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Stage4『失われた故郷を求めて』②

 妖精を迎え撃ちつづけると、やがて舟は陸地の上空に到達した。霊夢は妖精からの攻撃をかわし、舟を乗り捨てて地に降りる。白砂がくしゃりと音を立てた。辺りは砂浜のようだ。木もなければ草もない。生命の気配を感じないほど、閑散とした景色が続いていた。

 妖精の列は上空で渦を巻いている。まるで霊夢の様子を伺うように、その場から動かなくなった。霊夢は妖精たちの動きを見て違和感を覚える。その動きは好き勝手に動く妖精らしからぬ、統制されたものだった。

「何なのよこいつら……! どっかに動かしてるやつがいるわね!」

 霊夢が叫び声を挙げる。それにゆっくりと答える声が一つあった。

「いかにも。見事な戦いぶりだね、見知らぬ旅人さん」

 霊夢は声のする方へ振り返る。するとそこには、地べたに仰々しく胡坐をかいて座る妖獣がいた。妖獣は人間の体に加え、その顔には人のものと若干異なる黒い耳を持っていた。背中からは長くしなやかに曲がる尻尾を覗かせている。手足は長く、その風体には猿の姿が重なった。武器なのだろうか、槍を肩に立てかけている。

 霊夢は妖獣に向かって針を数本打ち込んだ。しかし妖獣は胡坐をかいた姿勢のままで後転をし、針の射線上から離脱する。針が地面に突き刺さる。同時に、妖獣の肩にあった槍が後転の勢いでくるくると宙へ舞っていた。一息も入れないうちに、槍は穂先を天にして妖獣の傍に突き刺さった。そのまま妖獣の方へ倒れていき、ちょうど彼女の肩に立てかかるようになる。妖獣の容貌は先ほどと変わらぬ形に落ち着いた。

「何よあんた。私に喧嘩売ってるわけ?」

「私か? 私は……あー、名前は昔なくした。今は(ましら)と呼ばれているよ」

 妖獣は霊夢の刺々しい様子など気にしていないように、ゆったりと答えた。

「有事に怪しげな異邦人が来たので、迎撃止む無しと思ったんだが。中々強いね、君」

 妖獣は呑気に答え、霊夢を指してにっこりと笑う。彼女の名前は安來やすぎましら。深宵園に住む妖獣だ。猿は、霊夢から視線を外すと空を見上げはじめた。彼女の視線は、先ほど霊夢が乗り捨て、今も二人の周囲をゆらゆらと旋回する舟を捉えていた。

「君はなんだってあの舟に乗っていた? 何を目的にここへ来た」

 猿は立ち上がると、支えを失い倒れかかる槍を器用に蹴り上げ、手で掴んだ。そして槍を振り回すと、それに呼応するように妖精の列が蠢き始める。一塊の妖精たちは猿が振るう槍に応じるように舟へ迫る。そして難なく舟に近づくと、舟をその大群の中に呑み込んでしまった。

「いったい何者だ、君は。聞きたいことは幾つもあるぞ」

「私は博麗霊夢。幻想郷の素敵な巫女よ」

「はあ、巫女? こんな物騒な巫女がいるもんか。通り魔の間違いだろう」

 先ほど霊夢が撃った針を槍の先で叩き、猿はけたけたと笑い声をあげる。霊夢もにこりと笑い返す。

「オーケー。事情を聞くにしてもぶん殴ってからね」

「いいや。事情を聞くのは、君をひっ捕らえた後だ」

 見知らぬ世界の岸辺にて、二人の弾幕が重なり合う。


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