36話 1ヶ月後
では、36話になります。よろしくお願いします。
オルデールとの対決から約1カ月が過ぎようとしていた。
俺達はその間、冒険ギルドにマメに通い2週間過ぎたあたりで俺とルナはCランクになり、美紅も遅れて3日後に同じくCランクに昇格した。
俺達も必死だった事もあるがかなり異例な昇格スピードらしい。当然だろう、女神と勇者がいるパーティだ。しかも、俺達には早々にAランクにならないとという目的意識がある。
やらなければならない事とやりたい事が多すぎる、俺達は後ろを振り返る暇もなく今日は隣村、馬車で2日かかった場所の依頼を終えて帰って、冒険ギルドやってきた。
「お疲れ様です。まさかゴブリンの集落らしきものがあるという報告を受けて依頼を出してたら、ゴブリンキングがいたという手違いと言うだけでは許されない事になりまして、大変申し訳ありません」
「ゴブリンキングもやっかいでしたが、あの数はかなり大変でしたよ」
俺とシーナさんの間で言葉に乗らない戦いが始まり、激戦の予感がしてならない。
戦いが始まるとルナが参戦して俺の対面に立つ。なんだと?受けて立ってやろう。
「無駄に腕を上げてるの!そういうのは他に回して努力して欲しいの!!」
「2人でも捌き切れなくなりつつあるなんて、見縊ってました」
ふっふふ、男というのは日々進化していく生き物なのだよ、その進化を女である2人には読み切れる訳がないのだよ!!
「シーナのオッパイを触りたいが為にどうして私達を片手であしらうなん芸当ができるの!」
このやりとりが最近の見慣れた風景で俺を応援する冒険者も増えてきた。ファンは大事にしないといけないね。
隣で頭を抱えていた美紅が、もう!と一言漏らすと言ってくる。
「いい加減にしてください!そういうのはダメだと言ってるでしょ!!」
言葉と同時に俺の脇腹をえぐるレバーブロー。美紅は見た目小柄だが、あれでも勇者で、魔法戦士の一撃系だ。本人は加減したつもりなんだろうけど、俺は崩れ落ちる。
「さすがに3人は卑怯・・・勝負になる訳がない。しかし、いつかきっと・・・」
それを聞いてた3人はそんな未来が本当にきそうで戦慄を感じたようだが今日の俺は倒れた。
俺が倒れたといっても気絶した訳じゃなかったが話すような余裕はない状態だったため、2人がシーナさんと話を再開した。
「確かにあの数は大変だったの」
「本当は大変で済む話ではないんですよ?ゴブリンキング討伐ってAランクパーティの特別依頼ですから。本当に規格外のパーティですね。1部違う意味で規格外がいますが」
6つの瞳が俺を軽蔑する視線を寄こす。
俺は逃げない。いつでも挑戦を受ける!俺は目線を・・・反らした。
「とりあえず、特別報酬が出たりしますから査定に1日頂く事になりますがよろしいですか?」
ルナは構わないのっと答える。
「Bランクもすぐ上がってしまいそうですね。もしかしたらこれで上がったりしたりするといいですね」
「そうなると嬉しいの」
ルナと美紅はシーナさんの言葉に笑い合う。ちなみに俺、空気中。
「じゃ、明日また顔を出すの」
俺はルナに襟首掴まれ引っ張られていく。この光景も既に冒険ギルドの風物詩になって久しかったりする。冒険者達に手を振られる。あ、女の冒険者も手を振ってる。顔の筋肉が緩むのが分かる。俺は手を振り返した。すると明らかに引っ張る力が増して首が締まる。
「ルナ、首が締まる。ギブ、ギブ!」
俺はルナの手をタップするが無視してそのまま俺はマッチョの集い亭に連行された。
マッチョの集い亭に帰ってくるとミランダにおかえりと出迎えられる。
この1カ月の間にマッチョの集い亭にも変化が生まれた。
「おかえり、トール、ご飯はすぐ用意できるよ」
ボスンと俺に抱きついてくる少女、ルルの姿あった。毎日ではないが時折、ここで働かせて貰ってるらしく、見かけるようになった。あれ以来、男ぽい格好を止め、今は町娘風の格好になりこの1カ月で髪が肩にかかりそうになるまで伸ばした事もあり、どんどん女の子ぽさが出てきてる。喋り方もまだ名残があるが女の子ぽい喋りを意識するようになった。
食堂での評判上々でルル目当てでやってくる客もいるそうだ。このロリコン野郎め!べ、別にルナと美紅に言われた事を気にして他人に当たってる訳じゃないんだからね?
