オーバーヒート! S.ティファレト
動けなくなっている私たちの背後で、ヒノワさんたちのEDAが輝き始めました。
「EMOリアクターを起動させた……?」
『ウウッ』
EMOリアクターはイイネをENに変える装置。効果はそれだけです、凍結解除の能力はない。……だというのに、鴉の全身を包む氷がだんだんと溶け始めているではありませんか!?
『ウッ!?』
「なにが!?」
驚愕する私とイェソドに、アルミラさんが答えます。
『ひひひ、鴉は発熱量がひどいんですよ。EMOリアクターを起動させたらあっという間にオーバーヒート。……それほどの熱量で加熱したアツアツの機体なら、氷を溶かすくらいできてしまうと思いませんか?』
「……なるほど、一般的なEDAの発熱量では氷を溶かしきるほどの熱量は得られませんが……!」
『ウウウーウーウ』
「一瞬でオーバーヒートするような機体なら、ガブリエルのフリーズスペルを素早く解凍することもできてしまう!? ……って、言ってますわよ」
『ほんと、なんでその呻き声を解読できるんですかあなた……? まあ、ともかく』
解凍完了。
氷から解放された黒きEDAは、手首に格納されていたバトン状の物体を手に取ります。ENを消費して、ギランと伸びるは光刃。
大量のENで刃を輝かせた鴉が、近接戦のスペシャリストの操縦で動き出しました。
『ウッ』
向かってくる鴉を、ガブリエルが触手砲からの光弾で迎え撃ちます。
『……逃げ道は見える!』
ヒノワさんはその全てを見切って回避、時にはビームソードで光弾を切り払って、前へ前へと突き進み!
『ウウグッ!?』
『鴉!』
ガブリエルとすれ違う瞬間、光刃一閃。
交差の後、2機のEDAは背中合わせ。時が止まっているかのように静止していました。
《どちらですの!? どちらのお嬢様がお勝ちになりましたの!?》
《最後、イェソドお嬢様の攻撃がヒノワお嬢様の機体に当たったようにも見えましたわ!》
《いえ! ヒノワお嬢様のビームソードは間違いなくイェソドお嬢様をお討ちになられたはず!》
《お排泄物緊張しますわねこの瞬間ッ!》
私の視聴者たちも結果を心待ちにしているご様子。
と、先に異変が生じたのは鴉の方でした。機体のあちこちが小爆発を起こし、その場に片膝をついてしまいます。
《やはりイェソドお嬢様のお勝利!?》
《……いいえ! あれはお熱暴走によるダメージ!》
《それなら!》
直後、鴉の背後で、切断されたガブリエルの胴体が地に落ちました。
『……ウゥー』
まさか負けるなんて、という不満げなイェソドの言葉のあと、ガブリエルの残骸は大爆発!
紫色のエーテル粒子を周囲にばらまきながら、最恐のセフィラは月の塵と消えたのです。
《ヒノワお嬢様の勝ちですわ!》
《なかなかやりますわね! お劣等種のくせに!》
《さすがティファレトお嬢様の見込んだお劣等種!》
こちらの配信のコメントは大盛りあがり、きっとあちらも同様でしょう。多くの視聴者に見守られながら勝利した鴉。その操縦者たる女の子は、つかれた声で呟くのです。
「ふぅ、なんとかなった……」




