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エクソシスト:オリジンズ  作者: Syntax


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7/15

道場での最初の日

この章は、これまでとは少し違う始まりになります。


これまでのカイトは、ただ反応するだけでした。逃げて、生き延びて、自分の理解を超えた出来事に耐えるだけ。力は確かに彼の前に現れましたが、それはまだ彼の意思で扱えるものではありませんでした。


しかし――ここから変わります。


これは強さを語る章ではありません。

勝利を描く章でもありません。


これは、自分の身体をどう扱うか、どう動くか、そしてどこか自分のものではないように感じるその身体に、どう耳を傾けるかを学ぶ章です。


なぜなら、力とは――

使う前に、まず理解しなければならないものだからです。


そしてカイトにとって、それは――


何よりも難しい戦いになるでしょう。

教室は遠く感じられた。


静かではない——


ただ……切り離されていた。


声が重なり合い、意味を持たないまま波のように上下する。黒板にチョークが不規則に擦れる音。ページがめくられる。誰かが、面白くもないことでやけに大きく笑った。


何一つ、残らない。


カイトはじっと座り、自分の手に視線を落としていた。


普通に見える。


あまりにも普通だ。


指がわずかに動く。


まるで、自分にしか感じられない何かに反応しているかのように。


「……五パーセント……」


その数字が、また残る。


静かな示唆。


静かな真実。


自分の内側に何かが存在している——


そして、それを制御できていないということ。


彼はゆっくりと拳を握った。


地下鉄のことを思い出す。


すべてが壊れた瞬間。


弱かったからではない——


理解していなかったからだ。


「……力は与えられるものじゃない……」


「……理解するものだ。」


カイトはゆっくり息を吐いた。


つまり——


必要なのは、力じゃない。


制御だ。


本物の。


地に足のついたもの。



---


ベルが鳴った。


鋭く、終わりを告げる音。


教室は一瞬で動き出す。椅子が引かれ、バッグのジッパーが閉まり、会話が再び広がる。


カイトは立ち上がった。


バッグを持ち、


そのまま教室を出た。



---


道場は静かな通りの端にあった。


質素で、


目立たない。


通り過ぎても、誰も気に留めないような場所。


だが——


カイトが中に足を踏み入れた瞬間、


感じた。



---


空気が違う。


重い。


温かい。


生きている。



---


木の床の上で、人の体が一定のリズムで動いている。足は力ではなく制御で滑り、手は正確に空を切り、決められた位置でぴたりと止まる。


すべての動きに意味がある。


すべての動作が意図的だ。


無駄なエネルギーはない。


迷いもない。



---


カイトは入口近くに立ち、


見ていた。


理解しようとしていた。



---


「おい。」


その声がすべてを切り裂いた。


鋭く、


直接的に。



---


「……見学か、それとも何かしに来たのか?」



---


カイトは顔を上げた。


指導者が中央に立っている。


背が高く、


広い肩。


腕を組み、


柔らかさのない目。



---


「……学びに来ました。」



---


沈黙が続く。


測るような、


見極めるような沈黙。



---


指導者は一歩前に出た。


ゆっくりと、


制御された動きで。



---


「……誰だって学びたいと言う。」


一瞬の間。



---


「……教える価値がある理由を見せろ。」



---


構えなし。


予告なし。



---


動いた。



---


速い。



---


一撃がカイトの胸に向かって一直線に来る。


無駄のない、


正確な一撃。



---


カイトは反射的に動いた。


かわそうとする——


だが、足りない。



---


衝撃。



---


バランスが一瞬で崩れる。


足が滑り、


体が傾き——


床に叩きつけられた。



---


その音が道場に響く。



---


「……遅い。」



---


カイトは体を起こす。


何も言わない。


反論もしない。



---


「……もう一度。」



---


二撃目はさらに速い。



---


カイトは追おうとする。


読み取ろうとする——



---


遅い。



---


また一撃。


また転倒。



---


「……考えているな。」


指導者が近づく。



---


「……それがお前の問題だ。」



---


カイトは再び立つ。


呼吸が重くなる。


体に負担が出始めている。



---


「……功夫は考えるものじゃない。」


一瞬の間。



---


「……流れだ。」



---


指導者が踏み込む。



---


「……自然な反応。」



---


打撃。



---


カイトは動こうとする——


間に合わない。


当たる。


倒れる。



---


「……体はすでに動き方を知っている。」



---


また一撃。



---


「……ただ、それを信じていないだけだ。」



---


カイトは歯を食いしばる。


再び立ち上がる。



---


今度は——


予測しない。


先を読まない。



---


動く。



---


綺麗ではない。


完璧でもない。



---


だが——


早い。



---


打撃はかすめるだけで、完全には入らなかった。



---


指導者が止まる。



---


わずかな間。



---


「……今のだ。」



---


「……それが流れだ。」



---


カイトは体勢を整える。


筋肉が震え、


呼吸は乱れている。


だが——


何かが変わった。



---


初めて——


体を無理に動かしていない。



---


体の声を聞いている。



---


「……受けるな……」


