60話 ウーラとエドガーの作戦
「なあ、ウーラの兄貴よ。大丈夫なんだよな、俺にはもうあとがないんだ。」
「心配するな、エドガー。お貴族さんがよ、成功したら褒美をくれるって言ったんだ。バレなきゃ、だかな」
「まぁな、カイチェアだったか?小細工すんのも気が引けんな。ガキが痛い思いするのは気が引けるが仕方がねぇ、やるしかねーしな。お上様には俺らみてーな荒くれ者なんてどうなろーが関係ねぇみたいだがよ、俺たちにもよ、家族ってもんがあるんだ。ウーラの兄貴は女房、子ども拉致られるしよー。俺はたった一人の妹と病気の母親が拉致られんだ。やりたくなくてもやるしかなかったんだ、畜生っ。」
「しかし、ひでーよな。買ってすぐにカイチェア、アレに見えない細工してよ、壊れちまったって難癖つけろってな。」
「あぁ、壊れたイス返却しねーでよ。壊れてるのを見せるだけだ、確認のためによ。自分らが処分するって渡さねーでよ。あれ、細工バレねーようにするために渡してねーんだろ?」
「ああ。だな。俺らも躊躇ったのは最初の2、3回くれーだな。前もって頭に怪我してる2、3歳のガキ連れてってよ、大人の前で黙っていればパンくれるからっていやーついてくるしな。変なこと言わねーようにパンたべさせてな。で俺たちは、ガキがお前らのイスに座ったらイスが倒れた、不良品だ、怪我したからって治療費出せってな。」
「あぁ、騒ぐだけで金貰えるんだから楽な仕事だぜ」
「連れてくガキのケガも、あれ、ワザとだろ?」
「あぁ、別んとこにいるガキにまたパンを渡して、ちっちゃいガキをワザと転ばすんだからよ」
「ありゃ、治療費なんてたかが知れてるさ。だかよ、壊れやすいイスを売ってるって評判が出回ったらどうだっ」
「そいつは、売れなくなってくな。扱ってる店の評判が落ちるしな、1番は、カイチェアを作ってる親方の評判が落ちるな。」
「俺たち、いっぱいお世話になってよ、育ててくれた親方を悪者にしちまってよ」
「ま、過去のことだ。俺たちは金に困って親方の金盗んじまった。それがバレて親方の弟子って立場も、親方の家からも追い出されてよ。それからは転落、奈落の底に落ちて、荷馬車を襲う荒くれ者に成り下がっちまったんだ。もう、どうやったって、陽の当たる世界になんざ戻れねーよ。」
「女房、子どもには罪はねぇ。あいつら救う為には、人殺しでもやるっきゃねーだろ。それがなんだ、ただ詐欺まがいの事で済んでるんだ、可愛いもんだろ」
「だな。明日はまた《《仕事》》だな。またいつものように、イス壊れたってガキ連れて騒ぐだけだ。それだけの為に、騒ぎをおこす俺たちと怪我役のガキに、ちょいと良いとこに見える服まで用意してくれるんだからな。毎回変装までしてな。金ある貴族が何考えてるか理解できねー」
「お上の考えてる事は、俺らには分からねーよ。ただ仕事するだけだ。」
「な、ウーラの兄貴、親父はまだ戻らねーのか?」
「あぁ、最近お気に入りの女のとこだろーよ。自分だけいい思いしてよー」
「あぁ、でも親父には逆らえねー。逆らっちまったら、人質のアイツらも、俺らもすぐやられちまう」
「おぅ、逆らわねーこった」
「ルーク隊長、見張りは外に10人はいますね」
「そうか。」
「まずは様子を見ろ。誰かが出入りするかもしれん。今はまだ静かに見張るだけだ」
「承知!」




