三十三話 円環
放課後の校庭。影が長く伸び、カラスの声が遠くで響く、ありふれた黄昏時。
ジャングルジムの最上段に並んで座った二人の少年は、燃えるような西日に目を細めながら、オレンジ色に染まる街を見下ろしていた。
まだ「ヒーロー」の宿命も、「孤独」という名の壁も知らなかった頃。
二人の境界線は曖昧で、ただ隣にいることが呼吸をするのと同じくらい当然だった時代の断片。
「ねぇ、リョウ」
ユイトが、膝を抱えたまま、ふと思い出したように口を開いた。
その横顔は、西日に照らされて透き通るように白い。
「今日が、もし……世界で最期の日になるとして。リョウなら、誰と、何したい?」
子供特有の、根拠のない空想。
けれど、その問いを投げかけたユイトの瞳には、どこか寂しげな色が混ざっていた。いつかこの穏やかな日々が壊れてしまうことを、本能的に予感しているかのような、震える眼差し。
リョウは、少しだけ考えるふりをして、空を仰いだ。
高い空から夜の闇が静かに降りてくる。その境界線を見つめながら、彼は迷いのない声で答えた。
「俺はね──ユイトと一緒にいたい」
「……え、俺? 他にもっと、やりたいこととかないの?」
「うん、ないよ。ユイトと一緒に、いつもみたいに笑ってたい。……あ、でも、ユイトが作ったご飯が食べてみたいな」
「俺、料理なんてできないよ」
「練習すればいいじゃん。俺が、隣で手伝ってあげるから」
リョウはそう言って、ユイトの手をぎゅっと握りしめた。
まだ小さくて、柔らかな掌。
その熱が、あの日からずっと、リョウの魂の芯を温め続けてきたのだ。
「世界が終わるその瞬間まで、俺はユイトの隣にいるよ。……だから、ユイトも、俺のこと一人にしないでね」




