セフィラ会議・げぶげぶてぃふぁてぃふぁ S.ゲブラー
VRゲームの世界には、プレイヤーの入ってこれない空間がいくつもある。
新しく実装するコンテンツを試すためのテストルームとか、開発スタッフが交流するためのVRチャットルームとか。いまオレがいるのも、その手のプレイヤー侵入不可の空間。LDOのサーバーの片隅に創られた、『悪の組織の秘密基地』みたいな雰囲気の施設だ。
襲撃クエスト中に撃破されたあと、オレはセフィラのリスポーン地点として設定されているこの場所に飛ばされた。そしていつものカフェエリアで仮想のいちご牛乳をすすりつつ、ローテンションにメンタル回復中である。
と、
「――――ふふふ、こたびの戦い、見せて頂きましたわ。無様に負けてしまったようですわね? まったくもって情けない!」
テンプレお嬢様キャラの喋りと共に、派手なドレスの金髪女がオレにちょっかいをかけてくるのだ。ちょっとめんどくさいと思いつつも、無視したらさらにうるさくなりそうなのでしぶしぶ彼女に対応する。
「なんだよ、ティファレト……」
「なんだよ、ではありません! 私たちセフィラの役目を言ってごらんなさい!」
「LDOのボスキャラ。越えるべき目標として君臨し、プレイヤーの攻略モチベーションを高めると同時、自らも配信することで広報活動を行うNPC……」
「そう、私たちの役目はプレイヤーの越えるべき目標。私たちとは、お寿司に当然の権利のように混入されていやがるワサビのような、そういう『宿敵』でなければならないのです」
どうでもいい情報、ティファレトは仮想寿司で仮想ワサビに泣かされて以来、寿司にワサビを入れるのが当然という風潮を憎悪している。
「私たちは強くあらねばなりません。簡単に負けるわけにはいきません。ボスキャラが弱いゲームなど、プレイヤーは楽しめないのですから」
「わかってるよ……」
「な! ら! ば! こんなところでのんびりしていないで自らのEDAの改良に汗を流すべきです! それがボスキャラを任命されし我々セフィラの義務でしてよ!」
「はいはい」
「やる気をまるで感じないお返事……!」
「配信やるとつかれるの。オフの時はゆったりしてないと仮想ストレスでやってられなくなっちゃうの……」
「……ハイエモの高度感情機能も良し悪しですわね。あまりに人間に近づけすぎたせいで、やる気やストレスで人間のようにパフォーマンスが乱高下してしまうのですから」
「人間のような肉体を持たないからデータの中でしか生きられず、余計なことを考えるせいで純粋なAIよりも演算処理能力に劣る。ヒトとAIの出来損ない、それがオレらってもんだからな……」
「さらにテンションを下げるようなことを言うんじゃありません! ……だから、この世界が滅亡(サービス終了)したらどうなるかわからないのですよ、私たちは? ハイエモが採用される現場なんて、ゲームNPCの制御用AIくらいしかないのですから」
「それもわかってるよ。……でもやっぱり疲れたので休む。寝る」
「寝るな。……配信の時は音楽フェスに出演するロックバンドのリーダーのようにイキイキとしているのに。ファンが見たら泣きますわよ?」
「オフのお嬢様キャラが配信中でもそのまま通じるお前と違って、オレは配信中に仮面を被らなきゃやっていけないタイプなの。けれど仮面を被り続けるのも疲れるんだよ……」
この仕事、向いてないんじゃないかなぁ。そんなことを考えながらオレは机に突っ伏し、仮想の眠りに落ちるのだ。
意識がスリープモードに入る寸前、ティファレトの独り言が聞こえた。
「まったく。……しかし、ふふふ。あの超大型機、なかなかおもしろい相手ですわね。次は私が試してあげるとしましょう。この――太陽の管理者・ティファレトが!」
恒星級のバカに目をつけられてかわいそうだなぁ、あの子たち。どうでもいいけど。
おやすみー。
~今日のEDA~
●カマエルVer7
HP:5800 EN:200
装甲値:1200 運動性:105 移動力:6
特殊能力:EMOリアクター(天)
空:不可 陸:S 海:不可 宇:不可 機体サイズ:S
操縦者:セフィラ5・ゲブラー
●武装
・格闘
攻撃力3000 射程1 EN消費5
・ミサイルコンテナ
攻撃力3600 射程1~4 弾数36
・アスクレウスMk2狙撃銃
攻撃力4000 射程3~10 弾数12
・パイルバンカーユニット
攻撃力5200 射程1 弾数6
操縦者コメント
「セフィラ用のEDA、アンヘルシリーズの5号機。小型かつ重装甲、実弾武装で固めた堅実な機体だ。他のセフィラの機体より火力は低いがな。戦術でカバーする必要が……げほっ!? なんだこれ、俺のいちご牛乳がクソにげえコーヒーに!? むせる!? コクマーかビナーかケセドの仕業だなおいこら待てバカどもが――――(セフィラ内で内紛が発生したためインタビュー中止)――あ、忘れるとこだった。ブクマと評価ヨロ」




