赤異屠 S.忌薔薇
ミカさんと妹さんの会話は、音声チャットを通してウチの方にも聞こえとった。
(仲直りできたんやねぇ。良かったなぁ)
……が、それはそれとして、や。
ウチは砂浜に転がっとった愛機『赤異屠』を立ち上がらせ、鋭い目つきのカメラアイをファルケディルナへと向けさした。
「痛いなぁ。ビックリしたわぁ、急に切りかかってくるんやもん。味方に」
『……もう一度、謝っておきます。ごめんなさい、忌薔薇。今日の私は』
「あー、ええよええよ。やるべきことは変わらんし。……セフィラの敵はぶった斬る、な? うふふ」
『はい。私も妹のため、全力でお相手します。……アルミラ、時間は稼ぎます。あなたはその間に』
『ヒノワのために新型を完成させちゃりますよ! ……頑張ってね、お姉ちゃん!』
『はい!』
赤異屠の視線をちらりと向けると、妹さんは前線の近くで『新型』を完成させるべく大慌て。
この状況でも機体製作に集中できるとは、ほんとロボもん好きなんやろねぇ。仲ようなれそうやわぁ。
けれどそれも、それはそれとして、や。
「そんなわけでなぁ、視聴者さん。ウチ、ミカさんと戦わなアカンみたいなんよ。だからイイネ、ちょうだいな♥」
《セフィリストのスリートップが仲間割れとはおっかないどすなぁ》
《関係あらへん。ワイらが応援しとるのは忌薔薇さまやからね》
《キャー! 忌薔薇さまー!》
《イイネ送るからもっかいちょうだいなお願いしますゥー!》
「ちょうだいな♥ これでええ?」
《あ、無理。尊い。死ぬ》
《イイネして死ぬ》
《ここの配信は騒がしい人おって退屈せんね》
戦ってる間に集まっとった視聴者さんたちから、イイネをぎょーさん送ってもらえました。こんだけあれば互角にやれる。
そう、『互角や』。
『……視聴者の皆さん、今日の私はセフィリストではありません。妹のために戦います。だから、もしかしたら皆さんの期待していた配信にはならないかもしれません。それでもどうか、私に力を貸してください』
ミカさんの方も自分とこの視聴者さんらにイイネをねだっとる。過激派セフィリストな視聴者以外はイイネを送ってくれるやろ。たぶんあっちのイイネ数もこっちと同水準。
で、ウチの赤異屠とミカさんのファルケディルナ、機体性能は一長一短の同ランク。操縦者の技量? これもまた同程度。『互角』や。
1対1なら相討ちかなぁ?
けれど周りにはウチら以外の機体もぎょーさん。特に怖いのは黒いEDA、ヒノワさんの大鴉。
あの機体がミカさんと一緒にかかってきたらまずいんやけど、
『忌薔薇! こっちは! 引き受ける!』
『うわぁ!?』
空から急降下してきたのはマリィさんのラスヴェイト。プテラノドンみたいな機体はその両足で大鴉をガッチリホールド、そのまま上空へと連れ去ってった。
『み、ミカさん! ごめんなさい! ちょっと手伝えそうにない――――ッ!?』
『ヒノワさん!? ……こちらとアルミラのことは任せてください。あなたはマリィの相手をお願いします。その子は手強いのでご注意を』
『わ、わかった――――ッ!?』
『ふふふ。マリィちゃんに。勝てると。思うなよ?』
お空の方でラスヴェイトと大鴉が戦闘開始。楽しそうやなぁ。
こっちはこっちでミカさんと1対1でやりあう準備ができたので――、
「赤異屠、EMOリアクター使うで!」
『ファルケディルナ、EMOリアクター起動!』
お互い、まったく同時にEMOリアクターを起動。イイネを食らってENに変える、EDAの本気モードや。この状態になったんなら、ウチの赤異屠は奥の手が使用可能。
「赤異屠、副腕開放な?」
赤異屠には、普段は封印している第三・第四の腕がある。その封印を解放して、ウチの愛機は四本腕の異形にチェンジ。
お腰にさげた6本の刀、そのうちの4本を四本腕に握らせてーの……四刀流!
「参りますえ、ミカさん!」
『受けて立ちます!』
猛将のごとく突撃し、舞姫のように刀を振るって、ウチらはミカさんとの戦いをおっぱじめました。
さすがはミカさん、並の相手なら一瞬でバラバラの四刀流を難なく受けきり、お返しにアンカーブレイドをぶんと一振り。
あれはあんま受けたくないなぁ、刀の耐久値が削れて折られても困りますし。というわけでバックステップ、距離を取って回避。
『逃しません!』
「せやろなぁ!?」
ファルケディルナは推進器をふかして急速前進、一気に距離を詰めてきよる。そのままラグビー選手みたいに肩でタックルぶちかまし、赤異屠をどかんとふっ飛ばし!
