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ルーンブレイド  作者: さくらんぼえっくす
8/31

 -7- -父と娘-

親子の絆や葛藤をもう少し細かく描写したかったのですが、

いかんせんテクニックがありません・・・


「あの時私はまだ子供だったから、お母さんの死と私の病気が関係あるだなんて思いもしなかったわ! でもそうなんでしょう?! 答えてお父さん! あの時二人でここに来て、お母さんが古代ルーン魔法の契約をしたんでしょう!? だから私の病気が治った、そうなんでしょう!?」



 ティナは、床に零れ落ちる大粒の涙を気にも止めず、レオナルドに問いただした。




 レオナルドは苦渋の表情を浮かべ、ゆっくりと屈み、静かに口を開いた。


「そうだ、ミネルバと二人で相談して、お前の病気を命に代えてでも治すと決めた」


「私はそんな事望んでない!!」



 ティナはそう叫び、レオナルドの肩を何度も何度も叩きつけた。


「聞けっ! ティナ!!」


 レオナルドはティナの両腕を掴み、発作の様なティナの行動を止めた。


「お前は私達二人の宝だ!! 私達二人の全てだ!! 本当はもっと幸せな時代にお前を産んでやりたかった。本当はもっとお前を丈夫で健康に産んでやりたかった。しかし、故郷は他国に支配され、お前は歩くことも出来ない程の重い病気に掛かっていた。それでもお前は、文句一つ言わずいつも笑顔で私達二人に幸せをくれた。そんな愛する我が娘の為に、命を懸けて何が悪い!! 私はミネルバに、良くやったと褒めてやりたい!! 私も、ミネルバも、お前を救ったことに一片の悔いも無い、自分が愛する者の為に、命を懸けたミネルバは、最高に幸せだったのだ、判ってくれティナ!」


 レオナルドは訴えかけるような表情で、ティナに伝えた。


「うっ、うっ、お母さん…… お母さん……」


 ティナはその場で泣き崩れた。



「お前が怒る理由は判る。真実を隠していたお父さんが悪かった。しかし何故だ! 何故お前が契約する必要があった!? ネオは私の親友だ、私が命を懸け助けるべきだと判断しただけで、お前が命を懸ける必要はどこにも無いんだ!」


 レオナルドは、ティナの両肩を持ち、何度も揺すった。


「お父さんが命を懸けて助けたい人なら、私にとっても同じよ! 命を懸ける価値のある大切な人だわ! それにお父さん、私の気持ちを全然判って無いじゃない!」


 目を真っ赤にしてティナは叫んだ。


「お母さんが亡くなって、私がどんな気持ちだったか解かる?私は心が半分無くなったの! それでも生きていたいと思うのは、お父さんが居るからに決まってるでしょ!! お父さんまで死んでしまったら、私はもうこんな世界で生きていたくない!! 一人ぼっちで生きていたくない!! 嫌だよ…… 一人ぼっちは嫌なの!! 私を一人にしないでお父さん!! 傍に居てよ!!うっ、うっ」



 ティナは父親を見つめ、大粒の涙をぽろぽろと流した。



「私が生き残っても、お前が死ぬんだぞ!!」


 レオナルドは、ティナの取った行動の結果を伝える。


「お父さんが死ぬよりはいいよ!! ネオさんを助けないって選択肢が無いのは、今の国の現状を嫌と言うほど見てきたから、私も解かってる!! だったら私が助ける!!!!」



 ティナは命一杯出せる声で叫ぶ。



 ミネルバが死んでから、ティナはほとんど涙を見せることは無く、いつも気丈に振舞っていた。しかしそれは、自分が泣いてばかりだと、父が困ると思っていたからだ、そんな強い彼女だったが、父が自らの命を絶とうとしている様を見て、今まで溜まっていた感情のタガが外れ、まるで子供の様に泣きじゃくった。




 レオナルドは、ノアルで苦しむ民の為に、そして何より、親友を救う為に、命を捨てる覚悟でここまで来た。しかし其処には何よりも大切な、娘の気持ちを置き去りにしていた事に気づいた。


 レオナルドは自分を責め、悔いた。ティナとはそういう娘であったのだと、忘れていた。父親が親友の為に命を捨てるなら、自分が変わりに命を捨てる。そういう行動をとる娘だったと、忘れていた。


 そして、レオナルドは、ティナがこの世を去る時は、自らも命を断つと決めた。



「すまん、ティナ…… お父さんが間違っていた。お前を一人にしては駄目だったな」


 ティナの肩を優しく叩く。


「お父さん!」


 二人は抱き合い、涙が枯れるまで泣いた。




 それから一時間程泣いていただろうか、泣くだけ泣いたティナは、もう戻れない道に自分が立っていることを自覚した。そして、前を向いた。


「行こう! お父さん! 早くネオさんを助けに行かなきゃ」


 ティナの顔に迷いは無かった。


「判った、行こう」


 レオナルドの顔にも、もはや迷いは無かった。



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