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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
4章 ユグドラシルに導かれた者
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55話 燃える王都

 では55話になります。よろしくお願いします。

 俺達は王都が視認できる距離に来た時にルナが異変に気付いた。


「徹、王都の辺りから煙が出ているの!」


 目の良いルナが俺達に伝える。

 エコ帝国が黒幕なら狙いが王女であるティティだけという訳じゃなかった事を失念していた為、王都が襲われるという考えに至ってなかった。敵はおそらく自国の兵を使ってないだろう。勿論、自国の軍事力を削るのを防ぐ意味と他国に言い訳できない状況を作るのを防ぐ為に使ってないと思われる。

 じゃ、どうやってっとなるが、ティティの顔を見つめる。ティティは頷く。


「国境の村を襲ったようにモンスターを使って襲ってると思います」


 俺は頷く。俺も偶発的に事故とかを考えるには状況は悪すぎると考える。きっとティティの言う通りだろう。


 ルナ達に目を向けると、いつでもいけるのっと笑ってくれる。こっちが考えてる事が筒抜けなのかと久しぶりに思った。


「ミザリー、ティティを頼む。もし、城への抜け道とかあるならそこを使ってでも城の中を調べて来てくれるか?状況を王に報告して取るべき手を考えて欲しい。俺達は少しでも住民を城へと向かわせるようにするから受け入れ準備もするように手配してくれ」


 ミザリーは黙って頷くと姫と言って手を取る。


「我が国の国民を頼む。きっと駆け付ける」

「兄様!決して無茶はしないでください。お願いします」


 泣きそうなティティに俺は笑いながら、答える。


「今、無茶しないで救えない命もあるかもしれないだろ?」


 そうじゃないのです、と悲痛そうに呟くとルナ達を見つめる。ルナ達はその視線に頷いて見せる。お願いしますとルナ達に頭を下げる。


 少し居心地の悪さを感じたが、やる事に変更はない。


「時間が惜しい。とりあえず、基本スタンスはこれでいく」


 ティティにまた後で会おうと約束して、ルナ達を見ると頷かれたと同時に俺は身体強化を施して王都を目指し走りだした。



 王都に着くと至る所から煙が立ち込め、モンスターに蹂躙されたと思われる住民の成れの果てが散乱していた。


 その光景に思わず、嘔吐しまう。

 今までに人の命を奪ってきた。しかし、あんな原型を留めないような死体を見た事がなく精神的な部分の限界が超えた。


「トオル君、大丈夫ですか?」


 美紅が心配そうに俺の背中を摩る。幼い頃にアローラに来たせい日本人的な生死に対する考え方が俺と違うようで美紅は眉を顰める程度だ。美紅の気持ちは有難いがそんな事で止まってる時間はない。


「有難う、でも、急いで住民を1人でも多く助けよう。固まっていても効率が悪い。ルナが右回りに美紅が左回りに、そして、俺は正面に行く」

「でも、今の徹を1人にできないの!」


 ルナが俺の散開して住民を助けるのを止めてくる。そして、美紅も言ってくる。


「そんなに精神が揺れてる状態でいつもの実力は発揮できません。多少、効率が落ちようとも一緒に行動しましょう!」

「2人共、俺はこんな光景をもう見たくないんだ」


 俺はそういうと城の方向を見つめ、2人を置いて飛び出した。



 残された2人はお互いを見つめ合っていた。


「今、私はアローラに住む人より徹1人の身の安全を考えてたの。やっぱり女神失格かもしれない」


 ルナは徹が去った方向を見つめる。


「私もあれほど嫌がってた戦いを恐れる気持ちが嘘のように無くなりつつあります。まだ自分に向き合う勇気はありませんが・・・今、目の前の国で苦しんでる人の事よりトオル君が心配と言う気持ちのほうが強いです。やはり、私も勇者失格です」


