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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
4章 ユグドラシルに導かれた者
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56話 死の淵を彷徨う、でもそっちのほうが楽だったかも

 では56話になります。よろしくお願いします。

 私は城の方向から立ち昇る大きな魔力を感じて屋根伝いに走ってた足を止めた。

 この魔力には覚えがあるトオル君の魔力だ。この大きさからいって、今のトオル君の全力だと思われる。今、あそこでトオル君が全力を出さないといけない事態が生まれている事に気付くと私は城を目指して一刻でも早く着けとばかりに走りだした。


 後、少しで城のという辺りでルナさんと合流する。

 やはりルナさんも気付いていたようだ。


「徹が何かをやろうとしてるの。あの魔力を一気に放出したら命に関わるの!」


 ルナさんが感情的にヒステリックに叫ぶ。どうやら私が思ってたより事態は深刻なようだ。


 私はルナさんに急ぎましょうと言うと城のほうから倒壊する音と爆発の音が続けて聞こえる。トオル君が魔力を解放したようだ。

 その音を聞いた直後、先程まで迸るような魔力があったのに綺麗さっぱり消失していた。トオル君の存在が感じられない。


 粉塵がこちらに流れてくる。ルナさんは放心したように感情が抜け落ちたかのような顔をして、地面に膝を着く。

 私は駆け寄って、ルナさんしっかりしてっと肩を揺さぶると顔を歪めたと思ったら泣きだす。


「間に合わなかったの!徹が、徹がいなくなちゃった・・・」


 私はルナさんの頬を張る。


「まだ、死んだとは限りません!生きてさえいれば、ルナさんなら持ち直させられるでしょ!!」


 私は下唇を噛みしめながら訴える。

 涙を拭いたルナさんはいつもの目に戻った。


「ごめんなの、美紅。急ぎましょう」


 頷き合った私達は城へと急いで城までの遮蔽物が無くなった時、トオル君がオークキングに無抵抗で殴られてる姿が見えて顔を顰めたが、カラスとアオツキを構えようとしてるところを見るとまだ無事だ。

 しかし、私達が着くまで持つか怪しい。


 そう思いつつも走り続けていると先程まで命尽きそうな有様だったトオル君が突然、動いた。あれはいつもより鋭い動きで遠目で見てる私はびっくりした。


「フレイに見せたのはお前なんかに負ける未来じゃねぇ!」


 カラスとアオツキをオークキングの胸に突き立てたと思えば交差させるように切り裂くとオークキングは悲鳴も上げる事もできずに倒れた。


 やっと私達はトオル君の前に到着して呼びかけるが私達に反応せずに私達の間を見つめ、呟く。


「俺は負けなかったぞ!」


 そういうと顔から落ちていこうとするトオル君を抱える。

 私の後ろからルナさんが回復魔法を唱えるが首を振る。


「私の回復魔法だけじゃ、現状維持だけで精一杯なの。止血を医療でやってる間に治していかないと徹が死んじゃうの!」


 廻りを見渡すとティテレーネ王女がミザリーさんを引きつれてこっちに走ってくるのが見えた。


「兄様は無事ですか!ルナさん、美紅さん、どうなのですか!」


 今の状況を説明する。

 状況を把握したティテレーネ王女はすぐさまミザリーさんに指示を出す。


「ミザリーは城へすぐ戻って私の部屋に医者を呼んで待機しなさい」


 振り返って私達を見たティテレーネ王女は着いて来てくださいと言うと走りだす。

 私はトオル君を抱えるとルナさんが並走して回復魔法で現状維持に努める。


 血を失いすぎて顔が白くなってるトオル君を見て、今までトオル君の気持を考えて黙ってきた事をさすがに言って自覚して貰わなければと心に決める。

 いつものお説教ぐらいで済むと思わないでくださいと睨みつける。


 私達は城にあるティテレーネ王女の部屋へと急いだ。



 トオル君の治療が深夜までかかって、お医者さんとルナさんの献身的な対応の甲斐があり、峠を越えた。


 先程、ルナさんの回復魔法により完治を確認したとこでルナさんはそのままトオル君の寝てるベットに頭をのせて気を失った。魔力切れではなく、安心したら寝てしまったようだ。


 血色の良くなったトオル君を見つめ、ホッとしてる自分に気付く。血だらけのトオル君を見てた時は、元気になったら平手打ちして罵詈雑言を浴びせようという思いに駆られてたのに、ただ安心して満足している自分に甘いなっと思わずにはいられなかったが、トオル君に今の自分がおかしいという事を自覚だけはして貰わなければ、同じ事を繰り返す、いや、繰り返せたらまだいいが次はないかもしれないと自分に言い聞かす。