「そうだな~」
後ろを振り返って2人を見ると頷いているのを見て、
「じゃ、荷物を部屋に置いたら降りてくるから頼めるか?」
「分かった。いつものカウンターに用意しておくね」
俺からぱっと離れるとミランダに声をかけて厨房に入って行った。
「さっさと荷物片付けて飯にしますか」
俺達は自分の部屋に向かって行った。
ルルに用意してもらった食事を食べ始めた俺達にミランダが近づいてきて話しかけてきた。
「トール、王都からアイツが帰ってきたわ」
食べてた手が止まる。そろそろ時期的にその話が出てくる頃だとは思ってたがやっとか。
ルナと美紅は何の事か分からず、俺達を交互に見比べる。
「そういえば、2人には話してなかったな。俺は初代勇者の足跡を追いかけようと思ってその手の事に詳しい奴を捜してたんだ。その事をミランダに相談したところ、王都に用事でクラウドを空けてる奴がいると聞いていて帰ってきたら教えて貰う事を頼んでたんだ」
「どうして、それを調べようと思ったんですか?」
美紅は不思議そうに聞く。
「あの神殿跡にいたインプを覚えてるか?俺がした3つ目の質問の後に初代勇者の伝言で初代勇者の足跡を追えっていうのがあっただろ?俺達はまだ知らないといけない事があるような気がするんだ。それに・・・」
俺の腰にあるカラスとアオツキに触れる。
「こいつらは何なのかも分からない。使いこなせるようになったら分かるのかもしれないけど、なんとなく理解が進まないとどんなに鍛錬しても使いこなせる日はこない気がするんだ」
すまない、俺が気になるだけなんだと美紅に詫びる。
「いえ、私も初代勇者の事は気になってました。むしろ感謝しなくちゃならない立場です。ありがとう、トオル君」
美紅は微笑んで俺に感謝を伝える。
その向こうで半眼になったルナが俺に一言申してきた。
「そういう事なら私にまず相談じゃないの?」
「だって、お前、初代勇者の最後の場所すらクラウドの傍にあったのに知らなかったとかなのに聞いて分かったのか?」
ルナはあっさりダークサイドに落ちて、どうせ私はダメダメですよとカウンターに潰れた。
すまん、ルナ。少しでもお前にはこの話は意識されたくなかったんだ。万が一調べる前にあの可能性に気付かれたら打つ手なしになりかねかったからな。
ミランダは苦笑しながら俺に手紙を手渡してくる。
「これを見せたら無碍にはされないと思うわ。場所は後で書いて渡すから昼以降に行くほうがいいと思う。アイツは夜型だから」
手紙を受け取って、ありがとうと言って明日の昼の予定に組み込む事にした。
とりあえず、明日の朝はギルドにいってから昼から会いに行こう。
次の日の朝、俺達は冒険ギルドにやってきた。
「おはよう、シーナさん査定は終わってる?」
俺を見たシーナさんは俺から身を守るように構える。さすがの俺も朝から全開モードじゃない。ただ見てるだけである。
「はい、終わってますので部屋を設けますので少しお待ちになって貰えますか?」
シーナさんは他の人に受付を任せると席を離れていった。
そう言われた俺達はカウンターから離れて呼ばれるのを待つ。
しばらくすると前にルナがザックさんといた部屋に来てくださいと目の前の初めて見た受付嬢に言われる。素直に俺達は言われた場所へと向かった。
ノックをして返事があってから入室した俺達はシーナさんと見慣れない事務員達が3人が待っていた。
「お呼びして申し訳ありません。まずはお座りになられてください」
座る席を手で示し、シーナさんが促してくる。
おとなしく座る俺達は、早速、この部屋に呼ばれた理由を聞く事にする。
