知らないうちにどうなってるの?
「春季! あの可愛い子またお前と一緒かよ!? 実は付き合ってるとか?」
「いやいや、ないない」
「じゃあなんでわざわざあの子あそこまでついてきてんだよ? しかも澤村まで!」
嘉人からまた絡まれていた。 くそ、こうなると思った。 恋の奴…… 実は一緒に住んでますなんて言ったら付き合ってるよりよっぽどタチが悪い。
「あ〜、あたし高坂に告ったから一緒に来ただけよ」
「え、 マジで? 春季に? お前モテ期なの?」
「知らねぇよ、俺もビックリしてんだからさ」
「さぁ邪魔者はあっち行って! あたしは高坂と一緒にいるんだから!」
そう澤村に言われ嘉人はまだ聞きたい事があるようだがしぶしぶと向こうへ行った。
「さてとあたしも高坂じゃなくて春季って呼ぶからあたしの事も名前で呼んでみて? そうすれば距離が近くなったような気がするでしょ?」
「なぁ澤村、俺別にまだ付き合うとかそういうのってよくわかんないし実の所澤村はいい奴だって思ってるけどまだなんていうかさ……」
「うん、それでいいよ? あたしそんなに答え急いでないよ。 でも隙があったらどんどんアタックするけど」
「お前って堂々とそんな事言うよな」
でしょ? っと澤村は満面の笑みで俺に言う。 まぁそのうち俺の曖昧な態度に愛想尽かすだろうな、澤村と付き合うとか今はまだ考えられないしな。 じゃあ恋が居なくなったら? と考えたがそこもよくわからない……
「ほら、彩奈って呼んでみて?」
「じゃあ彩奈」
「何?春季」
「呼んだだけ」
そんなんでもいいよいいよとコイツは嬉しそうだ。
「お前らいつの間にそんな仲良くなってんの?」
横から涼の声が聞こえた。 そうか、涼には言ってなかった、俺自身ここの所のドタバタで結構重大な事だったのに言いそびれていた。
「渡井、あたし春季に告ったのよ」
「え? 俺聞いてなかったな」
「ああ、ちょっと最近立て込んでて言うの忘れてた」
そう言うとああ、確かになと涼は納得したようだった。恋がその事で家を飛び出したのは知らないが携帯の事でと涼は思ってるんだろう。
「春季何か大変だったの?」
「うん、まぁいろいろとさ……」
すると俺の携帯が鳴った。 恋からメッセージが届いていた。
『春季君、今日学校終わる頃にお迎えに行くからね!』
マジかよ…… 俺が携帯の画面を見て硬直していると彩奈が何々?と画面を覗いてきた。
「恋って…… あの恋ちゃんだよね? どうして恋ちゃんが迎えに来るのかな春季?」
「どうしてだろうな? 俺もわかんねぇ……」
「春季に告った以上春季に近付く女の子は恋ちゃんであろうと放っておけないなぁ」
「放っておけないってなんだよ?」
澤村改め彩奈はしばらくうーんと考えパッと閃いたのかそういえばと言って俺の家にやっぱり行ってみたいと言い出した…… マズい展開だこれ。
ていうかなんで男の家に来ようとするんだよ? 恋は致し方なく俺の家に来たわけだからまだわかる所もあるけど……
それに俺って恋に下着やら化粧品挙句には携帯まで与えてまるで長居させる気満々じゃねぇかよ…… なんか矛盾してるな、あいつの家族だって心配してるだろうに。
でもなんで音沙汰ないんだ? 警察は? 事件性ないから探されてないのか? 恋はどの段階で記憶喪失になったんだ? いや、そうじゃない、記憶喪失かすらわかんねぇ……
くそ…… 恋お前嘘は下手そうだけど何が何だかわからなくさせるのは上手いよ。 ダメだ、それより今の脅威をなんとかしねぇと! ああ、ごめん彩奈、仮にも俺を好きだと言ってくれた初めての子を脅威をなんて言ってしまって……
ん?それにしても涼はいるのに莉華は? と思うと莉華は少し離れた自分の机から涼を見ていた。 そして莉華が俺に気付くとニコリと笑い手を振っていた。 なんだ?
