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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第五章  皆が〈命令無視する〉と嘆く将軍編

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第七話  軍師直轄魔道火力支援部隊

前回のあらすじ:


キマイラの軍勢と戦い、膠着する中、マグナスが用意していた魔法使いの部隊が活躍して勝利!

「なんとお詫びをしたらいいか! そしてお礼を! アンリ! 私たちが戦に勝てたのは、あなたが紹介してくれた〈魔法使い〉部隊のおかげだわ!」


 シャロンが盛大な掌返しをした。

魔獣狂い(ビーストマニア)の軍勢を撃退し、皆で魔法都市(ネビュラ)に凱旋した直後のことである。

 ずっと連敗街道を驀進していたシャロンは、初めて戦に勝つことができて、大喜びであった。

 それはもう、抱きついてこんばかりの喜びようで、俺は牽制するのに大変だった。


 一方で、真面目な話もしなければならない。


「礼はちゃんと報奨金という形で、彼らに支払っていただきたい。謝罪の方は必要ありません。シャロン、あなたは魔法使いの部隊による火力運用に懐疑的でありながら、俺の進言に耳を傾け、実戦でのテストを許可してくれた」


 俺はその彼女の度量、将としての器量を、おためごかし抜きに褒め称えた。


 世の人間の、なんと頭の固いことか。

 過去の成功例や保守的な意識に凝り固まって、新しい風を取り入れようとしないことか。

 そして往々にして、地位や権力の高い人間ほど、その傾向が強い。

 彼らに理屈は通じないのだ。提案をされると「生意気だ」と感じ、旧弊を指摘されると「バカにされた」と受けとるのだ。プライドといえば聞こえはいいが、ただの傲慢である。

 俺がこの旅を始めて、何度も痛感したことである。


 比べてシャロンの、なんと柔軟なことか。

 かつて出会ったアラバーナ皇子ヘイダルや、海賊商会のパウリに比べれば、凡庸の域に入るかもしれない。

 しかし、救い難い愚物では決してない。

 彼女という将軍がいたことが、きっとこのヴィヴェラハラを救うことになるだろう。


『まあ、マグナス様のご提案だったから受け容れたんでしょうけどね。()()()は偉大ですね』


 ショコラ、黙ってなさい。

 あと皮肉はやめなさい。


「それとシャロン。彼らの部隊は今後も継続的に運用していくということで、よろしいか?」

「ええ、もちろん! こちらからお願いしたいくらいだわ。もちろん報酬だって――」

「お待ちください、お師様」


 上機嫌で契約しようとするシャロンを、冷ややかな声が遮った。

 イザベッラである。

 ズッチ、ティナといった他の弟子たちも、不服そうな顔をしていた。


「世の中には『余計なお世話』という言葉がございますわン、お師様」

「今日の戦は、魔法使いたちなんかいなくても、勝ってたんだぞ」

「二人に同意」


 な、傲慢(プライド)が邪魔するだろう?


「どこをどう判断したら、魔法使い部隊なしで勝てたというのよ!」


 シャロンが弟子たちの不見識を窘め、眉を吊り上げた。


「あの魔法一斉射がなかったら、グリフォン部隊に本陣を強襲されていたでしょ!?」

「でもまだ、ティナのシルバーゴーレム部隊が予備に残っていましたわン」

「地上に降りてきたグリフォンなんて、恐くないんだぞ」

「二人に同意」

「後からならなんとでも言えるわよ!」


 シャロンがガミガミと叱る。

 でも、これは彼女が正論だ。

 にもかかわらず、イザベッラたち三人はまだ不服げにしていたが――


「あ、あの~」


 シャロンの高弟たちの残り一人、一番気弱そうなケイトが、まさに「おずおず」という様子で声をかけてきた。

 なぜか、俺に。


「……どうした?」

「あ、あの、あのあの、わたし、お礼が言いたくって……」


 あきらかに人見知りするタイプのケイトが、勇気を振り絞った様子で訴える。


「お礼? 俺にか? なんの?」

「グラディウスさん、とっても頼もしかったです~。おかげで、わたしの部隊が救われました~。そのお礼を~」


 ああ。なるほど。


「いや、礼には及ばない。勝つために必要な措置をとっただけのことだ」

「じゃ、じゃ、じゃあ、次も勝つために、お知恵を貸してください、軍師様~」


 頬を真っ赤にしてそれだけ言うと、逃げるようにして駆け去り、シャロンの背中に隠れた。


『メモ、メモ……と。あらあら、まあまあ、アリア様にご報告すべきことがこんなに分厚く』


 今すぐそのメモを燃やすからよこしなさいショコラ。


「とにかくです! 今後とも魔法使いの皆さんには、『軍師直轄魔道火力支援部隊』として、参陣していただきます。これは決定よ! いいですね?」


 シャロンはそう宣言し、弟子たちに念押しした。

 イザベッラたちは返事をしなかった。

 ケイトだけが一人、「いいと思います~」と賛成していた。


 まだ先が思いやられるな。

 それでも俺は、彼女らを勝たせてみせるが。


    ◇◆◇◆◇


 その後、俺とショコラは改めて、遥々ヴィヴェラハラまで駆けつけてくれた魔法使いたちを、ねぎらいに行った。

 シャロンが手配し、深夜営業もする広い酒場を貸し切って、飲み食いしてもらっていたのだ。


「皆、よく来てくれた。そして、よくやってくれた。さすがの実力、さすがの実戦慣れ、さすがの呼吸の合った一斉射、全て申し分なかった」

「やめてくださいよ、マグナス様!」

「そうですよ。あんたたった一人にやられた俺たちが、そのあんたに褒められたらムズ痒いってもんです」

「事情は聞きませんが、実力を出せないってのは難儀ですな」


 彼らは早や赤ら顔で、俺を取り囲んで、ジョッキを持たせた。

 魔法使いといえど、この彼らはお行儀のよい人種ではない。

 古黴た書庫にこもって、一日中読書をしているような、一般的な魔法使いたちとは違うのだ。

 九つの海を股にかけ、その攻撃魔法を以って海戦に明け暮れる、そんな連中なのである。


 そう、かつては海賊商会に属し、今はカジウ海洋警察(カリオストロ)の一員として贖罪の日々を送る、連中だった。


 俺は彼らの乾杯に一、二度つき合った後、酒場の奥の席に向かう。

 そこで高い酒をちびちびやっている、頬に傷のある青年と同席する。


「遥々よく来てくれたな、パウリ」

「なに、〈タウンゲート〉を使えば一瞬ですよ」

「相変わらず口の減らない奴だな」


 そういう意味で言ったわけじゃないのは、わかっているだろうに。


「では僕も真面目な話を。あんたには返しても返しきれない借りがあるんでね。呼ばれれば、魔王との決戦だって協力しますよ」

「そうか。神霊サイレンもおまえを見直すんじゃないか?」

「あ、それ言う!? そういうこと言っちゃう!? 口が減らないのはどっちだよ!」


 いつも人を食ったパウリが、このネタになると覿面に狼狽を見せる。

 俺は笑いながらも、改めてパウリと乾杯した。

 酒は苦手だが、今日はなぜか楽しく飲めた。

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