指導者が静かに言う。



---


「……逆らうな。」



---


「……流れに任せろ。」



---


カイトは小さくうなずく。


誰にでもなく、自分に向けて。



---


指導者は一歩下がる。



---


「……今日はここまでだ。」



---


場の緊張が緩む。


生徒たちは再び動き出す。


だが、視線はまだ残っていた。



---


指導者は背を向ける。



---


「……明日来い。」



---


カイトはわずかに眉をひそめる。


「……明日?」



---


「……朝五時だ。」


平坦な声。



---


「……遅れるなら来るな。」



---


カイトは一度だけうなずく。


「……来ます。」



---


一瞬の間。


そして——


「……槍を学びたいです。」



---


指導者の動きが止まる。



---


沈黙。



---


次の瞬間——


鋭い動き。



---


手がカイトの肩を打つ。



---


強くはない。


だが、正確。



---


カイトの姿勢は一瞬で崩れた。



---


「……俺が許すまでだ。」



---


指導者の声が低くなる。



---


「……武器は体に従う。」



---


一歩近づく。



---


「……その体はまだ不安定だ。」



---


沈黙。



---


カイトは反論しない。


抵抗もしない。



---


「……わかりました。」



---


指導者は一度だけうなずき、


そのまま歩き去った。



---


「……よくやったな。」



---


カイトは振り返る。



---


一人の少年が立っていた。


落ち着いた、


まっすぐな姿勢。


揺るがない目。



---


嘲りはない。


評価でもない。



---


純粋な言葉。



---


「……初日としては、って意味だけど。」


軽く付け加える。



---


「……あれだけ何度も立ち上がるやつ、あまりいない。」



---


カイトは一度瞬きをし、


うなずいた。


「……ありがとう。」



---


「……タカシだ。」



---


「……カイト。」



---


タカシはわずかに微笑む。


大きくではない。


ほんの少し。



---


「……そのうち慣れる。」


一瞬の間。



---


「……それか、無理か。」



---


そこに傲慢さはない。


ただの事実。



---


背後から——


別の声が入る。



---


「……まあ、こいつの言うことは正しいけど、あんまり真に受けすぎるなよ。」



---


背の高い男が近づいてくる。


リラックスしていて、


自信がある。



---


「……リョウ。」



---


「……カイト。」



---


「……お前、普通より長く持ったな。」


腕を組むリョウ。



---


「……それだけでも大したもんだ。」



---


さらにもう一人。



---


「……構えは悪い。」



---


少女が前に出る。


鋭い目。


観察するような視線。



---


「……でも、タイミングは良くなった。」


一瞬の間。



---


「……珍しい。」



---


「……メイ。」



---


カイトはまたうなずく。


「……ありがとう。」



---


三人はそこに立っていた。


自然に、


無理なく。



---


圧迫感はない。


距離もない。



---


普通だ。



---


その背後で——


稽古は続いていた。



---


タカシはすでに床に戻っている。



---


再び動き出す。



---


正確に。


集中して。



---


止まることなど存在しないかのように。



---


カイトはしばらく彼を見ていた。



---


「……流れ……」



---


力じゃない。


まだ違う。



---


ただ——


制御だ。



---


翌日。



---


冷たい空気。


暗い空。



---


朝五時。



---


カイトは道場の前に立っていた。


時間通りに。



---


中へ入る。



---


すでに明かりはついていた。



---


指導者がそこに立っている。


待っていた。



---


挨拶はない。


反応もない。



---


ただ一言——



---


「……道場を掃除しろ。」



---


カイトは瞬きをする。


「……は?」



---


指導者は視線すら向けない。



---


「……二時間だ。」



---


沈黙。



---


カイトはゆっくりと周囲を見る。



---


床。


壁。


道具。


隅の埃。


すべて。



---


そして指導者に戻る。



---


「……冗談ですよね。」



---


指導者が一度だけ視線を向ける。



---


「……冗談に見えるか?」



---


「……はあっ!?」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は少し短めの話になってしまい、申し訳ありません。

ですが、この章は新しい流れの始まりとして、大切な導入でもあります。


ここから物語は、これまでとは少し違った方向へ進んでいきます。

静かに見えるかもしれませんが、その裏では確実に“何か”が動き始めています。


そしてこの先の展開には、いくつかの転換や予想外の要素も用意しています。


もし少しでも気になった方は、引き続き見守っていただけると嬉しいです。

感想や評価なども、とても励みになります。


今後ともよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
新しいアークの始まりって感じで、いい流れの変化だと思います。 特に訓練パートで「強さ」だけじゃなくて「制御」に焦点が当たってるのが面白いです。道場っていう舞台も新鮮でした。 新キャラも自然に入って…
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