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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第四章  僕に〈命令しないで〉と強がる光の戦士編

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第十五話  スキル会得

前回のあらすじ:


レイはマグナスの提案で、強力なスキル群を会得することに。

〈タウンゲート〉を抜けるとそこは、一面の海景色だった。

 カジウ海域特有の、目が覚めるような青い水面に、気持ちがいいほど白い砂浜。

 たちまちレイが瞳を輝かせる。


「すごい! すごいです、マグナス! 本当に違う場所とつながっているんですね! しかも、これ海ですか!? これが海ですか!? 僕、初めて見ました!」


〈光の戦士〉に選ばれ、過酷な戦いの中で日々成長し、大人びていくレイだが、本来はまだ十四歳の少年だということを思い出させてくれる。それほどのはしゃぎっぷりだった。


「少し、浜辺で遊んでいくか?」

「えっ!? い、いや、でも、時間がもったいないですし……」

『どうせ待ち合わせ時間まで、今少しございますから。たまには息抜きをいたしましょう』

「そ、そうですか……? いいのかな……。じゃあ! ぜひ!」

『決まりですね。ワタシが泳ぎを教えて差し上げます』

「いや、さすがにその時間はないと思うぞ」


 俺たちはそんな風に、波打ち際で水と戯れつつ、しばし時間を潰した。


 待ち合わせ相手とは、ネルフの港町で昼食をとる予定だった。

 俺が今まで出会った中で、最高最強の前衛職だ。

 実にレベル26の〈剣士〉だ。

 

「遅れてすまない、マグナス殿。急に捕り物が発生してな」

「そんな謝罪は要らんさ、ロレンス殿。相変わらずの“法の番犬”ぶりに、むしろ安心した」


 約束の店に遅れてやってきた、カジウ海洋警察(カリオストロ)の隊長と、俺は席を立ち、堅い握手を交わした。


「マルム商会から使いが行っていることかと思うが――」

「ああ。オレの持つ全ての〈剣士スキル〉を、習得したい少年がいるそうだな」

「こちらがそうだ。レイという」

「は、初めまして、ロレンスさん! カジウにとんでもない剣士がいらっしゃると、マグナスに聞いて、教えを乞いに参りましたっ」

「マグナス殿の前では、どんな褒め言葉も霞むというものだがな」

「い、いえっ、マグナスもロレンスさんもどちらもすごいと思います! だってお二人で“魔海将軍”を討ち取ったのでしょう?」

『む。申し上げておきますが、ショコラも大活躍だったのですからね!』

「すみません! でも今のは話の流れで、別にショコラを蔑ろにしたわけでは……」

「はははっ、じゃれるのもいいが、自己紹介もすんだところで、食事としようか」


 俺はロレンスに席を勧め、


「ここは俺の奢りだ、遠慮なく食べてくれ」

「いや、そうはいかんな、マグナス殿」

「なぜだ?」

「オレは海洋警察(カリオストロ)だ。民間人から饗応を受けるのは、賄賂に当たる。ご法度だ」

「どこまでも“法の番犬”だな、貴殿は!」


 ささやかな食事くらいかまわんだろうにと、俺は苦笑を禁じ得なかった。


「今回は俺たちが世話になるのだ、それくらいは礼儀の範疇だろう?」

「それこそ不要な気遣いだな、マグナス殿」

「む……?」

「貴殿はこのカジウを救ってくれた。さらに世界を救う旅を続けている。その貴殿の要請ならば、カジウの人間は断るはずがない」


 ロレンスは断固としてそう言うと、レイに向き直って、


「そういうことだ。君はなんの遠慮も必要ない。オレが教えられることは全て教えよう」


 頼もしいことを言ってくれた。


 剣士という前衛職は、例えば〈戦士〉等に比べて、刀剣類しか装備できなかったり、対人戦に傾倒している代わりに、多彩なスキルを習得できる。

 特にロレンスは世界屈指の剣士だから、〈ファングスラッシュ〉、〈スラストラッシュ〉、〈フェイント〉、〈パワースラッシュ〉、〈ファルコンブレード〉、〈ファストムーヴ〉、〈ボーパルスラッシュ〉、〈ファントムブレード〉……等々、使用可能なスキルを数え上げると、きりがないほどだ。


