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『88歳童貞の転生先は、魔法極振りレベル999の最強賢者でした~今度こそ青春したいのに、世界が俺を放っておいてくれません~』  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


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第8話:すれ違う青春大作戦と、不戦勝の嵐

「――というわけで、来週は『全校武術・魔法大会』が開催される。優勝者は王族から直々に表彰される名誉ある大会だ。腕に覚えのある者は奮って参加するように」


ホームルームでの教師の告知を聞いた瞬間、わしの頭に電流が走った。


(こ、これじゃ……! 青春のビッグイベント、学園の大会キターーーッ!!)


わしは机の下で、ギュッと拳を握りしめた。 これこそが、わしが求めていた「普通の青春」を取り戻す最大のチャンスである。


作戦はこうだ。 まずは大会にエントリーする。そして一回戦、強そうな上級生を相手に、汗水垂らして泥臭く戦う。「くっ、さすがは先輩だ……!」などと爽やかなセリフを吐きつつ、最後は華麗に敗北するのだ。 傷だらけで控え室に戻ったわしに、クラスの可愛い女の子が「シゲオ君、お疲れ様! かっこよかったよ!」とハンカチを差し出してくれる。 そこから始まる、等身大の甘酸っぱいロマンス……!


「完璧じゃ……! わしの青春プランに死角なし!」


誰にも聞かれないようにほくそ笑み、わしはすぐさま出場者名簿に自分の名前を書き込んだ。


しかし、わしは知らなかった。 その名簿の「シゲオ」という文字を見た二人の少女が、学園の裏庭で密かに結託していたことを。


「……シゲオ様が自ら御出馬されるとはな。しかし、あのような神聖なる御方に、有象無象の生徒どもが武器を向けるなど万死に値する」 「ええ、全く同感よ。マスターの貴重な魔力と時間を、あんな低レベルな大会の凡人相手に消費させるわけにはいかないわ。マスターのお手を煩わせる前に、私たちがすべて『お掃除』しておくべきね」


普段はシゲオの隣を巡って火花を散らしている褐色の戦姫アリアと、天才魔法少女リナ。 この時ばかりは「シゲオ様を守る(※全く必要ない)」という謎の使命感により、恐るべき同盟が結ばれてしまったのである。


そして迎えた、大会当日。


「よし、一回戦の相手は剣術科の上級生だな! いい感じにやられるぞ!」


わしは準備体操を念入りに行い、意気揚々と闘技場の舞台へと上がった。 観客席からは歓声が飛び交い、いかにも「学園の大会」という熱気に包まれている。


「シゲオ選手、入場! 対するは、剣術科三年、ゴードン選手!」


実況の声と共に、向かい側から筋骨隆々の巨漢の上級生が姿を現した。身の丈ほどもある大剣を背負い、顔には歴戦の傷跡がある。 (おおっ、いかにも強そうな先輩じゃ! よし、まずは彼の大剣をギリギリで受け止めて、押し負ける演技を……)


わしが木剣を構え、爽やかな笑顔を向けた瞬間だった。


「ひっ……! ヒィィィィィッ!!」


ゴードン先輩は、わしの顔を見た途端に悲鳴を上げ、持っていた大剣をガランッと床に落とした。


「せ、先輩? どうしました?」 「い、命だけは! 命だけはお助けをぉぉっ! お前を傷つけたら、俺の家族ごとミンチにすると……っ! き、棄権します!! 俺の負けだぁぁぁっ!!」


ゴードン先輩は土下座の姿勢のまま猛スピードで後ずさりし、そのまま闘技場の外へと逃げ出してしまった。


「えっ? ……ええっ!?」


取り残されたわしは、ただただ困惑するしかなかった。 実は試合前夜、アリアが彼の寮の部屋に忍び込み、首筋に冷たい刃を当てて「明日の試合、どうなるか分かっているな?」と物理的な脅迫を行っていたのだが、わしがそれを知る由もない。


「あ、あれぇ? 先輩、急にお腹でも痛くなったのかな? まあ、次こそはいい勝負を……」


しかし、わしのささやかな願いは、二回戦、三回戦と進むにつれて無残に打ち砕かれていった。


二回戦の魔法科の相手は、わしの前に立つなり「あ、あんな魔力構成……無理だ、発狂してしまう……!」とリナのオタクじみた脅迫(とわしから無意識に漏れる魔力圧)に耐えきれず泡を吹いて気絶。 三回戦の相手に至っては、入場ゲートから出てくることすらなく「棄権」の二文字がアナウンスされた。


「……なんでじゃ。なんで誰も戦ってくれないんじゃ」


わしは木剣をぶら下げたまま、控え室のベンチで項垂れていた。 指一本動かさず、汗一滴流さずに、気づけば決勝戦まで駒を進めてしまっていたのだ。 ハンカチを差し出してくれる女の子どころか、観客席からは「触れるだけで相手を絶望させる覇王……!」と、さらに恐れられる始末である。


「シゲオ選手! いよいよ決勝戦です! 舞台へお願いします!」


係員の声に、わしは重い足取りで立ち上がった。


(こうなったら、決勝の相手に賭けるしかない! 決勝の相手なら、きっとわしをボコボコにしてくれるはずじゃ!)


一縷の望みを抱いて闘技場に出ると、そこには意外な人物が立っていた。 王立学園の生徒ではない。他校から特別枠で出場してきたというその少女は、東方の国を思わせる忍び装束のようなタイトな衣装に身を包み、鋭い目つきでわしを睨みつけていた。


「アナタが、この学園のトップ……。ふん、隙だらけね」


少女の手には、妖しく光る暗器が握られている。 どうやら今度の相手は、アリアたちの裏工作をすり抜けてきたらしい。本気の殺気が、ビリビリと肌を打つ。


(おおっ! この子なら、この子ならわしを倒してくれるかもしれん!)


わしは歓喜に震えながら、大きく両腕を広げ、無防備な胸を晒した。 さあ、どこからでもかかってこい! そしてわしに、爽やかな敗北と青春をくれぇっ!

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