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8話 勇者

「何て事をしてくれたんだ!!」

何が?って思う人が大半だろう、なので順を追って説明しよう。

まず俺達は、いつもの様に喫茶店の接客をしながら間の空いた時間に畑仕事等をこなしていた。

すると玄関の方から大きな声が聞こえて来た。


「たのも~う!!」

「はいはい、どちら様ですか?」


俺は、手を洗いエプロンで拭きながら扉を開けた。


「貴様がユグルだな?」

「いえ、人違いです。」

パタン。 ガチャリ。


何故素早く閉め、鍵をかけたかって?

だって、あからさまにこの世界の住人じゃなかったんだもん。

豪華な鎧に輝いてる剣、こんな田舎で良い年したオッサンがマントをなびかせていたら間違いなく怪しいやつだよ。

フラニーのコスプレ仲間でもなさそうだし。


「おい! 閉めるな! 開けろ~!!」

ドンドンドン!!

「あ~もう、うるさいな! なんの様だ!」

「貴様が魔王にいらぬ事を吹き込んだんだろう! 何て事をしてくれたんだ!!」

「はて?」


それから30分程の時が流れ、詳しい話を聞く事となった。

「魔王が露店を出し、収益を上げ、魔王城を観光地区に変え、近隣住民と仲良くなってしまったじゃないか!!」

「良い事じゃない?」

「良くない! 俺は、勇者だ!!」

「……?」

「分らんのか!? 勇者とは、悪を滅する存在! そして魔王は、勇者にとって最も倒さなければならない存在だ!」

「いや、真人間?になったのなら倒す手間が省けて良いのでは?」

「良いわけあるか! 倒すべき存在が真人間になったと言う事は、俺が無職になったと言う事だ! どうしてくれるんだ!!」

「しらねぇよ!!」

「しかも、無職になった俺は、好意を抱いていたエクレアに最後のチャンスと思い、告白をしたんだがボロボロにフラれてしまったじゃないか!! あ、エクレアしってるよな?プリーストのエクレア!」

「それは、関係ないだろ!?」

「何がいけなかったのか俺には、さっぱりわからない!告白は、完璧だったはずなんだが。 聞きたいか? 俺が何て言ったか聞きたいか??」

「いや、結構です。」

「聞くが良い! このまま行ったら俺は、路頭に迷ってしまう! お前の教会の資金で俺を養ってくれ!!」

「当たり前だ!! 勇者以前に人として最低だよ! 何故それで行けると思ったんだ!!?」

「エクレアからも「前々から思っていたんだけどアナタって最低ね。 何でアナタなんかが勇者なの?」って言われたがさっぱり意味がわからん。」

「いや、わかれよ!!」


どうやらこの自称勇者は、極める方向性を間違っている様だ。

解ってくれただろうか?

俺には、さっぱりわからない。

ちなみに口調は、強気の自称勇者だが今玄関前で土下座をしている。

何故かって?

最初の「何て事をしてくれたんだ!」の時にいきなり殴りかかって来たからとっさにガードして目を閉じている間にフラニーがボッコボコにしてくれていたからだ。

俺の妻TUEEEE!で助かった。

命がけの剣と魔法の世界だから気性が荒いのは、分かるがいきなり殴りかかって来るとは、本当に勇者かどうか疑わしいものだ。

それから力じゃかなわないと悟った自称勇者は、口で勝負に出たわけだ。

次第にフラニーが不機嫌になって行き、無言の威圧に自主的に正座スタイルへと変わって行ったのだ。

それでもこれほど言動が衰えないのは、ある意味尊敬できるのかもしれない。


「だいたい、他にも魔王は居るんだろ? それに魔王以外にも強者がいると聞いた気がするが?」

「俺に死ねと?」

「はぁ?」

「あの魔王は、俺のスキルと相性が良く、レベル差をものともせず倒せる気がしたんだ!! それに近くに住み家があった! 他の魔王は、相性が悪い上にかなり離れた場所に住んでいる。 そしてその道中は、危険がいっぱいだ!! 死んだらどうする! 俺は、勇者だぞ!?」

「アンタ、勇者だろ。」


なんか、こんな勇者が配属された異世界住民が可哀想に思えて来た。

関わりたくはないが神様がいるのなら抗議文を送ってあげても良いと思えてくる。


「ハァ~、何でアンタ見たな人が勇者になれたのか不思議で仕方ない。」

「ふっふふ、聞いて驚け? この勇者の聖剣は、とある商人が格安で譲ってくれたのだ!」

「騙されてんじゃね~か!!」

「何を言う! これは、国王も認めてくれた伝説の聖剣だぞ!!」

「国王も節穴アイだったか。」

「ふっふふ、そこまで言うならこの剣が本物かどうか、その女への恨みを晴らす事で証明してみせよう!!」

「ゲスすぎるだろ!!」


さっき、ボッコボコにされたお返しとばかりに素手のフラニーに聖剣持ちの自称勇者が切りかかる。

パキ~ン!と音を立てて勇者の聖剣?は、根元から折れていた。

自称勇者は、次第に青ざめて、震え出した。


「ば、ばばばば、バカな~!!」

「……フラニーなにしたの?」

「刀のある国で刀折りの技術を持ってないと何かと物騒でしょ?♪」

「お前はお前で何処めざしてるの?」

「…聖剣が、…聖剣が、このままじゃ、俺の地位と名誉が~!!」

「いや、ないから。 もう帰れよ。」

「そうは、いかない!!」

「え?」

「…大賢者に頼んで送ってもらったからな! 片道切符のな!!」

「……。」


ひょっとして、その大賢者は、このゴミ(自称勇者)を何とかして処分したんじゃなかろうか?

可能性大の疑惑が頭を過り、何ともいえない気分になった。


「…なぁなぁ、俺が勇者で……

 実は、俺って……

 弟子にしてや……」


ウザイ!あまりにもウザすぎる!!

この後、簀巻きにして、魔王が引き取りに来るまで隔離しておいた。


実に酷い勇者が誕生しました!

書き直せば書き直すほどに悪化して行ったので救いようがない勇者だったのかもしれません(/・ω・)/

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