第9話 王太子の困惑
最大の被害者は、セシリアの婚約者である王太子アレクセイだった。
「セシリア、また貧民街で騒動を起こしたと聞いたが」
アレクセイはため息をつきながら言った。
「あら、アレクセイ様。私はただ、社会正義を実行しているだけですわ」
セシリアは無邪気な目で彼を見つめた。
「それに、あの商人ベルナールは不正を働いていました。私は彼に悔い改めの機会を与えただけ」
「手段が……独特だな」
アレクセイは眉をひそめた。
「従来の聖女らしくない」
「でも効果的でしょう?」
セシリアは嬉しそうに言った。
「ベルナールは値段を下げることを約束しましたし、貧しい人々は暖かいコートを手に入れました。これこそが真の慈善活動ですわ」
アレクセイは考え込んだ。
確かに、セシリアの方法は型破りだったが、結果として問題が解決されることが多かった。
彼女が登場してから、宮廷の腐敗した貴族たちが次々と「改心」し、貧民街の状況もわずかながら改善している。
「ところで、アレクセイ様」
セシリアが突然近づいてきた。
「私たちの結婚式の予算、あと30%増やしていただけませんか?」
「なぜだ?」
「だって、貧しい人々全員を招待したいんですもの!」
セシリアの目がきらきらと輝いた。
「それに、式の余興として、あの嫌な財務大臣に空中浮遊のパフォーマンスをしてもらおうかと思っていて……もちろん、聖なる光で支えてあげますわ」
アレクセイはまた深いため息をついた。
この婚約者が王国を救う聖女になるか、それとも破滅に導く災いになるか、彼にはまだわからなかった。
ただ一つ確かなのは、彼女の登場以来、王国がかつてないほど「にぎやか」になったということだった。




