あなたのイイネがロマンを救う S.アリスガワ・トモエ
私の海皇号は、アリスガワ三姉妹の水中戦担当です。海の底の水圧に耐えられるよう装甲は厚く、さらにバリアフィールドまで装備して二重の備え。
そのおかげで海皇号は防御性能がとても高い。なので私はアリスガワ三姉妹の防御担当でもあるのです。
敵の猛攻を前に、タツキちゃん、ライカちゃんの機体と一緒に撤退していた私。
殿を務めるべく後ろを警戒していたら、ヒノワさんの機体『アトラクナクア』が巨大な砲身をこちらへと向けていることに気が付きました。
だから私はENを消費して、
「海皇号、バリアフィールド起動……」
海皇号の周囲を守る、球状の結界を出現させました。
……ふつうの攻撃ならこれだけでも防げます。けれど敵の砲はあのサイズで、その威力はきっと破滅的。
真正面から受け止めようとすれば、バリアフィールドを貫通されてしまうでしょう。
なので私は、ふたつの手段でさらなる対策を講じます。
「EMOリアクター起動、バリアフィールドジェネレーター、出力最大、限界駆動……」
まず、これまでに集まっていたイイネを消費してバリアフィールドジェネレーターにより多くのENを供給、その出力をアップ。結果、バリアフィールドはさらに頑強に。
さらに、敵の大砲が火を吹いたタイミングにあわせて、咄嗟に機体の位置を半歩ほどズラします。
海皇号を中心として球状に展開されるバリアフィールドの曲面部分で相手の弾丸を受け止め、そのまま受け流し。
バリアフィールド上を滑った弾丸の軌道は直撃コースから逸れ、私たちの機体の横を抜けて遥か彼方へ飛んでいきました。
そして背景にそびえ立つ山に着弾。
大きな山に、大きな風穴が空きました。やっぱりすごい威力。
あれが直撃していたら、私たちは周囲の地形ごと消し飛んでいたでしょう。
「ぎゃー!? 死ぬかと思ったー!?」
「あ、危なかったのだわ!」
彼方の惨状を見て、タツキちゃんとライカちゃんが悲鳴をあげます。
「は、外しちゃった!?」
『外された!?』
必殺の攻撃を防がれて、ヒノワさんとアルミラさんがやっぱり悲鳴をあげています。
悪いことしちゃったかな、でもこれがトモエの役目なので……。
《さすがトモちゃんだ、あの攻撃にも冷静に対応している》
《アリスガワ三姉妹で一番高ランクだからな》
《防御フィールドの曲面で弾丸を反らすなんてのはそうそうできるやつのいない神業ぞ》
コメントで褒めてもらえています。うれしい。
「えへへ……」
《かわいい》
《かわいいね》
《かわいいぜ……》
《っと、タツ姐さん! トモちゃんが敵の攻撃を防いだ今こそチャンスだ!》
視聴者さんたちのコメントが、呆然としていたタツキちゃんの心を戦いへと引き戻しました。
「……はっ!? そうかそうだな! 敵の最大の攻撃を防いだら! 今度はこっちがキリフダを使う番だ! なぜならそれが!」
《ロマンだから!》
《ロマンだから!》
《ロマンだからさ!》
《初見なんですけどほんといつもこのノリなんですかこの配信?》
「ライカ! トモエ! アレを使うぞ!」
「まだ実戦で使ったことはないけれど……そうね、やるならいまね!」
「わかりましたぁ……」
《くるぞくるぞ! タツ姐たちが数ヶ月をかけて開発していたアレが!》
《LDOの歴史を変えるアレが!》
《ロマンたるを体現するシステムが!》
「レスラーさんたちはイイネを頼む! アレはEN消費が大きいからな!」
《レスラーじゃなくて視聴者ですよ》
《任せろ!》
《送れ送れー! イイネフルチャージだ!》
《ご存知ですか? あなたのイイネで救われるロマンがあるんです!》
ノリノリな視聴者さんたちのコメント、送られてくるたくさんのイイネが私たちの機体に三分割で集まっていきます。
十分なイイネを得たところで、タツキちゃんとライカちゃんがそれぞれの機体のEMOリアクターを起動。
「飛竜号! EMOリアクターだ!」
「雷獣号! EMOリアクター起動!」
海皇号はすでにEMOリアクターを起動済み。全身を輝かせる私たちのEDA。機体に満ちるエネルギー。
準備は整いました、私たちはコンソールを操作して『システム』を起動させます。
【SISTEM TRI GIGAS:ACTIVE】
モニターに表示されたのは、タツキちゃんが作った戦闘システムの起動を告げる英単語。
……タツキちゃん、これ『システム』の綴り間違ってるよ。あとで直しておかなきゃ。
「ゆくぞライカ! トモエ! いまこそ私たちの真の姿を見せる! 合体だ――――――ッ!」
空まで届くタツキちゃんの絶叫にあわせて、私は操縦桿を握り締めるのです。




