↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まもののかどわかし  作者: toe
まもののかどわかし
18/76

17.とどくため

戦闘シーンと痛いシーンがあります。

「……っシラン!」


痛みが消えたのと正反対にシランが今度は苦しそうに唇を噛む。漂ってきたのは血の匂いで慌てて立ち上がって見てみれば後ろ手に縛られる手が真っ赤になっていた。訳がわからずとりあえず手当を優先しようとした騎士をシランが止める。


「先に石を取り戻してください。アンタにかかってるの、そう長く続かないんで」


「……後で詳しく聞くからな」


苦しそうに脂汗を流しながら、それでも生意気な口を魔術師は取り戻している。その変化に追及をぐ、と堪えるとドアの方に向き直った。さっきまでのシランが泣いていた騒ぎで人がこちらに来ているかもしれない──けれど、今はちょうどいい。痛覚の麻痺した体なら存分に肉弾戦で戦える。


──ドカァン!


手始めにドアを蹴り飛ばした。すると開いた廊下の先にはあんぐりと目を開けたみはりらしき男の姿が何人か。一際異様な雰囲気を放っていた首魁は今は不在らしい──好機だ。


「てめぇ、何して、グハァッ?!」


「悪いが容赦はしない。私達の荷物はどこだ?」


「うるせえ女!くっそ、ボスが温情なんて出すから…!ぐあああっ?!」


殴りかかってきた大男を受け流して膝を腹に叩き込む。嘔吐しながら沈む仲間を見て武器を丸出しにして襲ってきた小柄な男は剣を握る手ごと掴んで持ち上げた。細い手が軋む音がする。骨がミシミシと砕かれる想像をしたのか、男の顔は真っ青だった。そのまま廊下の向こうまで放り投げると二、三度転がって動かなくなった。

様子を見にきた荒くれ達はこの現状に呆然としたもののすぐに我に返って襲いかかってきた。武器を一斉に向けられ突っ込まれて──それを騎士は引き剥がしたドアを盾に振り払う。振り払いついでに何人かは頭も叩いてやった。こういう長ものの方が使いやすいな、と思う。


「もう一度聞く。痛い目に遭いたくなきゃ、私達の荷物を返せ」


「も、もうねえよ!もう親方が──」


「バッ、あり、あります!一切手をつけずに!持ってきます!!」


仲間になって日が浅いのだろうか、震えた少年が立ち上がって、仲間が引き留める中荷物を持ってきた。ぐしゃぐしゃになった騎士の地図、シランの妖精石。彼が自国から持ってきたであろう小さなノートや通貨。


「こっ、これで全部です!だからどうか命だけは……!!」


「何勝手に渡してんだ下っぱ!てめえ親方に知れたら──ゴッ?!」


「親方殿に知られるのを、私が君たちの口を塞ぐのではどちらが早いだろうな?」


怜悧な瞳でそう荷物を受け取ればしん、と静寂がその場を支配した。床に転がった男から剣を奪って、部屋の入り口に突き刺す。まるでこの領域を犯したらどうなるかわかっているなというように。

部屋の中で蹲るながらシランは大人しく待っていた。まず先に彼の前の石を置くことを忘れない。


「シラン、戻った。縄を解いて手当をする」


「ありがとうございます。石もちゃんとありました?」


「確認した」


縄は血で濡れていた。否、シランの手が血で真っ赤で、特に親指からの出血がひどい。なぜか包帯だけが減った医療道具の中には清潔な布も収められていた。止血をしつつ手当をしているとシランがふと笑う気配がした。


「あんたの方が手慣れてます」


「騎士だからな」


「はい。……魔術師は魔術師の務めを果たしましょう。“analgesia(鎮痛せよ)”“reinforce(励起せよ)”“collect(力の限り寄せ集めろ)”」


ぱぁっと騎士の足元が光ると、全身に星座が流れていく。さっきのとは段違いの美しい魔術だった。痛みを感じないどころかこれでは絶好調だ──ここ最近の疲労すら感じない。


「……終わった。シラン」


「……さっきは自分の爪を媒介に魔術を活動させました。……案の定持ってかれたんですけど、騎士様が手当してくれたんで大丈夫です。……で、今かけたのは鎮痛と身体強化の魔法。今出来る中で一番リスクが低いやつ。……本当は傷を治したいけど石が足りないんで」


「痛くないし調子がいいからこれでいい」


「……はい。それも、全部、騎士様の中で循環させてます。人は興奮しすぎると痛みを感じなくなるっていうのを強制的に発動させて、僕の魔術で強化してます。体力も、この先しばらくの体力を前借りしました」


「……それは、切れる時が怖いな?」


「切れる時は騎士様が死ぬ時だと思ってください。これ切れると借りた分体動かなくなるんで。少なくとも三日三晩は持つと思いますよ。……ここでかたをつけるなら、出来る限り急いだ方がいい」


随分と思い切ったことを、吹っ切れたように少年はいう。懺悔を気安く扱われたのもその後の言葉に何を思ったかは知らないけれど──今の彼は頼もしい。ああ、ずっと知っていた。


「石は念の為いくつか残しておくんですが、これは騎士様に渡します。剣を持って走るには大変でしょうから……思った形になる魔術を施してあります。剣として握れば剣になるし、石として握れば石になります。ヤツの頭を砕くときに使ってください」


「了解。……じゃあ行こう。シラン、背負うよ」


「優しくしてくださいね……?」


シランを背負って、万一でも落ちないように手首を結ぶ。剣で脅しながら出口を案内させると既に外は夜だった。ちなみに聞くと騎士は三日眠っていたらしい。それでは残り時間も短くなる訳だ。


「……“chase(追え)”」


鷹が再び現れ舞い上がる。その飛ぶ先を追って、満身創痍の騎士は駆け出した。

リスキーな道を辿るのが好きな人たち。

もう少しで完結です!

よろしければいいねや⭐︎評価、感想等お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。