 美紅も徹が向かった場所を見つめるように顔を向ける。

 それぞれ、失格と言ったモノは失格かもしれないが、1人の乙女としては仕方がない事ではあったとそれを2人に言ってくれる者はこの場にはいなかった。


「でも、住民を助ける事が徹の為になると分かった、今、やる事は1つなの!」


 美紅はルナを見つつ頷く。

 少しでも早く助けて、徹に無茶をさせないというのが一番やる必要な事と2人は腹を括る。


 ルナは右へと美紅は左へと燃え行く街を駆けて行った。



 ルナ達の別れて、走っているとオーク10匹ぐらいに囲まれた母娘らしき2人を発見する。俺は2人の前に躍り出るとカラスを一閃するとオーク2匹の首を撥ね、絶命させる。

 俺は母娘に振り返り、怒鳴るように言う。


「俺が道を切り開く。そこを抜けて城へと避難しろ!」


 幼い娘を抱いた母親は、ビクつきながらも返事をしたのを見て、城への道を塞いでるオークに飛び込んでカラスとアオツキを使って刈り取っていく。道が開いたのを確認する。


「今だ、走れ!」


 母親は躓きながらも必死に走る。俺はそのフォローをするために殿を務め大通りに出たとこで追ってきたオークを殲滅する為に飛び込む。

 追ってくるオークを殲滅して、逃げてる母親に並走する。


「無事に城まで逃げろ!他に無事な住人がいないか見てくるから無事に着けるように祈る!」


 俺は飛び上がり屋根伝いに走りだす。辺りを見渡し、もう事切れてる住民がちらほら見える。胸にこみ上げる怒りが溢れる。


「何がしたいと言うんだ!こんなクソみたいな事考えた奴は!!」


 叫んでも意味はないと分かってても言わずにはいれなかった。



 それからも、無事な住民を見つけると城への避難を勧めながら道を切り開き続け、気付けば、城の前にやってきていた。

 住民は城に避難しようと長蛇の列を作って後ろから何時来るか分からないモンスターに怯えながら耐えていた。

 城は深い崖に囲まれたという表現がぴったりな造りのもので、城へと続く橋が1本のみで橋を渡りきったところが今の住民の最後尾になっている。


 俺も城に近づこうとした時、後ろから沢山の足音を響かせて向かってくる存在に気付いた。

 後ろを振り返るとオークとゴブリンの混成軍というような集団がこっち向かってきている。よく見るとオーガも混じっている。

 少し、俺より気付くのが遅かったが住民もそれに気付く。悲鳴を上げて城に駆け込もうという流れが生まれる。


 俺は機先を制する。


「静まれ!!俺がこいつらをそっちにはいかせねぇ!だから落ち着いて城に避難しろ!」


 カラスとアオツキを地面に突き立て、振り返って獰猛な笑顔を向ける。


「避難待ちしてる暇人はそこで俺でも見てろよ!」


 俺は橋の前に立ち、カラスとアオツキを構える。

 そして、俺はこの構図がどこかで見たような気がして思い出すと失笑が漏れる。三国志の張飛だと思い出す。あんなカッコイイもんじゃないが、どうせだから格好着けさせて貰う事にする。確かこんな言い回しだったはず。


「俺が徹!これにあり!死にたいやつからかかってこい!」


 目の前の集団に奮い立たせる為に俺は口の端を上げた。やはり、俺では格好はつかなかったようだが、結果は同じにしてみせる!