「痛ぅ!? やっぱキツいわその子のパワーと装甲は!」
『これが水の抵抗を突き破り、深海の水圧をも跳ね除ける水陸両用機の力!』
「ほんならバラして水底に送り返したる!」
即座に受け身をとって体勢を立て直し、刀を構えて特攻! ファルケディルナの分厚い装甲、その隙間に刀を1本ぶっ刺します!
『やられた!?』
「いかんなぁ。射撃も格闘も海戦も陸戦も空戦もできるミカさんと違って、不器用なウチらは陸の近接特化。それしかできません。……だから、陸での近接戦闘ならそうそう遅れは取らへんよ!」
ぶっ刺した刀の柄尻に膝蹴りを一発、刃をさらに深くねじ込んだる。お腹に金属の棒が刺さっとるんです、これでファルケディルナの動きは鈍るはずや。
刀を突き刺したことで空になった手には、予備の刀を握らせます。四刀流維持。このために6本も帯刀しとるんよ。
『……腹部アクチュエーター損傷、機動性ダウン。さすがですね、忌薔薇』
「うふふ、照れるわぁ。……ウチらの戦いで視聴者さんたちも大満足やし」
《なんちゅう攻防や。これがランカーの近接戦……》
《おっかないなぁ》
《さすがです忌薔薇さまー!》
《このまま勝っちゃえ忌薔薇さまー!》
配信が盛り上がって視聴者さんが増える、そうなったらイイネも増える。けれどそれはあちらもおんなじ。やっぱどこまでも互角やね。
……勝てるかわからん、だから勝ちたいなぁ。ミカさんと本気でやりあう機会なんてそうそうないしなぁ。うふふ。
「第二幕や! いくで赤異屠!」
『迎え撃ちなさい、ファルケディルナ!』
四本の刀と巨大な錨、二機の武器が浜に舞う。お互い一歩も譲らんで、斬った斬られた大立ち回り。
こっちがあっちに刀を刺せば、反撃にあっちはこっちの腕を切り落とす。
あっちに腕を持ってかれたら、お返しに刀で装甲を斬り飛ばす。
……譲らん、譲らんで! ミカさんは、βテスト時代からウチの友達で強敵なんや! 戦うとなったら絶対に負けへん!
無茶とも言えるほどの切り合いを続け、ウチらの愛機はお互いボロボロ。致命傷だけは回避しとるけど、動かなくなるのは時間の問題。
「……そろそろ決めんとなぁ?」
『……同意見です』
「負けんで?」
『私もです。……妹が見ているのですから!』
「うふふ、負けたら妹さんに慰めてもらい。……赤異屠!」
『ファルケディルナ!』
お互いこれが最後の一撃。がむしゃらに前進して、鎧武者が刀を振るい、ウサミミは錨を振り下ろす。
響き渡るは金属の壊れる豪快な異音。
『……くっ』
こっちの刀はファルケディルナの胴体を、EMOリアクターの位置を貫いとる。勝った。
「……惜しかったなぁ」
あちらの錨でこっちの胴体は真っ二つ、耐久値はゼロ。致命傷。負けた。
「勝ったし負けた。相討ちや」
『……ですね』
『お、お姉ちゃん!』
『アルミラ、新型は?』
『完成しました! お姉ちゃんのおかげです! ありがとう!』
『なら、良かった。あとはヒノワさんに任せましょう』
「……ミカさん、ずいぶんと満足した声してますなぁ」
『妹のために戦えたのです。満足です。……付き合ってくれてありがとう、忌薔薇』
「ええよええよ、映える戦いができて視聴者さんも大満足やし。うふふ、ふ――――」
喋り終える前に、大破した赤異屠が大爆発。もちろん、ファルケディルナも。ウチらは爆発に巻き込まれおつかれさん、や。……あとは頑張ってな、ケテルさん。
●赤異屠
HP:4800
EN:250
装甲値:1200
運動性:105
移動力:7
特殊能力:EMOリアクター(天)
空:不可 陸:S 海:不可 宇:B
機体サイズ:M
操縦者:忌薔薇
●武装
・一刀流
攻撃力3500 射程1~2
・二刀流
攻撃力4200 射程1~2
・奥の手・四刀流
攻撃力4800 射程1
操縦者コメント
「ウチのEDAやねぇ。近接特化の刃鎧系EDAや。陸での斬りあいならまあまあ強いで? 四刀流を使いこなすのはちと苦労しますけどなぁ。うふふ。四刀流、すごいおもたらブクマと評価ちょうだいな♥」




