君を想う
場内が暗くなる。
「主任、いよいよですね!」
「ここで主任呼びやめてよ」
決断の翌日。
僕達はステージから5番目の席にいた。
ここじゃ気づかれるかもと思ったけどもう遅い。
どうにでもなれ、ってくらい会場は盛り上がっていた。
スクリーンのカウントダウン。スモークが漂い、レーザーの光が四方八方を指す。
「3! 2! 1!」
ゼロ! と発した途端に、デビュー曲のイントロが流れ、音圧が押し寄せる。
「いっくぜぇえー!」
明のシャウト。
後輩につられたわけでもなく、僕は歓声をあげていた。
ああ、明だ。
歌いながら観客を嬉しそうに見てる。
その動きが、止まった。
僕と目が合う。
ドラマみたいなスローモーション。
もう、見れないと思っていた笑顔。
その唇が声を出さず「トモ!」と動く。
胸を撃ち抜かれた気がした。
ひどいことをした。合わせる顔がない。
だけど全ての感情を差し置いて、「やっぱり好きだ」と、そう思った。
明は反対側へ走っていった。
興奮した後輩がバンバン背中を叩いてくる。
「ねぇ! 今主任のこと呼びましたよね!?」
痛いよ、という声が聞こえたかどうか。
僕の頬を、わけの分からない涙が伝った。
不思議ともう、苦しくはなかった。
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