 それら全てをレイには、見様見真似で習得してもらう。

 そして、さ(・)ら(・)に(・)そ(・)の(・)先(・)も(・)。


 本来、習得レベルに達していないスキルを、会得できてしまう者を森羅万象(システム)は、〈天才〉と定義している。

 ロレンスはまさにその天才だ。

 習得レベル27のはずの〈フラッシュブレード〉を、レベル23の時には既に習得していた。

 さらに、ロレンスは俺たちとともに“魔海将軍”を討つことで、膨大な〈経験値〉を得て、レベルが一気に26までアップした。

 それで本来は習得レベル31のはずの、〈ブルーライトニング〉まで会得していた。


 そして、レイは光の戦士固有スキルである〈万能学習・前衛〉によって、その天才の御業すら、見様見真似で習得できるのである。

 ロレンスはまさにレイにとって、最高の教師であろう。


    ◇◆◇◆◇


 カギを使い、裏口の扉を開けるとそこは、女帝の寝室であった。

 部屋の中央にドデンと鎮座する、御簾のかかった天蓋付ベッドは、十数人くらいいっぺんに寝ることができそうだ。


「失礼する」


 俺は一言かけ、お邪魔しようとするが、レイがおたおたしながら袖をつかんできて、


「本当に侵入していいんですか!? 女帝の寝室ですよ!? 女性の寝室ですよ!? はぁ……なんかイイ匂いするしっ」

『これは女性由来の香りではなく、単にお香を焚いているだけですよ、レイ様』


 だから遠慮しない、と謎理論を展開しながら、ショコラがレイの背中を押す。


 中にはこの部屋の主が、一人で待ち構えていた。


「久しいな、マグナス殿。壮健そうで何よりだ」


 アラバーナ女帝ファラ陛下が、ベッドの上、しどけない姿勢で寝そべっていた。


「あなたこそお元気そうだ。それにお顔の色もよい。統治が上手くいっておられるご様子だな」

「ふふふ、ラムゼイ(じいや)とクリム(ばあや)が有能でな。何かと楽をさせてもらっているよ」


 俺と彼女は一頻り、近況報告話に花を咲かせる。

 その後、初対面のショコラとレイが挨拶をする。


『ご尊顔に拝し賜り、恐悦至極に存じ奉ります』

「たっ、たてまちゅりますっっ」


 ショコラがスカートの裾をつまみ、恭しくも堂々と、レイはきょどきょどしながら名乗る。


「ふふっ。相変わらず貴殿のパーティーは、にぎやかなことだな?」

「ええ。おかげで孤独感に苛まれることもない」


 俺は心の底からそう答え、


「マルム商会から、使いが参内したことと思うが――」

「ああ、マグナス殿直筆の手紙を受けとった。熱烈な恋文、うれしかったぞ?」

「ええええっ、マグナス!?」

「ついに私の夫となり、ともにアラバーナを統べる覚悟をしてくれたかと思うと、私も胸が熱くなる思いだ」

『マグナス様!? まさか世界を救う使命を忘れて、この女と権力を!?』

「落ち着け、二人とも……。陛下にからかわれているだけだ」


 あとなショコラ、「この女」とか危ないこと口走るのやめような?


「ふふふ、軽い冗談だ。女帝ともなると、発言に責任が伴いすぎるのと、周りが遠慮をしすぎるのとで、他愛無いおふざけも言い辛くなる。まったく堅苦しいことよ」


 だから軽口を叩き合える会話に飢えているのだと、ファラ陛下は言う。


 俺がいくら寝室のカギを預かっていたからとはいえ、こうやってお忍びで会いに来た理由も、似たようなものだ。

 別に裏口を使わずとも、“魔王を討つ者”たる俺が、正当な理由で会いに来たといえば、最低限の手続きだけを経て、最優先で謁見を賜ることはできただろう。

 しかし、その「最低限の」手続きがもう、形式に形式を重ねる、面倒極まりないものなのだ。


 俺もファラ陛下も時間がない身だし、こうやってお忍びで、気楽に会えるならそうするに越したことはない。

 陛下と同性のショコラもいてくれるおかげで、遠慮もなくなったしな(もし俺一人であれば、さすがに女性の寝室に裏から入るのは躊躇われる)。


「して、マグナス殿。ラムゼイたちに、その少年を鍛えて欲しいという要望であったな?」

「ええ。彼らのスキルを吸収させてやりたいのです」

「よ、よろしくお願いいたします!」

「生憎とラムゼイたちは遠方の調査にやっていて、いま帝都(アラバン)にはおらぬ。だが、三日以内には帰ってくる予定だ。その後は存分に教えを乞うとよい」

「ご許可、いたみいる」

「いっ、いたみいりゅましゅっっ」


 俺は丁重に礼を述べ、レイが舌を噛みながら続く。


 伝説の冒険者だったラムゼイは今、凄腕の密偵としてファラ陛下に仕えている。

 さらには、かつて“憂国義勇団の六連星”を名乗っていた四人(ナディアとサリーマを除く)が、ラムゼイの下で働いているのだ。

 彼ら四人は国益に尽くすことを条件に、罪を減じられて、助命賜ったということだな。

 ファラ陛下からしても「毒を制すには毒」というわけで、無益に処刑するよりは、上手く使った方が万倍よい。


 俺の目当ては、その“六連星”たちのうち四人が持つ、戦闘スキルだった。

 例えば、バジンという男が持つ〈熱風剣〉。

 これはメイン職が〈盗賊〉で、且つサブ職として剣士も鍛えた者が習得できる〈疾風剣〉というスキルを、さらに重点的に磨き上げる(具体的には、1レベル分のステータス上昇をほぼ放棄する)ことで完成した、レア且つ強力なスキルだ。


