第21話 占い街 カーラング 2
《マーザの宿》
とレンガのツリーハウスの前に飾られた木彫りの看板を見つめる2人は、ジャックを先頭にその宿へ入ろうとしていた。
彼は、木製のドアに向けて軽いノックをする。
「いらっしゃーい」
奥から、とても甲高いソプラノボイスの様な声がジャックがしたノックに対しての返答で返ってきた。
ジャックはゆっくりとドアを押し、マーザの宿へと足を踏み入れた。中はツリーハウスとは思えないぐらい明るく、広いバルコニーが見える。
バルコニーはとても綺麗なカントリー調で整えられた木製フローリングに豪華な絨毯がしかれ、近くにはお客用のソファや椅子等くつろげる様にされている。
外の風景と中の広さを比べるとギャップを2人は、感じた。
周りを見つめると色々な種族がそれぞれくつろいでいる。
「これは広いですね」
「ああ、確かに」
息をのんでいる2人を奥から黒いローブを付けたポンヤ族の女性が声をかけてきた。
「あら? 新しい宿泊希望の方かしら? ようこそマーザの宿へ。どうぞよろしく」
そのポンヤ族は背も大きく横も大きい。しかも甲高いソプラノボイス。
腕肌の色は茶色い体毛で覆われている。
そしてその女性の言った言葉の内容からしてジャックとハスラーはこの女性がマーザと呼ばれている宿主だと予測していた。
「あなたがマーザさん?」
「ええ。そうですわよ。オホホホ!」
マーザは甲高い声を出しながら笑顔で2人に答え、彼女は2人に訊く。
「部屋は、一緒にご希望かしら? それとも別で?」
「ええ、部屋は別で、2人です。2泊ほどしたいのですが……」
「お安い御用ですわ。お1人、2泊分90フォンダですわよ?」
「ここにしよう。マーザさん。頼む」
ジャックがそう告げるとマーザの甲高い声がバルコニーに響いた。
「ありがとうございます! 2人様ご宿泊ー!」
ハスラーが一歩後ずさりしながら、袋のフォンダの硬貨を出し、彼女に渡す。
「は、はい。2人分です。180フォンダ」
「確かに! では、ご案内しますわ。オホホホ!」
それから2人は3階の部屋に案内される。大きな体が先頭を行く。
「お客様はベルマンからいらっしゃった旅人様みたいね」
ハスラーは反応する。
「よくわかりましたね?」
甲高いソプラノボイスを響かせながら体を揺らしながら移動していく。
「ええ、あたくしの趣味は種族観察ですのよ! ささっ。こちらの部屋でございますわよ! オホホ!」
それぞれ2人が案内された部屋はとても高い位置にある部屋らしく窓から見える景色はとても絶景で、カーラングに明かりをともすツリーハウスの部屋の明かりがいい景色の演出になっている。
絶景に対してジャックは、素直な気持ちで反応した。
「いい部屋だな」
その言葉を耳にしたマーザはとても良い笑顔で説明をする。
「お気に召されたならばよかったわ! よく喜ばれるのですよ。特に初めていらっしゃった方は特に……」
ジャックは荷物をベッドの隣に置く。
マーザは、服のポケットから懐中時計みたいなものを取り出す。
「おっと、もうこんな時間。では、ごゆるりとおくつろぎくださいませ。あ、夜のお食事のお時間でショーをいたしますの! 是非!」
彼女の勢いに、ジャックは少々あっけにとられ、ただただうなずくしかなかった。
「あ……ああ」
「それでは! オホホホ!」
マーザは笑顔を振りまいて、彼の部屋を後にしていった。
ドアが閉まり、さっきまでのにぎやかな感じから静かになり、落ち着いた雰囲気が現れ始めた。
ジャックは窓の景色を見つめながらため息をつく。
「ふぅ……。イメージしていたのとは違うが。まぁ、悪くないな」
窓の景色を見ているとドアのノックが聞こえた。
「ジャックさん。依頼の報酬をもらい行きましょう!」
ハスラーの声だと、判断したジャックは応答して、バッグから、必要なものを取り出してからドアを開けた。
「ああ、すぐ行く」
2人は階段を下り、宿の出入り口を出る。ツリーハウスの木の廊下を辿り、エシュピナのもとへと向かう。
「エシュピナはあの宿から4件隣のツリーハウスの中にあります」
「そうか。どれぐらいの報酬になるんだ?」
「完全に依頼を完了しているのは、5件ですね。うちフォンダが報酬なのは4件。全部合わせて、およそ500フォンダですね」
「あとの1件は何が報酬なんだ?」
ハスラーは依頼書に記載されている報酬の欄に目を通しながらジャックに言う。
「えーっと。グロプスペーパーとノックス鳥製の羽ペンセットです。あとはフィルムの情報を探さないといけませんね」
「ああ。それに俺と同じ人間を探さないと……」
思い出したかの様な反応をハスラーは示す。
「そうでしたね! おっ! ここですよ」
ハスラーが示したツリーハウスの外観は、先ほどの宿とは、別で木製ながらも石でできたレンガのツリーハウスで、壁は茶色い。
看板もしっかりとされた木製で構成されている。
《カーラング エシュピナ》
「ここか」
「ええ。ここです。さぁ、入りましょう」
「ああ」
2人はエシュピナの中へと入っていった。
2人がツリーハウスのドアを開いて中へ入るのを遠くで見つめている小さなポンヤ族の少年4人が見つめていた。
第21話です。話は続きます。




