87. 放課後の生徒会室
「あれ? もしかして迷惑だったかい?」
「えっ? えーっと、め、迷惑……ってわけじゃないけど……」
「でも、常盤さん。研究の方が忙しいんじゃないの? なのに、私達と遊んでてもいいの?」
「おーよ。さっきの犬派猫派論の研究とかしなきゃなんねーんじゃねーのかよ?」
プルがどうしようと困惑すると、続けてルーシーとミアが常盤さんの血迷った判断を、なんとか思いとどまってもらおうと説得を試みた。
「いやいや、君達のお気遣いは誠にありがたいんだけど、例の犬派猫派論については、もうこれ以上研究する意味がないって結論がさっき出たところだし、それ以外に僕が以前から知りたかったことなんかについては、先ほどメグに全部聞いてしまったもんで……そういう訳で、現時点においては、僕には研究する対象が何もないって状況なんだ……まあ、いずれ何か研究したいと思えるようなテーマが見つかるかとは思うんだけど……だがしかし、そのことについては君達には特に心配してもらわなくても大丈夫だよ。」
「そ、そう。だったら別にいい……のかな?」
「そうかいそうかい。ならありがとう……だが5色の魔法少女については、残念ながら僕は不勉強で、君達の知識にはまったく敵わないだろうけど、これから猛勉強して、すぐにでも君達のレベルまで追いつくようにするから……それまでは足手まといになっちゃうかもしれないけど、まあどうかよろしく頼むよ……それと、君達の5色の魔法少女仮想シミュレーションについてだけど……赤澤君が赤、田辺君が青、支子君が黄色……あっ……そういえば君達4人はお互いを名前で呼び合っているんだったね。では、これからは僕も君達のことは名前で呼ばせてもらうことにするよ。なので、君達も僕のことは常盤さんなんていう他人行儀な感じじゃなくって、これからは香って名前で気安く呼んでくれたまえ。」
「えーっ!?」
プル達はまたまたビックリした。
「あれ? もしかして失礼だろうか?」
「えっ? えーっと、ぜんぜん失礼とかってわけじゃないけど……」
プル達は、常盤さんのことを、これから香とか呼び捨てにするのが恐れ多くて仕方なかった。
「そうかい。ならありがとう……では、先ほどの話を続けよう。君達の5色の魔法少女仮想シミュレーションについてだけど……プルが赤、ミアが青、ひばりが黄色……それでルーシーが緑で、僕も緑色の魔法少女になるんだけど……でも、ルーシーが先に緑をずっと担当していたのだから、ここはルーシーが緑……ということにして、僕は残った桃色の魔法少女を担当する……ということで問題ないだろうか?」
「いや、桃色は私だから絶対ダメだよ。」
その時、ひばりが香の提案を猛然と却下した。
「えっ? でも、ひばりは黄色の魔法少女なのでは?」
香は、ひばりの意図がわからず、不思議そうな顔をした。
「あの……常磐さん……あっ、こ、香。もしよかったら、私の緑、別に香に譲っても構わないけど……」
実は緑色の魔法少女にそんなに愛着がある訳でもないルーシーが、香に緑色の担当を譲ってあげようとしてくれた。
「いや、だがしかし……」
結局、最終的に香は黄色の魔法少女を担当することとなり、6色の魔法少女の緑色の魔法少女グリーンパピーになるはずだった香は、これからひばり達の5色の魔法少女ごっこにおける黄色の魔法少女イエローキティになったのだった。
そしてプル達は、あの規格外の天才で、しかも世界的に有名な常磐さん……もとい香が、自分達の仲間になって、明日からずっと一緒に行動することになったら、先生や学校の生徒達は自分達をどんな目で見るのだろうか……これから香とどう付き合っていけばいいのだろうかと、大きなプレッシャーをそれぞれの胸の内に抱えるのだった。
「でも、これで久しぶりに5色の魔法少女が全員そろったね。」
4人の中で唯一何も考えていないひばりは、一人呑気に常盤さんの加入を素直に喜んでいた。
「おーよ……まっ、そういえばそうだな。」
ミアがひばりに適当に返事した。
「だったら、香は4代目の黄色の魔法少女ってことだね。」
「えっ? 4代目って?」
プルが不思議そうな顔でひばりに聞いた。
「うん。つかさが初代で、私が二代目で、つゆちゃんが三代目だから……香は四代目でしょ?」
「えっ? ……あれ? ひばり、露ちゃんのこと覚えてたんだ。」
「なんだ。ひばり、私もてっきり露ちゃんのこと忘れてるのかと思ってた。」
プルとルーシーが意外そうな顔でひばりを見た。
「えっ? ……いや、そんなの覚えてるに決まってるじゃん。」
(本当は昨日夢を見るまで忘れてたんだけど……)
ひばりは、とりあえず二人に抗議した。
「でも……つゆちゃん、元気にしてるかな?」
ひばりはつゆちゃんのことを懐かしんで遠くを見るような顔をした。
「はあ? 何言ってんだお前?」
するとミアは訝しそうな顔でひばりを見た。
「えっ?」
「あっ! ……そういえばひばり。香とさん君のとこに行かないといけないんじゃなかったの? もうこんな時間だし、早く行った方がいいよ。」
「そうだよ。私達はついていけないみたいだから、駅までだったら一緒に行ってもいいのかな?」
その時、プルとルーシーが、ひばりに早く出発するように強く促した。
「お、おーよ……ま、まあそういうわけだから、俺達は俺達でどっか別のとこんでも寄ることにしようぜ。」
ミアも、慌ててプル達の意見に賛同した。
「うん。そういえばそうだね……じゃあ香、それじゃ行こっか?」
「よし、ひばり。ではでは行くとするか。」
香はひばりに笑顔で返事をすると、一人何か覚悟を決めたように、両手で勢いをつけて席から立ち上がった。




