プランランを使った研修会
三月五日、私の任地でプランランと集団事務所が連携した研修会が行われた。それぞれの得意分野を生かした新たな挑戦を形にするため、ここ二、三ヶ月の間に十回ほど先行事例として行われるものである。
プランランは資金調達や研修会場の確保など物的な準備を行った。集団事務所は現地への地区教育事務所や教員への呼びかけ、講師の準備など人的な準備を行った。
今回、私は集団事務所側の現地責任者として、近郊の教育隊員へ協力をお願いしたり、県の教育事務所と連絡を取り合ったりする。
また、プランラン事務所と連絡・調整を行う遠山アドバイザーやアリアス現地コーディネーターと電話で話し合いながら、新しいタイプの研修会のよりよい形を求めて、模索を続けた。
この日、カンディダ先生はとても上手に模範授業を行っていた。これに他の先生達も大いに刺激を受けたようで、質疑応答は多いに盛り上がった。
藤木君の任地の先生とか、サンホセの先生とか関係なく、それぞれが一人の教育者として、一つの授業について、熱く語っている姿は日本でもなかなか見られないだろう。思わず、目頭が熱くなった。
それからアリソスさんの「授業の枠組みと発問の重要性」について、講義があった。今回のカンディダ先生の授業も「問題提起・展開・まとめ」の流れとよい発問の精選に沿ったものである。
この枠組みさえ、きちんと理解できれば、どの教科でもそれなりの授業ができると言うものである。日本ではごく当たり前に行われていることだが、サルドノではようやく始まったばかりである。まだ、多くの教員が昔ながらの一問一答式の古い授業を行っているのである。
しかし、彼らを責めてはいけない。彼らはこれまでよい研修を受ける機会に恵まれなかっただけだから…。
指導書をきちんと使った授業をするためには、「授業の枠組み」や「よい発問」は書かせない要素である。今回、それを現地の教員が行った授業で確認できたのはよかった。地方の教員はこのような研修をほとんどうけられないので、ニウロクやサンホセの教員にとって、大きな財産になっただろう。
その後、藤木君と私で教材や教具をきちんと準備することは分かりやすい授業を進めていく上で欠かせないことを説明した。今回、カンディダ先生は「立方体と直方体」についての授業をやったので、もし教具や教材がなかったら、非常に分かりにくいことを簡単に分かってもらえた。
研修会を終えた後、どの先生も「授業の枠組み」や「よい発問」を考えた授業をするようになった。急にできるようにはならないだろうけど、毎日、試行錯誤をくり返しながら前進しようとしているのが、肌で感じられてうれしかった。
もちろん、今回の研修会については計画・実施・反省を含めて、研修レポートとしてまとめた。他の算数隊員と情報を共有するためである。
先生達が変われば、子ども達も変わる。子ども達が変われば、子ども達の人生も変わる。と、ある先輩隊員は言っていた。子ども達の人生が変われば、国の未来も変わる。そうやって、変化の輪がどんどん広がっていけば、本当にその言葉のようになるかもしれない。
サルドノで隊員活動を初めて、本気でそう思えた瞬間であった。これまで心のどこかで現地の教員を信じきれない部分もあったが、この研修会で完全に信じられるようになった。また、ここまで頑張る事ができた自分をほめてやりたい。さあ、もうひと頑張りだ!
残り三ヶ月とり、いよいよ残すは「算数オリンピック」だけとなった。算数オリンピックは二年間の活動の仕上げとして行うつもりである。つい最近まで理想に過ぎなかったものが、次々と実現してきた。
算数オリンピックもあわよくばできればいいと思っていたのに…。けして、一人ではできなかったこと…。多くの人々に支えられて、ここまでやってきた。ふと振り返ると、曲がりなりにもいろいろやってきたんだなと思いふける。
研修会が終わった夜、一人で喜びをかみしめながら、サンホセの町の夜景を部屋から眺めていた。この控えめな夜景を眺められるのもあとわずかだと思うと、なぜか寂しくなる。
あんなに日本へ帰りたかったのに、今はもう少しだけ長くいたい…とさえ思えるようになっている。これまでのカナには考えられないことであった。




