表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
2章 10年ぶりの再会
22/242

19話 突破口

 魔神との初めての戦闘です。戦闘描写って難しいです。

 19話になります。よろしくお願いします。

 みんな、こんな事を思った事はないだろうか?

 学校であるモノが流行った物でもいいし、今ならスマホでもいいだろう、それらを買ってもらうために、親に交渉した事はないか?

 うまく交渉が纏まった時はいいが、大抵の親はなかなか頷かないものである。


「クラスのみんなが持っているから買って」


 と言えば、


「クラスの1人でも持ってない子はいないって言えるの?あなたが最後って言うなら考えてあげるわ」


 などと証明が難しい条件を提示されたことはないだろうか?スマホや携帯ならある程度、塾や親との連絡のため普及してきてるが、流行り物はかなり苦しい戦略を強いられているはずだ。

 なのにだ、同じクラスの子が全国の学力テストなり模試なりで上位に入ったと言えば、


「あの子はあんなに頑張ってるのに、アンタは何してるの?」


 と言われ、同じ論法でやり返す事を思いつき、


「クラスであんなのはアイツだけだよ」


 というと、関係ない、アンタが2人目になればいい事、と切り返される。

 似たような事はないか?

 これは一例だ。あなたの最近感じた理不尽はなんですか?

 俺が最近感じた理不尽は・・・



 異世界とかファンタジーで片付けようと思うなよ!魔神がニ●ちゃん大王とか有り得ないだろ。それを目の前にして身構えてるルナがピエロに見えてくるじゃないか。頼むから今からでもいいから目の前のモノが魔神であることを否定してくれ。


「と、徹、もしかして既に精神攻撃食らってしまったの?いつの間に攻撃されたかも分からなかったの!」


 ルナは俺がメダ●ニ食らって混乱中と勘違いしてるようだ。

 ダメだ、ルナの天然が爆発してるとかの薄い可能性を除いて、目の前のモノが魔神のようだ。

 この理不尽を飲み込む事にしよう、大人になるという事はこうやって色んなものを飲み込んでいかないとダメなんだろう。苦いな・・・


「徹、しっかりするの。状況は最悪なの。魔神はあの姿はハリボテなの。おそらく、あのハリボテを勇者の楔を打ち抜かれるダミーにして、本体はトカゲの尻尾切りのやり方でこの結界から出るつもりだったようなの。でも、今、まだここにいるのはきっと・・・」

「そう、女神が地上に降りてきたのを感じて、そのうち来ると思って待っていたのだよ。来る前に結界から出てしまえば、警戒してなかなか出てきてはくれなかったかもしれないのでね」


 だがや、じゃないのかって思いつつ、登場から今の今まで話さなかったニ●ちゃん大王が話しだした。


「まあ、結界から出て警戒されても女神を見つけるのは難しくはないがこのアローラを逃げ回られると少々、面倒なのでね。ここにおびき寄せさせて貰ったよ」


 そう言われて、ついに俺はコイツの見た目に騙されてはいけない事に気付き、今の言い回しに嫌な予感がした予感を潰れたらと願いつつ口にする。


「そのパターンとなると俺達の前に出てきたという事は、俺達が入ってきた穴を塞ぎ終わったとか言わないよな?」


 目を見開かせたヤツが驚いた顔して俺を見る。


「マヌケそうな顔してたから馬鹿なのだろうと思っていたが、君の評価を上方方向に修正するよ。だが、惜しい」


 見た目はマヌケな存在にマヌケ呼ばわりされるとイラっとするが今はコイツから出せる情報は出させる必要がある。できる事とできない事を認識して無駄を減らさないと生き残れなさそうだ。ルナの様子を見るが明らかに余裕がない。俺は魔神の恐ろしさが分かってないせいか、余裕というか開き直りの極致にいた。


「正解は、私にしか結界を開ける事ができないようにしてきた、だ。お前達が出る方法は私を倒す以外に道はないよ」


 ニヤァっと笑うと、ニ●ちゃん大王のハリボテにヒビが入り出す。ヒビの割れ目から黒いモヤのようなものが立ち昇るとそれが人の形になり、姿を現す。

 痩身の体に体のラインに合わせたような執事服を身に纏い、髪は撫でつけたようなオールバックの片眼鏡を着け、ジェントルヒゲに誇りがあるのか、指で撫でている。見た目は40代のように見える。


「やっと、あの恥ずかしい格好から元の姿に戻れましたね。できればもうあの姿にはなりたくありませんね」


 目の前にいる俺達に一切注意を払っていないのが俺にもはっきり分かる。これ以上ないぐらいに舐められていた。

 舐めている事より更にはっきり分かる事もある、コイツは強い。その気になれば、俺だと気付かない内に一瞬でやられる事だろう。だが、


「おや、どうして笑っておられるのでしょうか?勝算でも御有りですか?」


 どうやら俺は笑っているようだ。勝算?そんなもんなんかあるなら教えて欲しいぐらいだ。


「ねぇよ。俺にしたら封印で弱体化してようが万全だろうが大差なく結果が変わらねぇよ。お前が俺に黙って切られてくれるなら可能性が見えない事もないだろうがね」


 おどけるように肩を竦める。


「ふっふふ、本当に君は面白いね。さっきから君の評価の上昇が止まらないよ。君の名前を聞いてもいいかな?」

「いいぜ。耳を大きくして聞き逃すなよ。トールだ、以後お見知りおきだ!」


 魔神に対して啖呵を切る。格好つけたまではいいが、この状況をひっくり返す手なんて思いつかないのでダメ元でルナに小声で聞く。


「一発逆転の手とかヤツの弱点みたいなのはないのか?」

「ごめんなの、一発逆転の手どころか逃げの1手も思いつかないの。ただ、あの魔神は魔神の右腕が擬態した姿だからアイツの右腕を体から切り離さない限り、勝つのは無理なの」


