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エクソシスト:オリジンズ  作者: Syntax


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1/15

「生きていた家」

この世界に属さないものがある。


それらは呼吸しない。

思考もしない。

私たちが理解するような形では、存在していない。


それでも——


それらは、いつもそこにいる。


瞬間と瞬間の隙間から見つめている。

私たちが見ようとしない場所で、待っている。


ほとんどの人は、それに気づかない。


だが、気づく者もいる。


その者たちは、もう元には戻らない。


これは怪物の物語ではない。


これは、それらを見てしまった後に残るものの物語だ。

その家は生きていた。人が普段言うような意味での「生きている」ではない――呼吸しているわけでも、考えているわけでもない。だが、音が音の上に重なり、静けさが入り込む余地を失うような在り方で、生きていた。リビングでは声が重なり合い、会話はぶつかり合いながらも決して完全に収まることはない。笑い声はリズムもなく上がっては下がり、途中で途切れた言葉に割り込み、それを別の形へと変えていく。キッチンからは油の鋭いはぜる音が聞こえ、その直後に「触るな!」と鋭い声が飛ぶ。一瞬の沈黙のあと、再び笑いが弾ける。今度はさらに大きく。皿が触れ合い、誰かが火傷したと文句を言い、別の誰かがそれをからかう。音は膨れ上がり、まるで壁そのものがそれを支えているかのようだった。


散らかっていた。騒がしかった。普通だった。


カイトはソファの端に座り、片脚を折りたたみ、手にはスマホをだらりと持っていた。親指は気だるく画面を滑っているが、実際には何も見ていない。こういう集まりでは、いつもそうだった。声が多すぎる。会話が重なりすぎる。何気ない瞬間の中に、見えない期待が多すぎる――ここで反応しろ、そこで笑え、適切なタイミングで何か言え。端にいるほうが楽だった。関わらずに存在しているだけのほうが。


「おい。」


軽く肩を叩かれる。思考から引き戻されるには十分な強さだった。カイトが顔を上げると、レンが立っていた。すでにテーブルからスナックを取ろうとしながら、見慣れた笑みを浮かべている。


「またそれやってるな」とレンが言う。


「何を?」


「“ここにいるけど、ここにいない”ってやつ」


カイトは小さく息を吐いた。「聞いてるよ」


「いや、聞いてない」レンは断りもなく隣に座り、腕を後ろに伸ばしてくつろぐ。「この五分、何にも反応してないぞ」


「面白いことがなかっただけだ」


レンは笑った。「よくそれ、この状況で言えるな」


「カイト!」母親が部屋の向こうから呼ぶ。「せめて楽しんでるふりくらいしなさい!」


「してるよ」


「嘘つき」


レンが身を寄せる。「完全に嘘だな」


カイトは軽く押しのけた。「黙れ」


レンはまた笑った。大きくて、飾り気がなくて、少しうるさい。それなのに――なぜか安心する。許可を求めずに空間を満たす音。ずっとそこにあったから疑うことすらしない音。


背景では父親たちが仕事や修理の話をしている。その声は落ち着いていて、すべてを支えているようだった。何もおかしくない。何も不安定ではない。


安定しすぎている。


カイトはわずかに体を動かす。違和感は突然だった。背筋をなぞるように這い上がる感覚。痛みでも恐怖でもない。ただ――何かがおかしい。視線が階段へ向く。部屋の端、影に半分沈んでいる。静かで、動かない。


