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歩き続ける者達  作者: C・トベルト
第2章 湖の街で
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第10話 湖の街



〜夕方 ある森の近くで〜

日は暮れて、暗くなった空の中、風の音を聞きながら全身包帯で出来たダンクは風に飛ばされて空を飛んでいた。

その下ではピリオ・ド・シュリアと言う名前の少年が走りながらダンクを追っている。


「ま、待って…もう走れない…!」

「頑張れ坊主ー。ほれ、新しい回復呪文だよー」


ダンクは呑気な声を上げながらピリオに疲労回復の呪文をかける。

するとふらふらだったピリオは一気に背筋を伸ばし、力強く大地を蹴って走り続ける。


「ま、待てえええ!」

「頑張れ頑張れー、いやー魔法って相変わらず恐ろしい能力だよな、1日中走り続ける事も可能にするとは…」


ダンクは包帯で出来た顔を歪ませニヤリと笑う。

それはさながら新しい玩具を見つけた子どものようだ。


「どれ、もう一度魔法で回復して…ん?」


もう一度魔法をかけようとしたが、ダンクは近くに微量の魔力を感じた。

しかしその魔力は魔法使いが長年かけて練り上げてきた魔力とは違う、自然に作り上げられた純粋な魔力の存在だ。

これは人の身では絶対に届かない境地であり、悪魔や魔力を操る高等な怪物のみが纏う事を許された魔力。

ダンクの魔力探知能力は、それを見つけたのだ。


「どこだ…?

風の流れのせいでどこにいるのか分からない、なんとか近付いて」

「その必要は無いわ」


何処かから声が聞こえてきたのと同時に、ダンクが水色の結界に包まれる。

純粋な魔力で作られた結界は強力で、ダンクの体は動けなくなった。


「魔力の結界?

何だ、随分知恵の高い魔物が居るんだな…それに、随分綺麗な結界だ。

まるで空を切り取って出来たような美しさだな」


結界に捕らえられても焦りを一つも見せないダンク。

何故なら結界に一つの悪意も感じられなかったからだ。

ダンクを閉じ込めた結界はゆっくりと降りていき、地上に触れると同時に消滅する。

どうやら

風は穏やかで、ダンクが吹き飛ばされる程ではない。


「ここはどこだ?」

「こんばんは…不思議な人」


ダンクの独り言に答えたのは女性の声だ。

ダンクが振り帰ると、そこには黒いドレスを着た乙女が立っていた。髪は腰まで届く程に長くまるで上質な絹のような白髪に、湖面のように透き通った碧色の瞳の乙女だ。

ダンクは恭しく頭を下げる。


「さっき助けてくれたのは貴方か?助けてくれてありがとう」

「貴方を助けた訳じゃないわ、貴方を追う少年が可哀想だから止めただけよ」


声色は美しく、天上の琴の音のように心地よく聞こえてくる。

とても普通の人間には思えない程完成された美がダンクの目の前に立っている。

ダンクは少し声色を落とした。


「貴方は一体…?

さっきの結界といいその美しさといい、とても普通の人間には…」

「それを訊ねるのは止めましょう、互いの為にはならないわ」

「ダンク〜〜!」


突然背後からピリオの声が聞こえてくる。

ダンクが振り返ると、ピリオが汗を流しながら走ってきた。

ピリオはダンクの前で足を止め、笑顔を見せる。


「ダンク、良かった!

風が止んだんだね!」

「風が止んだ…?

いや、俺は今この人に助け」


言いながら振り返るダンクだが、そこに乙女の姿は無かった。

ダンクの立つ丘から見えたのは、綺麗な湖と新しい街の風景だ。ダンクは思わず口を止め、ピリオは楽しそうに笑う。


「……」

「うわあ、あれが湖の街アルデガン!?

ダンク、早く行こうよ。

急がないと今晩野宿になっちゃうよ!」

「あ、ああ…」(やっぱり世界は広いな。俺が何百年生きても、知らない事が次々と出てくる)


ダンクとピリオは街に向かって歩いていく。

それを見ていたのは真っ赤な夕陽と、美しい乙女だけだった。



◇◆◇◆◇◆



今回、ゲストキャラとしてMFさんの作品から『風の乙女』さんが出演しました。

MFさんありがとうございます。m(__)m


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