「査定だけならカウンターでも済んだだろうに何故呼ばれてこの部屋で話をするんですか?」
「一部の者から報告を大袈裟にしてるのではないかという指摘が上がってます。特にBランクパーティの「至る頂き」のリーダーから調査の申請がきており・・・」
「つまり、高ランクのいちゃもんを冒険ギルドとしては無視できないということでいいんですか?俺達はゴブリンキングの討伐証明の部位は持って来てるというのに?」
そう、俺に切り返されてシーナさんも事務員も黙る。
「貴方達は何か勘違いしてませんか?シーナさん、貴方は昨日言ったですよね?Aランクパーティがする依頼だと、それを五体満足で帰ってきてる俺達がBランクより下に見てビビって対応するのがギルドの姿勢ですか?」
そ、それはっとシーナさんの隣にいる事務員の男が何か言おうとするが俺の視線に黙らされる。
「貴方達のその対応を見ていて次にしようとしてた事を先に言ってあげましょうか?「貴方達の実力が本物かどうかBランクの方が確かめてくれるそうですから証明してください。」って辺りじゃないんですかね?」
俺が苛立ってますって感じるような視線を俺達の前にいるメンバーに威圧をかける。そのせいか呼吸困難になっているようだから威圧を解く。
「シーナ、どういう事なの?徹の言ってる通りなの?」
ルナは信じたくないと言った顔して問いかける。
しばらく沈黙して、絞るように声を出す。
「ほぼ、トールさんがおっしゃった通りです。後、付け加えるならその実力を見るのがBランク「至る頂き」です」
そんな事言われるまでもなく分かってる事だろうにと俺は呆れて溜息を吐く。
そんな俺の態度だけでもビクつく事務員達。
「で、既にもう控えて待ってるって話になるんだろ?」
俺の言葉にシーナさんは、はいっと答える。
多少、感情的にはなったが美紅の正体がばれた時にグラつかれると厄介だから今回を良い機会と捉えて、俺達を敵に回すと怖いと刷り込むとするか。
シーナさんに、さっさと案内するように促して俺達は部屋を出る事にした。
俺達が案内されたのは闘技場みたいな場所である。説明によると訓練する場所のようだが初めて知った。
その中央に5人組の屈強そうな男達が待っていた。5人ともに共通する人を小馬鹿にした顔して俺達を見ている。身に着けてる装備からして全員、近接型の戦士タイプのようだ。もう面倒だからABCDEでいいわ。
俺達が前に来るとAが何かを言おうとするのを遮り、
「俺達はお前らと違って暇じゃないんだ、さっさとやるぞ。俺が相手してやるから全員でこい」
なんだと!とか激昂してるようだが本当に時間の無駄だな。
私と美紅があれで本当にBランクの実力があるの?とシーナに聞いてみた。
「ええ、間違いありません。トールさんは1人でやるような事言ってますがいいんですか?」
「大丈夫ですよ。トオル君、1人でも怪我もする事ないと思いますし」
「多分、武器使ったら手加減しても命に関わるから武器も使わないと思うの」
そんな呑気な対応する私達を見て、シーナ達は目を剥く。
「シーナ、普段の徹のイメージが全てじゃないの。今から見る徹もほんの一部でしかないんだけどね」
徹を見つめつつ、信頼した顔した美紅が頷く。私達は本当の徹を知ってるがアレだけはあんまり色んな人に知られたくはないという気持ちになる。
「すぐに終わりますよ。シーナさん。トオル君の勝利で」
その美紅の言葉通りだったという事が5分後、Bランクのメンバーが武具を破壊されて血だらけにされていた。徹はリーダーらしき人を踏みつけながら、
「こいつらDランクでも高すぎじゃないか?」
と呟いていた。
感想お待ちしております。