 そんな事を考えてトオル君を見ていたら目を覚ましたようだ。

 ベットから上半身だけ起こして私に気付くと話しかけてくる。


「美紅、ここはどこなんだ?」

「ここはティテレーネ王女の私室にある客室のような場所です」


 自分でも何を言ってるのだろうとは思うがそう説明するしかない。ティテレーネ王女の私室は下手な商人の屋敷並の敷地が部屋として与えられているのだから。


 イマイチ、トオル君も理解が追い付かないようだが、放置する事にしたようだ。


「住民は避難できたのか?」

「はい、トオル君のおかけで助かりました。ですがその事でお話があります」


 そういうとトオル君の背筋がピンと伸びる。特訓の成果が出ているようで何よりです。私の怒気をしっかり感じとってるようで話が早いです。


「今までトオル君の気持ちを考えて黙ってきましたが、もう放置できる状況を超えてしまったので、はっきり言わせて貰います。ドラゴンさん、フレイドーラさんでしたっか?あの人に拘るのは止めてください」


 私は引かない意思を込めてトオル君を見つめる。

 視線に耐えられなかったトオル君は目線を下げてしまう。


「あの人との会話は全部聞かせて貰ってました」


 そう言うとトオル君は弾けるように顔を上げる。やっぱり一方通行でこちらの声はトオル君に届いてなかったようだ。


「フレイドーラさんの気持ちに応えようとするトオル君に尊敬の念を感じずにはいられませんが、最近のトオル君は度が超え始めてます」


 一呼吸置いて、続ける。


「私が酷くなり始めてると感じたのは国境沿いのエルフの村に行った時、エルフの住民との会話を聞いたあたりからです」

「あれはキツイ言い方ではあったかもしれないが、間違った事はしてないはずだ」


 酷くなったと言われた時に辛そうな顔をしたトオル君を見て言いすぎたかと思ったが今回の事を思い出して心を鬼にする。


「ええ、間違ってはないと思いますが、元々のトオル君なら時間に追いかけられてたという事実があっても、もっと余裕があったはずです。ですが、強硬な手段に出てます」

「いつもより追い詰められた感じになって余裕は少なかったかもしれないがそれは仕方がないだろ?」


 溜息を一つ吐いて私はトオル君に聞く。


「トオル君は余裕は少ないではなくありませんでした。お聞きしますがあの時に1度でもシーナさんの家族の安否を確認されましたか?」


 そう私に言われたトオル君は虚を突かれた顔をしていた。おそらく言われる今まで忘れていたのであろう。

 拳を握りしめる姿が痛々しかったが続ける。


「本来、シーナさんのお話を聞いて、義憤に駆られて緊急依頼を受けたはずのトオル君のはずなのにそれを忘れてしまっている状態が答えなのではないでしょうか?ちなみにご家族は無事は私が確認しておきましたからそこは安心してください」


 そうか、ありがとう、とトオル君は言うが表情は晴れない。

 

「そして、今回の事です。あの住民を守った事はとても誇らしい事ですが、それでも打てるべき手を打たずに無謀に挑んでしまっているトオル君は余裕はあったのでしょうか?」

「そうだな、美紅達に知らせる為に魔法を打ち上げるなり、城の兵士に助けを求める方法があったよ」


 下を見つめながら苦虫を噛んでしまったような顔をして話す。

 これ以上痛めつけるような結果になると分かっていたが最後のトドメ入れる。


「フレイドーラさんに拘る余りにトオル君は生き急いでます。目的も達せずに逝く事がフレイドーラさんに示した未来ですか?」


 私の言葉が堪えるようで握りしめている指が白くなっている。でも自覚してくれないと同じ事を繰り返すトオル君はいつか死んでしまう。


 トオル君は深呼吸を数度繰り返すと私の顔を見つめ頭を下げてくる。


「すまなかった。俺の為に嫌な役をやらせた」

「いえ、すぐに消化はできないと思いますが忘れないで考え続けてくださいね?」


 必要と分かっててもこれでトオル君に距離を取られたらどうしようと悩んでた自分の考えは杞憂に終わりそうで微笑んだ。



 美紅には嫌な役をやらせて、本当に申し訳ないと頭を掻きながら、知らず知らずの内に意気込みすぎてた自分に気付かせてくれた美紅に感謝した。


 そうするとベットに頭を乗せて寝ていたルナが目を覚まし、俺の見て、無事を確認すると俺に抱きついて来て、エグエグと泣きだす。


 どうしたらいいか分からない俺は美紅に助けを求めようとすると美紅が先程より怖い顔して絨毯の上で正座して自分の前を掌で叩いている。あれは、ここに座れと言っているのか?


「これからがお説教です。早く座ってください。朝食までには終わらせますから」


 俺は外を見る。月の位置からすると深夜になり立てのように見える。

 どうやら、ギブアップが許されない耐久レースの始まりのお知らせらしい。


 逆らう度胸のない俺は渋々、目の前で正座する。そのまま抱きついたままのルナは未だにエグエグ続行中の頭を撫でる。

 どうして、俺は朝まで気絶してなかったのであろうと切実に自分に恨み事を言う。



 俺の長い夜はまだまだこれからだ。

 感想などありましたらよろしくお願いします。

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