第十話 星の見える場所
## 第十話 星の見える場所
車は、
街灯の少ない坂道をゆっくり上っていく。
窓の外は、
ほとんど真っ暗だった。
時々、
遠くの街灯が小さく見えるくらい。
「この辺、
夜めっちゃ静かなんですよ。」
ハンドルを握ったまま、
ゆうきが言う。
かなは窓の外を見つめながら、
小さく頷いた。
たしかに静かだった。
聞こえるのは、
エンジン音と、
小さく流れる音楽だけ。
「昼も綺麗だけど、
夜の方が好きなんだよね。」
ゆうきが続ける。
「なんか、
落ち着くから。」
かなは少しだけ笑った。
その感覚が、
わかる気がした。
数分後。
車がゆっくり止まる。
「着きました。」
ドアを開けると、
少し強めの風が吹いた。
「寒っ。」
かなが肩をすくめる。
りゅうが笑った。
「だから言ったのに。」
「聞いてなかった。」
三人で歩く。
ガードレールの向こう。
そこには、
星空が広がっていた。
かなは思わず立ち止まる。
「……すご。」
空いっぱいの星。
海の向こうには、
小さな灯りが並んでいる。
風の音だけが、
静かに耳へ残った。
「ここ、
ゆうきのお気に入り。」
りゅうが隣で言う。
「一人でもよく来るよな。」
ゆうきは少し照れたように笑う。
「落ち着くから。」
かなは夜空を見上げたまま、
小さく息を吐く。
綺麗だった。
写真より、
ずっと。
「かなさん、
写真撮らないんですか?」
ゆうきが聞く。
「あ。」
かなは慌ててスマホを取り出す。
画面越しの星空は、
やっぱり少し暗い。
「難しい。」
「わかる。」
ゆうきが隣へ来る。
「夜景モードにすると、
ちょっと変わりますよ。」
かなはスマホを見つめたまま、
少しだけ距離が近くなったことに気づく。
胸が、
小さく騒がしかった。
その時。
風が強く吹く。
かなの髪が揺れた。
「寒くないですか。」
ゆうきが小さく聞く。
かなは少しだけ笑った。
「ちょっとだけ。」
すると。
「はい。」
ゆうきが、
缶のカフェラテを差し出す。
「さっき買っといたやつ。」
かなは目を丸くする。
缶は、
まだ少し温かかった。




