↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/15

11 君の特別に

 私の瞳の色の宝石を探したと言ったダリウスさん。この夜会のコーディネートのためだけに? いえ、そんなはずはないわ。いくらなんでも、お互いの色を身につけることに意味がないことなんてないもの。


 じっとその深い紺の瞳を見つめてしまっていると、ダリウスさんが少し困ったような顔をしたので、ハッとした。見すぎた!


「レイラ。そう呼んでもいいだろうか」


 は……。はい。その言葉は音にならずに、私は慌てて頷いた。


「フィオレット伯爵に申し入れる前に、レイラとゆっくり話したい」


 ダリウスさんの低く落ち着いた声は甘く響き、私の胸に染み渡るのだった。


 ダリウスさんのエスコートで夜会に着くと、多くの人の視線を受けた。さすが公爵家の人は違う。

 そう思っていたら、そわそわした侯爵夫人と伯爵夫人が話しかけてくる。


「ダリウス様が出席なさるのは珍しいですね」

「お連れのお嬢様はどなた? 素敵なドレスね」


 ご夫人たちの興味はドレスだったらしい。グレーの生地にシルバー味の光沢あるオーガンジーを重ねたドレスは、フリルはないけれど、とても華やかだった。

 前世のある私はオーガンジーが珍しい生地だとは気づかなかったけれど、とても高価なものだったのかもしれない。


「バートン商会がドレス店を立ち上げたんです。良かったらそちらに」


 ダリウスさんが応えると、夫人たちは絶対行くわと嬉しそうに華やいでいた。

 私がダリウスさんを見上げた顔は不安そうだったのか「大丈夫だよ」と微笑みかけられた。


 本当にバートン商会の扱う商品は幅広い。はっきりとは聞いていないけれど公爵家の商会なんだろう。


「行こう。父上に紹介するよ」


 ユスティアス公爵は以前の夜会で軽く挨拶した程度だった。酵母の使用料はダリウスさんが間に入ってくれて、まだお礼ができていなかったのだ。


「父上、母上、こちらがフィオレット伯爵家のレイラ嬢です」

「フィオレット伯爵が娘、レイラと申します」

「君が! 南薫酒はとても良いお酒だね。ダリウスから聞いていたけれど、とても魅力的なお嬢さんでびっくりしたよ」

「この度は、良くしていただきまして、とても感謝しております」


 公爵に挨拶すると、私は夫人に向き直った。厳格そうな公爵に対して、とても穏やかに笑う麗しい方だ。

 

「ユスティアス公爵夫人、あのときは本当にありがとうございました」

「気にすることではないわ。でも見違えたわね。良かったわ」


 夫人の微笑みに、私は涙ぐんでしまう。慌てたようにダリウスさんが腰を引き寄せた。


「本当に、縁があったのね」


 夫人はコロコロと楽しそうに笑って、私は顔を真っ赤にしたのだった。


 国王陛下のお言葉を聞き、王太子殿下のファーストダンスが終わると、本格的に夜会が始まった。


「僕たちも踊ろう」


 ダリウスさんが私の手を導いて、ごく自然に踊りだす。私はダンスが上手ではないけれど、ダリウスさんのリードにつられてとても楽に踊れる。かつてないほどに楽しい。


「楽しい……!」

「それは良かった」


 1曲目が終わってお辞儀をしようと思ったけれど、手を離してもらえない。困ってダリウスさんの顔を見上げると、真剣な瞳と視線がぶつかった。


「もう二曲、踊って欲しいんだ」

「え?」

「僕を君の特別にしてほしい」


 驚いた私は、つい手を握りしめ、まだ手が繋がっていることに気づいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。