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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第四章  僕に〈命令しないで〉と強がる光の戦士編

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第二十一話  決闘開始(レイ視点)

前回のあらすじ:


ベリーが見事にエルドラを口車に乗せ、レイと決闘することになったが――

 僕たち〈光の戦士〉がまだ、四人全員そろって旅をしていた時のことだ。

 元騎士見習いだったエルドラは、図抜けて強かった。

 戦いの「た」の字も知らない、不甲斐ない僕らに代わって、獅子奮迅の戦いぶりで魔物たちを蹴散らしていた。

 そのせいか、〈レベルアップ〉もエルドラが飛び抜けて早かった気がする。


 同じ光の戦士といえど、僕たち四人が神霊プロミネンスから授かった力は、バラバラだった。

 そして、そもそもエルドラはリーダー向きというか、個人で完結した能力を持っていた。

 前衛職として近接能力が高く、さらに強化魔法で自己の〈ステータス〉を増強し、また回復魔法まで使うことができる。

 まさに反則的な能力。

 魔法が一切使えない僕や、支援向きの能力しかないテレサ、壁役がいないと困るラッドたちとは、大違いだよね……。


 そんなエルドラと、僕は決闘しなくちゃいけないことになったんだから、


「なんでかなあ……。なんでこんなことになっちゃったのかなあ……」


 って、ぼやきたくなるのも当たり前だよね……。


「いい加減、覚悟をお決めなさい、レイ。男でしょう?」


 僕をこの事態に巻き込んだ元凶が、のたまった。


 お城の前庭にある閲兵場が、今日のコロシアム代わり。

 設置された観覧席のあちこちをベリーが指しながら、


「ほらほら、あそこで父上が見てますわよ? あちらには兄上方。ほら、叔父上たちもほとんどそろってますし、大臣たちや貴族たち、騎士団の主だった者たちの顔ぶれもあります。最強騎士デイン卿もいらっしゃるわ。皆様の前でよいところを見せて、わたくしの騎士に相応しいところを証明してちょうだい、レイ!」

「……恨むからね、ベリー」


 僕がジトッとした目を向けると、


「ええ、どうぞ。恨んでくださってけっこうですわ」


 ベリーは堂々たる態度で受け止めた。


「レイが晴れて『ベアトリクシーヌの騎士』となった後、ゆっくりと時間をかけて、なってよかったとあなたを喜ばせてあげる自信が、わたくしにはございますもの。恨みなんて、すーぐ忘れてしまうこと請け合いですわ」


 返事に困っちゃうような台詞を、臆面もなく言ってのけた。

 勝気にもほどがあるけど、ベリーのこういうところ、好きなんだよなあ。

 僕は弱いんだよなあ。


「……わかったよ。覚悟決めた」

「それでこそ、わたくしの騎士ですわ!」


 ベリーは満面の笑みで褒めてくれた後、


()()()()()()()()()()()()()()()


 一転、(まなじり)をキッと結んだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()


「よお、レイ。てっきりこのオレに怖気づいて、逃げ出すかと思っていれば、よくぞこの舞台に立てたものだ。そこだけ称賛に値するぞ?」


 エルドラは先に来て、中央で待っていた。

 彼もまた、()()()()()()()()()()()()()()()()

 どちらがより「ベアトリクシーヌの騎士」に相応しいかを決める闘いなんだから、女性を守りながら剣を交えるのが筋だってエルドラが主張して、ベリーが認めたんだ。


「まあ、レイ! 聞きまして、あの男の生意気口。あなたも何か言い返して差し上げなさいな」

「そ、そういうの、僕はいいから」

「なるほど。口ではなく剣で語り、あの不遜な男に思い知らせてやる、と。立派ですわね」

「そんなことも言ってないから!」


 僕はベリーの軽口にツッコみながら、感心させられていた。

 決闘の最中、ベリーにも危険が及ぶかもしれないのに、丸腰の彼女が軽口を叩く。それだけの胆力がある。


 決闘場の中央にいた最後の一人、審判役の騎士が改めてルールを説明する。

 観覧席のお歴々にも聞こえるような大声で、


「双方の合意の下、決闘には訓練用の刃引きした剣を用います! 降参、あるいはいずれかが戦闘不能になった時点で決着です! また、各々が守るべき貴婦人に、かすり傷一つでもついた時点で敗北が決定します! 如何なる状況からも、貴婦人を守り抜いてこそ騎士! 双方、改めて異存はございませんね!?」

