宇佐神姉妹 S.アルミラ
海面に、ひときわ高い水柱。水底から上がってきたのは錨を担いだ夜空色の機体、ファルケディルナ。ミカのEDA、私の宿敵です。
そんな機体が、敵の側に立っているはずのEDAが――ヒノワを助けた!?
『はぁ!』
『あいたー!?』
大鴉と、鎧武者みたいなEDA『赤異屠』の間に割り込んで、ファルケディルナがアンカーブレードをぶんまわし。それはミカの味方であるはずの、赤異屠を狙っての一撃でした。
赤異屠は携えた刀でどうにか受け止め致命傷は回避。けれど攻撃の衝撃は殺しきれず、数十メートルほどふっ飛ばされることに。
大鴉を――ヒノワを助けたようにしか見えません。しばし呆然としたあと、私は慌てて音声チャットを送ります。
「な、なんのつもりですか!? あなたはそっち側! あなたは私の敵でしょう!?」
『はい。私はあなたの敵です』
「だったら……!」
『けれど、それ以前に私はあなたのお姉ちゃんです』
「…………えっ?」
いきなりなにを?
『妹が、友達を助けてほしいと言っていたのです。助けを求めていたんです。ならば姉として、やるべきことは決まっています』
「た、助けるって……なにを、なにが、なんでいまさら!? いまさらお姉ちゃんぶってんじゃありませんよ!? ……そうだ、また私を見下すつもりなんだ! お前なんて私が手を貸さないとなにもできないって!」
『違いますっ!』
「ひっ!?」
ミカが、怒鳴った。怒っているようで、泣きだしそうでもある、悲痛な大声。
『…………私はコミュニケーションが不得意なようです。あなたに気持ちをうまく伝えることができていなかった。あなたを褒めたつもりでも、あなたには嫌味と受け取られてしまって。誤解されていることにも気づけないでいて』
ミカが私を褒めていた? 私の受け取り方が間違っていただけで?
『だから今日こそ、正しく伝えます。伝えてみせます。深つ……アルミラ。私はあなたの味方です。あなたのお姉ちゃんです。あなたが助けてと言ってくれれば、私はいつでも駆けつけます。だから、だから……』
そして、優しさと哀しみの混じった温かい声が、私に願うのです。
『信じてください。許してください。私を、あなたのお姉ちゃんでいさせてください…………』
……そんなこと、急に言われても。そんなこと、急に言われたら。
「……な、泣きそうな声だしてんじゃねーですよ。つられて泣きそうになっちゃうじゃないですか。ぐすっ」
『ご、ごめんなさい』
「………………いえ、私も、ごめんなさい。ずっとあなたの言葉、悪い方にばっかり捉えていました。ずっとあなたを嫌なやつと勘違いしてました」
『それは、私の伝え方が悪かったからで……』
「私の受け取り方が悪かったんですよ。ひねくれてるので。…………ごめんね、お姉ちゃん」
『…………! 私を、許してくれますか?』
「……そっちこそ、私を許してくれますか?」
私たちはお互い同じことを聞いて、そして『姉妹』らしく同じ言葉を返すのです。
「「もちろんです!」」