 まさに八方ふさがりである。いや、やる前からふさがったなんて言うもんじゃないな。魔力を循環させ始め、ショートソードの柄に手を添える。

 俺の様子を見て、徹?と呼びかける。


「ルナ、考えるだけで止まるな、分かり切ってると諦めてカッコ付けないで、足掻いて、無様でも生き残る。可能性が0%ならもがいて0.1%を生み出そうぜ」


 なぁ、とルナに笑いかける。

 眉間に皺を寄せて険しい顔してたルナだが、マッチョの集い亭でよく見かけたルナの顔で俺の顔をジッっと見つめて、クスって笑う。


「おかしいの、ほんとにおかしいの。何度、おかしいと言えばいいのか分からないぐらいおかしいの」


 へへっ、と俺は笑い、ルナに手を差し出す。


「いこうか、ルナ」


 ルナは俺の手を取り、笑いかける。


「あの時、初めて、徹の手を取った時から私は・・・」


 この気持ち、決して、ここで終わらせない。明日に繋いでみせる。


「徹と食べた果物もまだ食べ終わってないもんね」


 おうっとサムズアップして答える。


「もういいかな?作戦会議と言いたい事は言い切ったかな?」

「律儀に待っててくれるなんて意外と紳士なんだな。言いたい事待つ気なら1000年は待って貰わないと無理なんだが?」


 そういいつつ、俺は背負ってるカバンを地面に降ろす。ルナも倣うように同じくカバンを降ろした。


「いやいや、さすがにそこまで待てるほど気も長くないですし、暇でもないのですよ」

「それは残念。じゃ、次回にしとうか?忙しそうだし、お暇しようかな」

「はっはは、御冗談を」


 一瞬で近づいてきた魔神は俺のカバンを蹴り上げて、中身が散らばる。


「さあ、始めましょうか」



 俺とルナは散開する。俺は全開で身体強化を施し、ショートソードを抜く。

 身構えもしない魔神に向かって切りかかる、が、カンっと高い音をさせて弾かれる。諦めずに切りつけるというより叩きつけるように何度も剣を振るが結果は同じである。

 後ろからルナが現れる。俺は一回、魔神に斬りかかった反動を利用して離脱する。それを待ってたかのように、エアブレッドを唱える。ハチの巣を叩いたかのような勢いで魔神に襲いかかる。あの数、あの速度、伊達に神をやってない。

 しかし、ダンスを踊るようにルナの無数の魔法をかわす。ルナに向き直ると掌を向けると俺の剣を弾いたように弾き続ける。

 それを見た俺は少し違和感を感じた。

 ルナの魔法を防いでる魔神の背後から全速で近づいて斬りかかる。その俺の動きに気付いた魔神は優雅に俺の剣をかわす。

 後ろに飛び離れて、俺は魔神に問いかける。


「なんで最初みたいに弾かない?」

「本当に君の評価上がりたい放題だよ。無駄にカンがいい」


 ルナの魔法を防ぎ続けながら、眼鏡の位置を直す。突然、魔力を爆発させるように吹き上がったと思ったらルナに魔力そのものをぶつけて吹っ飛ばす。


「君を野放しにすると、本当に0.1%を生み出されそうだよ。だから、早々に最初に消えてくれ」


 俺の襟首を掴んだと思ったら上空めがけて投げつけられる。


「いやぁぁぁー!徹!!」


 吹き飛ばされながら俺は言う。


「自分の事は自分でなんとかする。俺を信じて最後まで諦めるな!」


 俺はそのまま吹っ飛ばされ続ける。勢いが落ちてきて、無重力になったような感じがする。上がりきったようだ。下を見ればすごく高い所まで飛ばされた事を認識した。これってスカイツリーから下を見た時より高い気がする。

 こりゃ、このまま落ちたら原型留める可能性は捨てたほうがいいな。


 俺は絶望していない。むしろ希望が出てきたと思っているぐらいだ。あそこまで余裕綽々といった顔して対応してたアイツがルナより弱い俺を慌てて始末しようとした。俺の違和感は突破口になりうると言う事を証明したようなものだ。しかも、もう1つ面白い事に気付いた。あいつは打たれ弱い、肉体は分からないが少なくとも精神的には弱い事が分かった。慎重と言えば聞こえがいいが圧倒的優位は動かないのに、即潰しにかかってきた。始まる前はあんなに余裕見せていたのに。突破口はそのあたりから攻めるのがいいのかもしれない。



 無重力が終わり、下降が始まったのに関わらず、未だに死の恐怖はやってこない。ただ、がむしゃらに勝利を求める気持ちのみである。

 我知らずにイタズラ小僧のような笑顔浮かべながら魔神とルナの待つ地上へと落ちていった。

 感想などありましたらよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