 それからどれくらいの時間が過ぎたか、1時間?1日?さすがにそんな時間は過ぎてないだろうが時間の感覚がおかしくなるぐらいゴブリンやオークを切り捨てている。俺の服装が黒でなかったらきっと真っ赤に染まっていた事であろうとだけ分かる。今も汗なのか返り血なのが自分の血なのかすら分からない始末。


 ゴブリンの首を撥ねると後ろから殴られる。オーガだ。さすがにふらつき追撃されそうになるが歯を食いしばってオーガの拳を掻い潜って、オーガの口へとカラスと突き立てる。

 オーガは瞳から光を失い、倒れるのに気付きカラスを抜く。


 倒れれるオーガを避けて、肩で息をしながら廻りを見渡す。


「くそう、減った気がしねぇ!」


 俺の廻りにはモンスターの死体で山ができそうなのに目の前から現れるモンスターは減っているように見えない。

 後ろをチラと見るがまだ避難は済んでいない。

 どうする?と俺が思考のループに陥りそうになっている時に後ろから俺を押す声がする。


「お兄ちゃん、頑張って、モンスターなんかに負けないで!」


 後ろを見ると最初に助けた母娘の娘が俺を応援してくれている。それに釣られるように廻りの住民達が俺を励ます為に腹の底から声を出して、頑張れと言ってくれている。

 これで応えないと男じゃないよな?

 俺はアオツキを持ってる左手を突き上げる。


「そこで目を見開いて見てろよ!」


 後ろから響き渡る歓声が俺に力を与えてくれているかのようだ。

 俺はカラスに語りかける。


(カラス、目の前の奴らを一掃するぞ!)


-まさか、1撃でやるつもりか!-


(どうせ、連発できないんだ。1発で決める)


-そんな事したら汝がどうなるか分からんぞ!-


(なら、代案を出せ!)


-むむ、仕方がない。承知した。主、死ぬなよ!-


「当たり前だ!」


 俺は声に出して吠える。そして、俺は目を瞑り、魔力を練り上げ、カラスに送り続ける。魔力が空っぽになるまで送ると目を見開き、カラスを両手持ちにして構える。


「いっっけぇ!カラス!」


 横一線、カラスを振り抜く。目の前にいた集団を隈なく襲いかかる剣戟。後ろの建物も真っ二つにして粉塵に包まれる。その中、火打石を投げ込む。思惑通りに爆発が起きる。密閉してない場所でできるかは賭けだったが上手くいった。


 爆発が落ち着き、廻りを見渡すが立ってる者はいなかったと思ったら一番死体の多い場所が動き出す。死体を撒き散らし出てきたのは。


-オークキングだと!-


 そう、オークキングだった。廻りにいた仲間を盾にして、カラスの剣戟と爆発から身を守ったようだ。


 俺に駆け寄ってくるオークキングに迎え撃つ為、笑う膝に喝を入れてカラスとアオツキを構えるが、オークキングの攻撃に碌に反応もできずに殴られる。魔力も尽きて身体強化もできず、いいように殴られ続ける。


 このままでは死んでしまうと思うがどうにもできずに意識が飛びそうになった時に頭に過るものがあった。


 怒っているフレイの顔だった。


 力を失っていった四肢に力が戻り、光が弱くなってた瞳に光が戻る。

 俺にトドメとばかり体重を乗せた右ストレートを繰り出してくるオークキングをかわし、カラスとアオツキを両方使って心臓を一突きにする。


「フレイに見せたのはお前なんかに負ける未来じゃねぇ!」


 俺は一吠えして、カラスとアオツキを交差するように切り裂く。

 切り裂かれたオークキングはそのまま倒れる。

 

 そして、意識が飛びそうになりながらフラフラになっているとフレイの幻を見た。


「俺は負けなかったぞ!」


 フレイは苦笑しているようだった。



 もう意識を保つのが無理とばかりに倒れていく時にルナと美紅、そして俺の可愛い妹の声が聞こえた気がした。

 そうそう、バイブルさんは、でちゃうの「こしあん」さんのファンです。そうです。多分、あっ、と思った方もいるでしょうがあのキャラのモチーフはその通りです。でも、ちゃんと本人に会って使う許可は貰ってきたので大丈夫ですよ!サイン貰ってきた時に聞きましたから(^○^)

 感想などありましたらよろしくお願いします。

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