第一話 星が綺麗な夜だった
## 第一話 星が綺麗な夜だった(修正版)
夜風が、
静かに髪を揺らした。
かなはスマホを空へ向ける。
「……やっぱ難しいな。」
画面の中の星空は、
実際に見るよりずっと暗い。
肉眼ではこんなに綺麗なのに。
「かなー、寒くない?」
後ろから、
美咲の声が聞こえた。
振り返ると、
コンビニ袋を片手に持った美咲が立っている。
「はい、レモンティー。」
「あ、ありがと。」
受け取ったペットボトルは、
少し冷えていた。
かなは小さく笑う。
「夜に飲むレモンティーって、
なんか美味しいんだよね。」
「それ、わかる。」
美咲が隣へ座る。
海沿いの展望スペースには、
ほとんど人がいなかった。
遠くで、
波の音だけが聞こえている。
街灯も少ない。
その分、
空いっぱいに星が広がっていた。
「で、結局マチアプ始めるの?」
美咲が聞く。
「まだ悩んでる。」
「写真撮りに来てる時点で、
もう始める気じゃん。」
「……まあ。」
かなは苦笑する。
最近、
周りがどんどん恋人を作っていく。
焦っているわけじゃない。
でも、
このままでいいのかなって、
時々思うことはあった。
その時だった。
遠くから、
エンジン音が近づいてくる。
数秒後。
黒い車が、
ゆっくりと駐車場へ入ってきた。
「うわ、星めっちゃ見える。」
男の声が響く。
車から降りてきたのは、
二人の男だった。
助手席側から降りた背の高い男が、
空を見上げる。
黒いパーカー。
ラフな格好なのに、
妙に目を引いた。
「ゆうき、
そこ立って。」
もう一人の男がスマホを向ける。
「なんでだよ。」
「映える。」
「男撮っても意味ないだろ。」
少し笑い声が広がる。
かなは、
なんとなくその様子を見ていた。
楽しそうだな。
ただ、
そう思っただけだった。
「かな?」
美咲の声で我に返る。
「あ、ごめん。」
「なに見てたの?」
「別に。」
かなは視線を逸らし、
レモンティーを口に運ぶ。
少しだけ風が強くなった。
その時。
ふと、
目が合う。
黒いパーカーの男。
ほんの数秒。
でも、
相手も少し驚いたような顔をした。
かなは慌てて視線を外す。
胸が、
少しだけ騒がしかった。
「帰る?」
美咲が立ち上がる。
かなはもう一度だけ、
夜空を見上げた。
星は、
さっきより綺麗に見えた。




