2話 前世の最後
ボクには前世の記憶がある。
これは、ボクの2度目の人生だ。
前の人生。
ボクは、地球、日本で生まれた。
名前は下門快斗。
父はサラリーマン、母は専業主婦。
兄と妹がいる、ごく普通の家庭だった。
兄は父と同じくサラリーマンとして働き出し、妹、美緒は大学1年に入学したばかり。
我が家は普通の仲の良い親子だ。
ボクは兄と妹に挟まれていたけど、両親はボク達3人を分け隔てなく愛情を持って育ててくれた。そんなボクは大学3年に進級し、専門課程に進んだところだった。
今までのこと、全部過去形なのは実際過去の話、いや前世の事だから。
大学帰り道。
交差点で信号を待っていた。
そのとき――
右側から車が突っ込んできた。
不思議なことに、
その瞬間、世界がスローモーションになる。
運転手の顔が見えた。
真っ赤な顔をした中年の男だった。
ボクの体に強い衝撃が走る。
ボクは宙を舞い、頭から地面に落ちていった。
ガン――って大き鈍い音がして、周りでは女性の「キャー!!!」って声。
「おい、男性が車にひかれたぞ」
「誰か誰早く、救急車だ、警察を呼ぶんだ」
「119番!!!110番!」
「おい、君、大丈夫か?」
「あー、これ、やばくね?死んだ?」
だんだん周りの声が聞こえなくなってきた。
頭が痛い。
生暖かい体液が流れている。
……ああ。
ボクは、死ぬんだな。
意識が遠くなる。
うっ………身体が動かない。
その時に浮かんだのは
父と母、兄と妹の顔だった。
「みんな……ありがとう」
それが、ボクの最後の言葉だった。
声にならない声を発するのがやっとだ。
だけど、事故の騒ぎの音で
ボクのありがとうは――
誰にも聞こえていないし、届いてない。
そして、ボクは下門快斗としての人生を終えた。
ふと、誰かに名前を呼ばれた気がした。
「快斗、快斗、目を覚ましなさい。」
「起きてご覧、目を開けるのよ」
目を開けると、
和装のような服を着た女性が立っていた。
……誰?
「だれ?」思わず声が漏れる。
「ふっふっ、私は、女神よ。」
女神だって?
「あなたの魂を今ここに留めているの。」
女神が何かを言っているけど、今は理解できない。
……いやいや。
「本当はあの世に行ってしまうはずだったの。」
……まさかぁ。
「あなたの魂を、私の権限でここに留めているのよ」
事故のあとに女神って――
テンプレすぎない?