何もない。


それでも、見続けてしまう。


「……大丈夫か?」レンが聞く。


カイトは瞬きをした。「……ああ」


「……本当に?」


一瞬のためらい。「……ああ」


レンはしばらく見つめ、それから肩をすくめた。「ならいいけど」


部屋の騒音は戻る。だが違和感は消えない。何かがおかしい。はっきりとは分からないが、確かに存在している。


そして――


ドン。


音がすべてを切り裂いた。大きいわけではない。だが重い。重すぎる。何かが落ちた音ではない。何かが壊れた音でもない。


別の何か。


部屋が凍りつく。


笑いが止まる。会話が消える。すべての視線が階段へ向く。


「……何か落ちた?」誰かが小さく言う。


カイトはわずかに身を起こす。「違う」


その言葉は早すぎた。確信的すぎた。


全員が彼を見る。


「あれは何かが落ちた音じゃない」


レンも冗談を言わない。「……ああ」


空気が変わる。温もりが薄れ、冷たく締め付けるものに変わる。カイトの父が立ち上がる。「見てくる」レンの父も続く。「何か倒れただけだろ」


声は落ち着いている。落ち着きすぎている。


二人は階段へ向かう。足音が必要以上に響く。カイトはそれを見つめる。胸に奇妙な圧迫感が生まれる。


「……遅くないか?」レンが呟く。


「もう少し待て」と誰かが言う。


一分。


さらに一分。


何も起きない。


足音も声もない。


完全な沈黙。


普通ではない沈黙。


おかしい沈黙。


カイトはゆっくり立ち上がる。「……父さん?」


返事はない。


言葉が届く前に消えたようだった。


レンが前のめりになる。「……変だな」


カイトは一歩、階段へ。内側で何かが止めようとする。やめろ、と。しかし理由が分からない。


そのとき――


ステップ。


音がした。


階段から。


歩く音ではない。


引きずる音。


ステップ。


照明が一度、二度点滅する。


影が現れる。


ゆっくりと。


不自然に。


何かが動きを思い出そうとしているかのように。


カイトの呼吸が止まる。「……父さん?」


その影が前に出る。


そして世界が壊れる。


それは父だった――あるいは残骸。胸から上が存在しない。裂けた肉と血だけ。下半身だけが動いている。あり得ない形で。


誰かが叫ぶ。ガラスが割れる。鉄のような匂いが広がる。


カイトは動けない。


一瞬――その体がこちらを見る。


「……にげ……」


声はほとんど存在しない。


そして崩れ落ちる。


すべてが壊れる。


「子どもを連れて行け!」


混乱が爆発する。椅子が擦れ、声が重なり、人がぶつかる。


「……カイト!」


母親が強く腕を引く。「見るな!」


遅い。


もう見ている。


レンの母がレンを抱き寄せる。「離れるな!」


「何が起きてるんだ?!」レンが叫ぶ。


誰も答えない。


なぜなら――すでに“それ”がいたから。


カイトは感じる。音でも形でもない。存在。


重く。


見ている。


「動け!」母が叫ぶ。


走る。


廊下が長すぎる。壁が伸びる。空気が重い。息が苦しい。


背後には何もない。


それが最悪だった。


そして――


何かがぶつかる。


見えない。


冷たい。


速い。


母の手が一瞬強くなる。


「……走りなさい」


そして――消える。


カイトは止まる。「……母さん?」


返事はない。


レンが震える。「……カイト……」


振り返らない。


走る。


外へ出る。


通りは空だった。


静かではない。


空っぽだった。


「……みんなどこだ……?」カイトが呟く。


レンが袖を掴む。「止まるな」


走る。


それは追ってくる。


近い。


さらに近い。


「……感じるか?」レンが言う。


カイトは答えない。


そのとき――


レンがつまずく。「カイト――!」


カイトが振り返る。「立て!」


立ち上がる。


そして――


掴まれる。


何もない場所から。


「カイト――!」


手が伸びる。


「助けて――!」


カイトは一歩前へ。


そして――


逃げる。


「俺は――」


呼吸が壊れる。


「俺は――」


思考が止まる。


振り返れない。


「カイト――!」


そして消える。


カイトは走る。


止まる。


意思ではない。


何かに止められる。


圧力。


重い。


見ている。


振り返るな。


だが分かっている。


「……これで終わりか……」


記憶が浮かぶ。


母。


父。


レン。


胸が締まる。


そして緩む。


「……また会える」


目を閉じる。


受け入れる。


何かが動く。


すぐ近く。


前に。


目を開けない。


必要ない。


もう分かっている。


そして――

『エクソシスト:オリジンズ 』第1章を読んでいただき、ありがとうございます。


この章は、不快さを感じてもらうために書かれました――何が起きるかだけでなく、すべてがどれほど一瞬で変わってしまうのかという点も含めて。ある瞬間までは日常がそこにあり、次の瞬間には、それが消えている。


カイトの物語は、力から始まるわけではありません。


それは、喪失から始まります。


次の章では時間が進み――あの夜が何を残したのかが描かれます。


もしこれを読んで何かを感じたなら、それだけで私の役目は果たされたと思います。


それでは、第2章で。

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― 新着の感想 ―
第1章からかなり引き込まれました。最初は普通の日常なのに、だんだん不穏な雰囲気に変わっていく流れがすごく良かったです。 ホラー要素もいい感じで、急いでる感じがなくて、じわじわ積み上げてくるのが印象的…
雰囲気がとても良く、特に序盤の描写が印象的でした。ホラーシーンも緊張感があり、テンポも良くて引き込まれます。 主人公が完璧ではなく、しっかりと葛藤しているところも良いと思います。そのおかげで、物語に…
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