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転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件  作者: 想いの力のその先へ
第二章 19歳 フェネクス辺境伯領と辺境伯騎士団

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七十九話


 年は明けたが、まだ肌寒い今日この頃。俺は執務室の窓から降り積もった雪を眺めていた。はぁ、と漏れたため息が白く染まる。


「ふぅ……。この景色が綺麗、だと思えるようになったのは前進だな」


 眼下に広がるきゃっきゃっ、とはしゃぐ子供たち。あるものは雪合戦で遊び、あるものは黙々と自分の身の丈はありそうな雪だるまを作る光景。それを見て呟いた。

 かつての寒村であれば、この積雪は間違いなく死神の鎌だった。だが、農業都市――最近は鉱山の稼働も本格的に始まった――から採掘された石炭。

 それにここからもたらされた新鮮な木材を加工して作られた木炭によって人々が暖を取るのに困らなくなった。

 これはまごうことない進歩、といっていいだろう。


 ……ただ、凍死者などが出なくなったことで、別の問題が生じたりもしている。

 とはいえ、それはこちら。フェネクスの()()が原因、というわけでもなく――。


 ――カァン、カァン、カァン。


 外壁に設置された物見台の鐘がなる。我がフェネクス騎士団の帰還の合図だ。


「帰ってきたか……。ならば、そのうち報告が来るだろうな」


 俺は帰還した騎士の報告を待つ。

 そもそも、なぜ騎士がフェネクスの外にでているか。

 結論から言えば、これは単純にモンスターの間引きに行っていた。

 なにしろ、凍死者。それに秋の実りが増えたことによる餓死者が出なくなったことで、フェネクスの領民の数はうなぎ登り。


 そして、それはモンスターにとっても獲物、食糧が増えたことを意味する。

 さらに言えば冬の森に食糧なんてあるわけもなく、結果としてモンスターは食糧を求め、人里へ降りてくるようになった。

 今回の騎士団出撃はその水際防御、という側面もあるわけだ。



 ばたん、と部屋の扉が乱雑に開けられる。どうやら報告が着たようだ。


「坊っちゃん、失礼しますぞ!」

「せめてノックくらいしないか、アスガル」


 部屋に響くビリビリと震えそうな豪放な声。報告に来たのはフェネクス騎士団団長のアスガル。我が股肱の臣がひとりだった。


「それで、問題は?」

「えぇ、えぇ。何の問題もなく順調でしたぞ! もはや、モンスター討伐程度なら問題なく行えるでしょうな! ただ……」

「ただ……?」

「坊っちゃん。メルのこと、急ぐ必要があるのですか?」

「なんだ、その事か」


 俺は年が明けてから、アスガルへメルも従軍させるように申し付けていた。

 そして、今回がメルの初陣だったわけだが……。


「なにか問題が起きた、とでも……?」

「いえ、問題は……。あの娘は筋がいい。新兵の恒例が起きただけですぞ。って、そうではありません!」


 執務机を挟み対峙していたアスガルがばんっ、と机を叩きこちらへ身を乗り出す。

 なぜ、メルをそこまで急いで戦場へ送るのか、か。

 話さなければ、アスガルも納得すまい。


「アスガル、領内に流れる噂を知っているか?」

「噂、ですか? もしや、坊っちゃんとエレインさまの件ですかっ!」

「そっちじゃねぇよ! ……というか、それは単なる事実だ」


 アスガルが言っているのは俺とエレインの婚約。そして、正室に内定している件だ。

 だが、今回俺が指した噂はそれじゃない。それと同じように領民たちの間で噂が広がっているのだ。

 俺がメルを、フェネクスの名士であるデミオの孫を側室として迎え入れる、というものだ。


 俺がエレインとの噂を否定したことで、アスガルもようやくなにを言いたいのか分かったようだ。いかにもな不機嫌面になっている。


「あぁ、あれですか……。まったく、どしがたいものですな! メルは騎士になろう、と励んでおるというのに、下世話な!」

「下世話、ではあるがな。それ以上に領民は安心したいのさ」

「安心、でありますか?」


 アスガルは訳が分からないと困惑顔になった。しかし、続く俺の言葉に納得することになる。


「俺が転封(てんぽう)する。その可能性を考えてるのさ。そのとき、側室とはいえ、土地の名士の親族を迎えていたらどうなるかな?」

「……なるほど、むしろ関係を強固にしろ。と命じられる可能性は高いですな」

「そういうこと」


 そも、転封(てんぽう)とはなにか。

 小難しい話を抜きにすると、簡単に言えば領地替え。もし、中央に家があるなら、単身赴任地の変更、といえば分かりやすいかもしれない。 


 なにしろ、中央から俺の陞爵。昇進話の噂が流れてきている。それがある以上、領民が俺の栄転。別の赴任地へ行く心配するのは必然だ。

 ただ、俺としてはこの土地。フェネクスが召し上がげられる。というのはあり得ないと判断している。

 それは一重に、ここに王族奴隷として救出されたアンジェリカ殿下、ミレイユ殿下がいるからだ。

 彼女らがここで匿われている以上、下手なやつにここを任せるわけにはいかない。ゆえに加増はあっても転封はない、というわけだ。


「かといって、無責任な噂で公爵家との間に角が立つのは避けたい」


 ただでさえ、先日の一連のエレイン関係で失態を演じているんだ。これ以上の失点は絶対に避けたい、というのは当然。


 まぁ、そもそも。俺なり閣下なりがエレインへ伝えておけば良かったんだが……。まさか、閣下も俺も、相手がエレインへ伝えているだろう、と考え、結果。エレインへの通達ミスが起きている、なんて夢にも思っていなかった。

 原因が判明したあと、俺と閣下が正座して姉上とエレインに詰められている姿は威厳もなにもなかっただろう。ある意味、イクリルくんへの反面教師となれたのが唯一の収穫だろう。というか、そう思わないとやってられない。


 とにもかくにも。

 話は脱線してしまったが、俺は今回の間引きの成果。

 そして、メル関係でなにが起きたのか。詳しく報告を聞くのだった。

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