162話 セバスとマールの正体&私は早くない
「お前たちエルフが歳を取るのがゆっくりなのは知っている。私が歳を取っても、この命が終わりを告げても、まだお前たちは生きてるだろ?どうか、これからも私たち家族を、そして子孫たちも、見守ってくれ」
ダウニー様は、悪人ではありません。大事なことをちゃんと分かっていらっしゃるから今日の小言はこれまでにしましょうかね。カイト坊ちゃんを寝かせるために静かにしましょうね。
「はい、了解しました。では、カイト坊ちゃまが目覚めましたら、お伝えします。」
んーーん、よく寝たかもー。
お腹すいたー。
「坊ちゃま、起きましたか?お昼も食べてないので、お腹空きますよね、もうすぐ夕食のお時間ですよ。食堂に向かわれますか?」
「うん」
ボクはかなりスッキリして、家族みんなでご飯を食べた。今日のご飯も美味しい。
「カイト、調子はどうだ?」
「うん、問題ないよ」
「そうか、では、デリベリのニコイチを作ろうか?」
「うん」
ボクはパパとママ、マール、ゴードン、カマチョが見守る中、ベリデリのオス、2羽目を誕生させた。
コッコ、コッコッコッ
鳴いている新たなベリデリ。
「カイト、これは(食べて)いいんだよな?」
「うん」
「ゴードン、明日、お昼にいただくとするぞ」
「分かりやした。明日、作るでさ。さて、どんな料理にしますか、坊ちゃん?」
「もも肉は塩だけ揉みこんだもの、塩とガリガリクゥーを揉みこんだもの2種類を焼いてね。あと、むね肉は茹でて余熱で火を通してね。刺して肉汁が出なくなったら大丈夫、それを薄く切って、ガリガリグゥトマートゥソース作って添えてね。骨はスープにするよ。卵をといてスープの仕上げに溶き卵を回して。」
「はい、分かりやした。」
「明日が楽しみ~」
生き物の命を頂くんだ。
可哀想だと思っちゃうけど。
でも、食べなきゃいけない。
ありがたく頂くよ。
「さぁ、ご飯も済んだ。また明日だな」
「さあ、アマナ、私たちも行こうか、少し話がしたいんだ」
「分かったわ。では、カイくん、アリ、明日ね、おやすみ」
パパとママはボクとアリの頬っぺにそれぞれキスを落としていく。
「パパ、ママおやすみなさーい」
「ママ、おやすみなさーい、パパもー」
アリちゃん、パパはついでなのかな?
ちょっと複雑そうな顔でパパはその場を後にした。
「アマナ、話がしたい、良いか?」
「あら、いいわよ。」
「その前にだ、アマナ」
ぎゅ、と抱き寄せる。
アマナは少し驚いたように目を瞬く。
「……今日のお前、可愛すぎてな。私が理性を保てるか自信がない」
「ふふ、それなら安心して崩れていいわよ?」
その瞬間、昼間のベリデリが脳裏によぎる。
…いや、違う、比べるな私!!
(落ち着けダウニー……あれは鳥だ。私は鳥ではない。私は辺境伯だ。誇り高き紳士…紳士…紳……)
「……アマナ、頼む。今日は私が負けるかもしれん」
「負けてもいいのよ?むしろ大歓迎」
「はは、なら全力で挑むぞ」
――扉が静かに閉まり、夜がゆっくり更けていった。




