校を休む事になった。 別に学校なんて好きじゃないし面倒くさいから休むのはいいけど……



目の前にいるこの子は名前もわからない、歳もわからない、今までどこに住みどこの学校に行っていたか、全て覚えていない。



本当だったらある意味凄いな、記憶が戻らなければ全く新しい人生スタートじゃんなんて思っていたけど高校生か中学生だよな? 学校から連絡来るんじゃね?



そしたらなんやかんやで捜索が始まって、そこから俺の所へいるといつかバレる。そしたら俺ってどうなるんだ? ヤバくね?



そしてバレた後は学校に通えるか? いや、無理だろ…… 絶対に誘拐、拉致監禁とかしてたと思われて俺の人生そこで終了だ。 可愛いに騙されてこの子がつい下手な事でも喋ったら?



考えただけでもゾッとした。 そしてそんな事を考えてるととても美少女だ、やったぜ! いただきますなんて気分になれねぇし……



俺がそんな風に考えを張り巡らしていると彼女は俺の事を心配しているような眼差しで見つめてきた。 おいおい、誰のせいで俺がここまで悩んでいると思ってるんだ?



「あ、あの……」



あ、やっぱり警察に突き出そう。 それが間違いない! 一晩泊めた事はもう過ぎてしまった事だ、どうしようもない。俺がまだ10代でよかった? あれ? でもこの子が誤解を招くような事言ったら結局は……



「あのー……」



そうなる前に友達くらいにはこんな事になっちゃってさぁ! とか話しておくべきか? でもそれ普通即警察に連れて行くべきだろ? って言うよな? いや、放っておけなかったしと言えば…… うーん。



「あのッ!」


「うわッ! なんだよ、びっくりさせるなよ……」


「だってさっきから話し掛けてたのに全然構って、じゃなくてッ! 答えてくれなかったから…… 」


「ああ、考え事」



てかお前とかコイツとか名前ないと不便だな…… いや、つける必要あるか? すぐ追い出すかいなくなるかもしれないコイツに。名前付けると情が湧くかもしれないって、ペットじゃあるまいし。



今もこちらを見ている彼女が不意に俺に近付いてきた。 俺はあれこれまだ考えていたが…… なんでコイツこんなに近くにいるんだ?



彼女の顔は俺のすぐ目の前にありビックリして俺は一歩身を引くと彼女も一歩前に出る。なんだか少し怒っているような気がする……



「な、何?」


「私さっきから無視されてばかり…… 名前なんて言うんですか?」


「え? あ、俺の名前? 高坂春季だけど?」



え? これって訴える時とかに必要な情報? 俺コイツに逆に身元調査でもされてんの? 最近手が込んでるって言うし油断出来なそうだ……



「高坂…… 春季…… さん? 君? どっちがいいのかなぁ………… は、春季君って呼んじゃおうかな…… えへッ、えへへ」



なんてどうでもいい事で悩んでるんだ? これからの事を悩むべきだろうに……

俺が自分の身の振り方に全力で悩んでいると耳元で大きな声で春季君!! と叫ばれた。



耳がキーンとして彼女を見るとまた怒っているような表情になっていた。さっきはえへへと笑っていたのに忙しい奴だな!



「だからビックリさせんなよ!」


「だって…… こうでもしないと。 春季君さっきからずっと心ここにあらずで」



シュンとしてまた下を向いてしまった。だけどこの方が考え事に集中出来ていいかも! と思ったがボソッと聞こえてしまった。



「………え」


「え?」


「…… 名前。 私も名前…… 春季君が」


「はい?」


「春季君が私に名前を付けて下さい!」



んん? 何この展開? てかなんで俺が他所様の娘に名前を付けにゃいかんのか? コイツはコイツで凄く大事な事言いましたよみたいな顔してるし……



というか俺コイツが本当に記憶喪失かすら疑ってんだけど? あ、試しに引っ掛けてみるか。



「前の名前は?」


「くす!! くしゅんッ!」


「は?」


「く、くしゃみが…… えと覚えてません」



なんか…… なんかとてもグレーな感じがするけど今のどうなんだ? セーフなの? アウトなの?



「そうか、記憶喪失だもんなぁ」



チラッと彼女を見るとうんうんと頷く。 なんか逆に嘘っぽい…… まぁそんなにご所望なら。



「名前ねぇ…… 」


「はい!」


「……ミケ」


「そ、それってペットみたいな……」


「ああ、昨日猫が居たから俺が飼うならミケかなぁって」



そう言うと彼女は納得したかのように、はぁ、なるほど! みたいな事を言ってる。 何がなるほどなんだ?」



「スズ、ハナ、トラ」


「ね、猫から離れて下さい!」


「うーん、ブチ、ナナ、レン」



彼女はあっ! といい俺のセンスのない名前のオンパレードを遮った。



「最後のがいいです」


「ん? 最後のってレン?」


「はい! レン、こう書いてれんにします、 春季君命名です!」


「あ、ああ。 そう……」


何がそんなに嬉しいのか彼女は恋という名前が気に入ったようだ。 そんな名前なんて気にしている場合かと俺は思ったが俺の家に来てから1番の笑顔を見せた。




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