Stage4『失われた故郷を求めて』①
Stage4『失われた故郷を求めて』
深宵園-至りの岸
自機:博麗霊夢
水路を照らす光が段々と弱まってきた。思わず霊夢のお祓い棒を握る手に力が入る。そうして数秒と経たないうちに一切の光は消えてしまった。
水流の音だけが霊夢の耳に届く。しかし突然、眼前の一面が赤黒い色を映すようになった。まるで鈍く光る壁が現れたようだった。舟は止まることなく赤黒い壁へ接近していく。
ざぱん、と音を立てて舟が光の壁を破る。それと同時に、舟は船首から下方へ倒れていった。かと思うと、すぐに水飛沫を上げて船首が上がり船尾が沈んだ。しばらく舟と霊夢は不規則にぐらぐらと揺れる。少し経って揺れが落ち着くと、今まで舟と霊夢を包んでいた泡が弾けて消えていった。
どうやら霊夢は水上に出たようだ。ここが深宵園なのだろうか。もしかすると今の時刻は夜なのかもしれない。水面下から壁のように見えた赤黒い光は、宵闇のように薄暗く世界を照らしていた。
「この湖……どこまで続くの?」
霊夢の目の前には、終わりのない水面が遠大に広がっていた。
「あれが水平線っていうものなの? 何も見えない、何もない……」
幻想郷に海はない。霊夢にとって、いつも景色の果てにあるのは地平線だった。しかし目の前の光景は違っている。霊夢の視界の終わりでは、どこまでも続く湖が、その端を夜の闇に溶かして、黒い空と交わっている。もしこのまま周囲を見渡していったとして、ずっと果てのない景色が続くような気がして、霊夢は焦燥感に駆られた。
しかしそれは杞憂に終わる。ふと気が付けば、舟は知らな間に水面を動き出していた。進路の方へ目をやると、その方角に陸地が見えた。
「ふうん、便利な舟ねえ。本当に全自動で動くみたい」
霊夢は多少の安心を覚えて空を見る。すると、もう一つ見慣れない光景を目にした。夜空に星がなかった。深宵園の夜空には二点だけ、黄と紅の光があるだけだった。その二つの光は月の代わりのように夜空で浮かんでいる。ちょうど沈む太陽と昇る月のように、二つの光は空の反対側の低いところにあった。
二つの月がこの世界で唯一の光源のようだ。あれが消えてしまうと、この世界は本当の暗闇へ沈んでしまうのだろう。
霊夢がそのような見慣れない夜空を見上げていると、空に妖精の影が見えた。
「この世界にも妖精はいるのね」
霊夢は呑気に呟くが、すぐに異変を感じ取る。数が異常だった。数十匹、下手をすると百匹を超える妖精が列をなして霊夢に接近していた。
そしてよく視界を凝らせば、陸地の方からは無数の煙が上がっている。どうも様子がおかしい。霊夢は状況を呑み込めなかったが、札と針を手に戦闘態勢に入る。すると舟も進路をそのままに空へ浮かんでいった。どうやら進路は変わらないが、ある程度なら空を自由に動かせるらしい。霊夢は舟に導かれるように、妖精を迎え撃つ。