「春季」
彩奈の声で現実に引き戻される。
「で? 行ってもいい? そういうのは少し経ってからにしようと思ったけどなんか引っかかるのよねぇ」
ああ、こりゃいろいろ裏目に出てるわ。どうすっかなぁ、何かいい考えないかな涼? と涼に目をやるとこの野郎…… 笑いを堪えてやがる。
「今日は恋ちゃんと3人で帰ろうか? 春季の家までね!」
ふぅ、落ち着けよ俺。整理しよう、恋の事も気に掛け彩奈の事も気に掛け、それに恋の家族の事や捜索の事、更にうちの親の事。
なんだこれ? その内破綻どころか今日の帰りにはもう大変な事になりそうじゃねぇか…… 明らかに荷が重い。 だけど恋の事このまま投げ出すなんて無責任すぎる。
「春季、聞いてるの?」
「うん? ああ」
「春季ってさ、そんなお家訪問がそんなに嫌なの? あたし春季がいやらしい物持ってたりしたりしても平気だって言ったわよね? なのにそれ以上の事があるのかな?」
「あるんだよねぇこれが……」
「え!?」
突然予想外の方向から話に割り込んできたのは莉華だった。 え? なんかいい手があるの?
「もう……見てらんないよ、まったく」
「え? 莉華に何か関係ある事なの?」
「恋ちゃんと私友達なの知ってるでしょ? でね、恋ちゃん高坂君の事好きなのよ。私アドバイスしたんだ、恋ちゃんの親って放任主義だから高坂君の家にお泊まりして高坂君の事惚れさせたら?って。 だから恋ちゃんはよく寝泊まりしに行ってるし当然私物も置いてるからまずいかもってって事! 高坂君変に隠そうとするからそうなるのよ?」
初耳なんですけどそれ? つうかよくそんな適当な事をあれやこれやと……
「じゃあ春季と恋ちゃんって随分前から?」
「そうだよ? 少なくとも彩奈ちゃんよりも前からだね」
「じゃあ春季は恋ちゃんが好きだって言ってるのにあたしの告白聞いても受ける気さらさらなかった?」
彩奈の顔が怖い…… 莉華の奴が恋が俺の事好きなんて言うから。 少しでも間違えたら修羅場に……
「いや俺さ、恋や彩奈の気持ちはありがたいって思ってるけど彩奈の時と同じなんだ。 俺みたいな奴がおこがましいけどさ、いきなり好きって言われてもそいつの事よくわかんないで付き合えるかって言われたらちょっと違う気するんだ」
これじゃあ俺って女心を弄んでいる奴みたいになってるんじゃないか? この場から今すぐにでも消えてしまいたい、今日は学校に来るんじゃなかった、やっぱり休めば良かった……
「うーん、要はお試し期間が欲しいって事? でも春季って恋ちゃんとそんなに仲良かったなんて知らなかったんですけど!」
「だって俺悪いと思ってるけど恋とも付き合ってる気なかったからさ、友達みたいな……」
そうだ…… もうここまで来たら俺最低な奴で通してしまえ。 くそ、泣きたいけど仕方ない。 俺がここでなんと言われようが恋の今の状況を守れればそれで良いじゃないか? いや、良くない。俺が良くないぞ? なんでそこまで恋に…… もういいや、なるようになってしまえ。
「へぇ、じゃあ恋ちゃんもそこまでしてるのに春季を落とせてないって事だよね? そして春季は恋ちゃんにまったく手を出してないと」
「うん、それはまぁ……」
手を出してないのは本当だ、もし何かあったら恋の親に殺されそうだし。
「ならあたしが恋ちゃんよりも春季を夢中にさせればいいって事ね!」
ええ!? そうなるか?
そう言って彩奈は自分の席へと戻って行く。 莉華とんでもない事を言ってくれたな……
「ほらね? 最初から付き合ってる事にしちゃえばこんな事にならなかったじゃない? 手が掛かるなぁ」
莉華はそう言って涼の腕を掴んで行ってしまった。 頭が痛くなってきた……




