彼女が戦わないその理由 S.ヒノワ
「あ、アルミラちゃん!?」
「……ごめんなさい、ちょっとこのまま」
「い、いいけど……どうしたの?」
「……いやね、我慢してたんですけどね、やっぱりまけたのくやしくて、はらがたって…………ひぐっ、うぐっ、うえぇぇぇぇぇん!」
アルミラちゃんは弱々しく呟いた後、泣き出してしまった! ど、どうしよう!?
私が慌てている間にも、アルミラちゃんは感情を爆発させていく。
「またあの女に負けたぁぁぁl 宇佐神家の長女だからってみんなに期待されて! その期待に答えられるくらい優秀で! 妹の私はずっと歌月の下位互換で! そのうえこの世界でも勝てないなんてぇっ! うわぁぁぁぁん!」
……うさみ? かづき? ミカさんの本名? なんか聞き覚えがあるような? というか妹?
私の理解が追いつかぬうちに、アルミラちゃんはえんえんと泣き続け――落ち着くまでに10分ほど。
「……ぐすっ。ごめんなさい。また取り乱しました。こうなるから私は操縦者を辞めたんですよ……」
「辞めたって?」
「さっきもやらかしましたけどね、どうにも私は感情を処理するのが苦手です。限界まで悔しかったりムカついたりすると泣き出しちゃうんです。戦って負けるたびに配信に泣き顔を映したくないじゃないですか。だから操縦者を辞めて、自分で戦うのも辞めたんです」
「そういえばアルミラちゃんが戦ってるとこ見たの、さっきが初めてだったなぁ。結構、強かったような」
「あんなんじゃあの女には勝てません。……しかも、機体があの女に貰ったものですし」
「アルミラちゃんの機体……キアロディルナ、だっけ? あれって」
「ミカが作ったもんですよ。ファルケディルナの姉妹機です。基礎設計が腹立たしいまでに優秀でしてね、私自身がアレ以上に私向きな機体を作り出せないほど。……そんなの悔しいじゃないですか。あっちはチャンネル登録者数100万オーバーで、操縦者としてもスゴウデのランカーで、そのうえ設計者としても一流で? 私はなにひとつ勝てないんですよ?」
ぐすっと、アルミラちゃんは鼻をすする。
「自分が出来損ないってことくらいわかってます。それでも勝ちたいんです。ロボットモノに対する愛なら負けません。この世界で負けっぱなしというわけにはいきません。……絶対に、勝つんだから」
真剣な表情で決意を呟くと、彼女はいつもの彼女へと戻る。
「……つまらねーこと聞かせましたね、ひひひ。それと、今日は見苦しい姿を見せました。ごめーんね! 忘れてくださいな。それじゃ私はこれで」
少し慌てた動作でメニュー画面を操作し、ログアウトしようとするアルミラちゃん。彼女が仮想世界から退場する前に、私はなにかを言ってあげなくちゃと考えて――しかし気の利いたセリフなんて思い浮かばなかった。
だから、思ってることをそのまま口に出す
「……忘れないよ」
「え?」
「アルミラちゃんがミカさんに勝ちたいと思ってる。それは絶対に忘れない。……勝とうね、ふたりで」
アルミラちゃんは目を丸くしたあと、いつものようにいじわるく笑うのだ。
「当然ですよ。ひひひひひ!」
チームASPの登録者数・・・このあと??????人。