「は、はい!」

「誓ってございませぬ」

「よろしい! ではこれも改めて、大公殿下の御前で誓っていただきます、ベアトリクシーヌ姫! たとえエルドラ卿が、御身のいと尊き肌に傷をつけてしまったとしても、これは決闘のうちのことであり、エルドラ卿に如何なる咎も及ぶことはない! 異存ございませんね!?」

「無論のことですわ! そのような卑怯な振る舞い、誓っていたしません! 父上、兄上、そして、お集まりの皆様におかれましても、よくよくご理解のほどをお願い申し上げますわ!」


 ベリーが気丈に宣言をして、観覧席では大公殿下が一同を代表してうなずいた。


「もっとも、わたくしはレイが絶対に守ってくださると、信じておりますけれども」

「責任重大だなあ……」


 小声になって気楽に言ってくれるベリーに、僕も小声で返す。緊張で声が震える。


 そしてその時、エルドラもまた〈光の号令〉を使って、僕たちにしか聞こえない心の声で話しかけてきた。


“よお、レイ。オレがつれてきた女を見てくれよ”


 釣られて僕は、エルドラの背中に隠れている女の人を、まじまじと見つめる。

 なんだろう。ドレスは着てるんだけど、貴婦人って感じがしない人だ。

 そして、エルドラの陰でひどく震えていた。


“こいつはな、我が伯爵家に仕える侍女だ。可哀想な女でな、病気の両親を支えるため、健気に奉公してくれている。今回も、おまえの剣で害されるかもしれない可能性を、承知の上で決闘に参加してくれた”

“ぼ、僕はそんなひどいことしないよ!”

“ほう。言ったな?”


 反射的に答えた僕に、エルドラはニタリと下卑た笑みを浮かべた。


“おまえはこの女を狙わないんだな? オレはこいつを守る必要はないんだな? 自分で言った言葉には責任を持てるよな?”

“…………っ”

“ちなみにこの女には、もし手傷を負ってオレの敗北になろうものなら、クビにすると言ってある。わかるか、レイ? おまえのせいで、病気の両親ともども路頭に迷うかもしれないんだ。もはや花でも売るしか、食いつなぐ道はないだろうな。くく、可哀想な話だよなあ?”

“エルドラ……。君って奴は……どこまで卑怯なんだ!”


 僕は強い怒りを抱かずにいられなかった。

 普段はそんなこと絶対にできない僕が、にらみつけずにいられなかった。


 だけどエルドラは余裕の態度で、小馬鹿にしたような笑みを浮かべたまま、


“言っておくが、オレは遠慮なくお姫様を狙うぜ? それも骨の一本や二本ですませる気はない。オレがその女の騎士になった後のことを考えて、躾けておく必要がある。オレの怖さを体で覚えてもらわなくちゃな”

“…………させないよ”

“あ?”

“させないって言ったんだ! 僕は君を正面から堂々と打ち負かすし、ベリーには毛筋一本ほども傷つけさせない!!”

“……吠えるようになったじゃねえか、レイ”


 エルドラが気に食わなそうに、すっと目を細めた。

 にらみつけてきた。

 でも、もう気おくれなんてしてられるか! 僕だって負けじとにらみ返す。

 視線と視線で火花が散り、決闘場のキナクサい臭いが立ち込めていく。


「それでは双方、ご準備を!」


 審判役の騎士が、右手を高々と掲げた。


 僕は訓練用の剣を両手で構える。


 エルドラは右手に剣。左手に盾。

〈鉄の胸当て〉しか装備してない僕と違い、物々しい甲冑姿。

 さらには――


「神霊プロミネンスよ、我に加護を与えよ!」


 自分自身に強化魔法をかけて、〈ステータス〉を上昇させたり、〈防御力〉や〈回避力〉を高めていく。

 それも「準備」のうちに入れていいわけ? って思うけど、もう今さらこの程度の卑怯じゃ、腹も立たないな……!


「準備完了だ、審判殿」

「それでは――決闘開始!」


 審判役の騎士が、掲げた右手を振り下ろした。


 僕とエルドラは全く同時に、互いに向けて突撃した――

読んでくださってありがとうございます!

そして、ついに4章も21話に突入いたしました!!

ここまで書き続けられたのも、応援してくださっている皆様のおかげです!!

評価やブックマーク等もしていただけると、なお励みになります!

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どちらもぜひご一読&応援してくださるとうれしいです!
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