⑭
「海斗」
「お疲れ、凛音」
あれから、15年が経っていた。
カレーを混ぜる海斗の背中に手を回して、抱き締める凛音。
「お腹すいた」
「もうすぐ、出来るから着替えておいで」
「わかった」
凛音は、服を着替えて戻ってきた。
「海斗、検査結果どうだった?」
「ウイルスの増殖は、止まってるみたいなんだよ。ただ、感染させる能力は今だあるんだって」
カレーをダイニングテーブルに起きながら海斗は話す。
「そうなんだね」
「サラダも食べるんだよ」
「また、パイナップルはいってる」
「いいじゃん」
「海斗の為だからいいけどさ」
「うん」
5年前、パイナップルに増殖を食い止める働きを見つけられたと関口から連絡を受けたのだった。
海斗は、言いつけを守る子供のようにパイナップルを毎日食べている。
そして、関口からアレルギー症状を押さえる薬を月に一回渡されている。
「「いただきます」」
海斗と凛音は、カレーを食べ始める。
「ニュースでさ!Sウイルスが、使えなくなったってやってたよ。」
「見た見た!人類にとって必要のないウイルスだってね」
「焼却しろって、話だったね」
Sウイルスは、人間の尊厳を破壊していると10年前から裁判が行われていた。
今年に入って、やっと決着がついたのだった。
Sウイルスは、二度と使用しない事という判決がくだったのだった。
「ますます、少子化になりますねってアナウンサーが言ってたよ!」
海斗は、さっき見たニュースの一部を話した。
「いいんじゃない!少子化になったって」
「人類は、増えすぎたって話?」
「そうそう!昨日のアナウンサーが言ってたじゃん。Sウイルスのせいで、人類が増えすぎたんだって!」
「増えるの願ってたんじゃないの?」
「確かに、そうなんだよね。願ってたけど、思ってたより増えたって話じゃない?」
「人間って、わがままだよね」
「確かに、そうだね」
海斗とこんな話が出来るのは、あの日凛音が、あの液体を飲んだお陰だった。
「海斗」
「どうした?」
「僕は、海斗を知ったのに、また待てを言われるんだね。」
「そうだね。」
「今度の待ては、長すぎるよ」
「嫌なら、恋人作っていいんだよ。」
「海斗は、出来ないだろ?」
「そうだけど…」
「二回なんて、あっと言う間だった。」
「確かにね。」
海斗の顔が曇るのを凛音は、見つめていた。
「ごめん、ごめん。わがまま言ったよね。」
「ううん」
父親にウイルスを飲まされなければ、今でも凛音を抱いていたのだ。
「動画見ようか?」
「うん、食べ終わるまで待って」
二人で、カレーを食べ終わった。
海斗は、カレーのお皿を流しに持っていった。
「いいよ」
「うん」
ビールを持って、ソファーに座る。
父が置いていったビデオカメラで撮影した動画。
二度とそうなれない動画。
「はい、乾杯」
「乾杯」
何枚も落とした。
見れなくなったら、困るから…
凛音は、海斗の肩に頭を乗せる。
「再生していい?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、するよ」
海斗は、そう言って再生する。
解毒剤を飲んだ後の二人だ。
「凛音、泣かないの」
海斗は、凛音の肩を引き寄せる。
凛音は、いつもこれを見ると泣くのだった。
海斗も同じだけ悲しかった。
待てを言われ続けた二人にとって、僅か二回の性行為など、足りるはずなかったのだ。
それでも、お互いを思って二人は我慢したのだ。
15年も我慢してるのだ。
「ごめんね、海斗。僕が、やめなかったから」
「いいんだよ。俺は、幸せだったよ。あの日、凛音にされて。」
「海斗は、童貞のままだよ。」
「心配しなくていいんだよ。俺は、どうしてもそっちがよかったんだ。」
母親のあれを目撃してから、海斗は抱かれてみたいと思っていたのだ。
凛音は、逆だった。
抱かれたくはなかった。
お互いの考えが、ピッタリ一致したのだった。
だから、海斗は凛音に抱かれた。
二人は、泣きながら映像を見つめる。




