第二話
「そういえばシュウはどこから来たの?このスラムを知らないってことは上の方の人だと思うんだけどそんな身なりじゃないし」
「あぁ実は俺には記憶がない
辛うじて覚えてるのは名前と日本から来たということだけだ」
だがこの日本がファリナに通じるのか怪しいところだ
微かに覚えてる日本の光景はこんな摩訶不思議なもので囲まれている場所じゃなかったと思う
「日本?日本ってあれだよね」
ん?ファリナは日本を知ってるのか?
「なんだ日本を知ってるのかどこにあるんだ?」
するとファリナは少し考えた様子で答えた
しかしその答えは俺が望んでいた答えとはかけ離れていた
「日本って御伽噺で出てくる古代人が暮らしてた土地でしょ?もう何千年前に滅びたっていう」
「は?」
日本がもう滅びている?
そんなはずはない…と思う
「私も御伽噺で聞いたってぐらいだからそれが本当なのかというか本当に日本って場所があったのかも怪しいって言われてるよ」
俺は何かの冗談かとファリナの表情を見るが彼女は真剣な顔で話しているのでこれが冗談ということではないようだ
ならば日本は本当に滅びているのか
しかも滅びたのは何千年前?
じゃあ俺はどこから来たんだ?
でも、覚えている俺は日本にいたんだと
何故かそれだけは分かるんだ
「俺はそれでも日本から来たんだと思う…
多分何かしらの方法でそれが知りたい
とりあえず日本のことを調べる事はできないか?」
ファリナは少し考えた様子で答えた
「う〜んできない事はないけど調べるのもタダじゃ無理だよ?このスラムは何を頼むのもお金がなくちゃ」
確かにタダで調べてもらえるなんて
そんな都合のいい事はないなと思って俺はどうしたらいいか考えていると
「シュウは何か得意な事はある?戦闘とかは出来なさそうだけど足が速いとか手先が器用とか」
彼女がそう聞いてきたので
何か思い当たる事がないかと考えてみるが
「特にないな」
特になかった…
「じゃあお届屋とかどう?頼まれたものを運んだりする仕事だよ?ある程度人の縁は必要だけど」
「人の縁…」
ちょうどその人の縁とやらで痛い目にあったところだったのでどうしようかと悩んでいると
「とりあえず目先のお金はないとダメだよ
そうじゃないと
このスラムの果てじゃ生き残れないからね」
確かにお金がなくて路地で一晩を明かすなんて
命がいくつあっても足りない
先ほどの経験のせいで痛いほどの説得力があった
「そういえばファリナは?」
「ん?私?」
「ファリナは何をしてるんだ?」
するとファリナは一瞬黙り込み
その場の会話が初めて止まった…
だがその一瞬の静寂が嘘のようにいつもの様子に戻ったファリナは
「そうだね私の仕事は〜」
その時だった
バンッ!
教会の扉が壊れんばかりの勢いで開いた
俺とファリナは入り口を見ると
黒服の男とその周りに明らかに武装した兵士達がゾロゾロと扉から入ってきた
「お邪魔…だったかな?」
と黒服の男が言った
「あれはなんだ?」
と出来るだけ小さな声でファリナに聞いた
「あれはネブラコーポレーションの連中
コーポレーションなんて言ってるけどほとんど軍みたいなものだよ。でもなんであいつらが」
「まぁ聞きたまえ何も手荒な真似をするつもりはない
ただ黙って拘束されてくれないか
上からの指示なのでね」
と黒服の男が言うと
「あら、本当に拘束されるだけ?そのまま帰らぬ人にされるんじゃないかしら」
ファリナが挑発するように黒服に答えた
今まで話してきたけど
こんなに挑発的な態度をファリナが取るなんてよっぽど嫌われてるんだなと思った
「そんな事はない。ただ上の指示だ従わない場合は」
「なるほど実力行使ね
いつもと変わらないじゃない」
ファリナはそう言うと
いきなり兵士たちに突っ込んでいった
「はぁぁ!」
彼女は一気に間合いを詰めいきなりの先制攻撃に動揺している兵士たちの間に入り次々に蹴りなどを浴びせた。そこで俺が驚いたのがファリナは引き締まっているが決して筋肉質ではないはずなのだが蹴りを入れられた兵士たちはものの見事に後方にある壁まで吹き飛んでいく
すると一人の兵士が叫んだ
「こいつネブルズか!」
ネブルズとはなんなのだろう
だがそんな叫びも虚しく彼女の鮮やかな蹴りが見事に顔面に入った
あの動きは常人の域を超えていると一目でわかった
そんなことを思っている間に粗方の兵士たちを彼女はものの数十秒で片付けてしまっていた
「さて、なんでここを狙ったの目的は」
ファリナが黒服に威圧的に聞いた
「なるほど、ネブルズか
兵士たちでは荷が重いか」
黒服の男が独り言のように言った
「話、聞いてる?」
ファリナが黒服に聞くが
「では、私ではどうかな」
と黒服が言った瞬間
黒服の姿が消えた
「どこ!」
彼女が黒服の姿を見失って辺りを見渡していると
「ファリナ後ろだ!」
とっさに俺は叫んでいた
その声と同時に黒服の男が背後に現れファリナに拳をぶつけた
飛ばされたファリナは受け身をとり倒れ込みそのまま動かなくなってしまった
だが、辛うじて意識はあるのか俺に
「逃げて」
と微かな声で訴えていた
だが、俺は自然と黒服の男と対峙するような姿勢になっていた
この時俺はなぜか守らなきゃと逃げるなんて選択肢を考えてもいなかった
「守らなきゃ」
それだけ俺は考えていた
「なるほどやはりお前には見えているらしいが
見えているだけでは何も出来ないだろう
手荒な真似はするなと言われていたが仕方ない
少し気を失ってもらう」
ここまできたら逃げられない
逃げようとも思わない
守らなきゃ
やらなきゃやられる
今度こそは
そして俺にとって初めての戦いが始まろうとしていた
まだ説明の段階です