 かつて皇太子ヘイダルは、“魔嵐将軍”ジャムイタンから得た森羅万象(システム)知識と、己の持つ〈人物鑑定〉スキルを駆使し、彼ら六連星たちを効率的に鍛えていた。

 だからこそ、バジンらは強力なスキルを開眼しているのである。


 そして、レイの〈万能学習・前衛〉は、それらの特殊な過程によって編み出されたスキルでさえ、見様見真似で習得できる。

 あたかも丹精込めて作られた農作物を、美味しくいただく消費者のように。

〈勇者〉同様、光の戦士がどれだけ反則的な職業(クラス)かという話である。


    ◇◆◇◆◇


 綿が水を吸うように、レイは強力なスキルを次々と習得していった。

 素直で真面目な彼の気質が、短期間での学習を助長した。


 俺が思うに、光の戦士たちが四人それぞれ別の力を持っているのは、各自の気質に根ざすところが大きいのではなかろうか?

〈万能学習〉スキルを持っているのは、四人の中でレイだけだ。


 そして、数々の強力なスキルを会得していった総仕上げに、俺たちはルクスン大公国の首都ルクスニールを訪れた。


「言うまでもないが、レイ。俺たちは決して振出しに戻ったわけではないぞ?」

「はい!」


 俺たちは意気揚々と登城する。

 事前にラクスタ王から賜ってきた書状を提示すると、最優先の配慮と最低限の手続きで、大公デベロンとの謁見が叶った。


「おお、よく来てくれた、“魔王を討つ者”マグナス殿よ! 宗主国たるラクスタ同様に、我が大公国も貴殿に最大の配慮と支援を約束いたす! 何より、我が国の光の戦士と貴殿が並び立つその姿を見て、余は興奮を禁じ得ない! どうか力を合わせて“魔弾将軍”を討ち、この国に平和をもたらしていただきたい!」


 大公殿下は上機嫌でそう宣言した。

 レイ以外の、光の戦士の顔ぶれがなくなっていることには、触れなかった。

 いちいち事情は詮索しないという、おおらかな態度なのか。

 既に“八魔将”のうち三将を討った男が、ルクスンにやってきたという事実に満足しきっているのか。

 俺の目には、ラクスタ国王と違って、やや軽率な物腰の御仁に見えた。


 まあしかし、頭が固い人間よりはやりやすい。

 俺は丁重に頭を垂れ、願い出た。


「賢明なる大公殿下に申し上げる。ルクスンの騎士の方々の武勇誉れ高きは、遠く北の大陸にまで音に届く次第。ついてはこのレイに、方々の薫陶をご教授願いたく」

「ほうほう、なんとそれほどとは!」

「ぼ、僕からもお願いします、大公殿下! 僕に騎士の皆さんのスキルを学ばせてください!」

「あい、わかった! よくよく見聞を広め、“魔弾将軍”を討つ一助としてくれい!」


 大公殿下は上機嫌のまま、レイがしばらく騎士団に交ざり、学ぶことを許可した。


 騎士が習得するスキルは〈ボディガード〉等を始め、仲間を守り、庇うものが多い。

 それをレイが会得してくれれば、俺たちのパーティーの戦力は跳ね上がる。

 いずれ“魔弾将軍”を討つ時の最終形として、やはり俺が後衛として魔法に専念し、レイが前衛として俺を守りながら戦うのが、やはり鉄板で強いからだ。


 ちなみにルクスン騎士が、他国の騎士より特別強いということはない。さっきのは方便だ。

 レイはルクスン人なのだから、どうせなら異国より自国の騎士から学び、知己を得た方がいいと考慮しただけ。


「レイ。しばらく王宮暮らしをして、しっかり学び取ってくれ」

「あはは……慣れない暮らしは、緊張しますね……」


 俺たちは大公の御前を辞した後、そんな風に話し合った。


「というか、マグナスも一緒に王宮暮らしをしてくれるのでは……?」

「意味がないからな。俺はその間、やるべきことがある」

「はあ……」

「レイががんばっているのに、俺だけ何もしていないというのは、情けないからな。今の君に相応しい、魔法の武具をゲットしてくるさ」

「本当ですか!? 期待してていいですか!?」

「無論だとも」


 俺は力強い声で請け負い、一旦、レイと別行動をとった。

 ショコラとともに、ルクスンを離れることにした。

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大変ありがたいことに2025年は三作品もコミカライズしていただきました。
どちらもぜひご一読&応援してくださるとうれしいです!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 『かつて“憂国義勇団の六連星”を名乗っていた四人(ナディアとサリーマを除く)が、ラムゼイの下で働いているのだ。』 この文章ではラムゼイの下で働いているのは四人ではなく三人ではありませ…
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